他人のたばこの煙を吸い込む「受動喫煙」の被害防止へ、大阪府立成人病センターの研究員が、全面禁煙を決めた居酒屋やバーをフェイスブックで紹介する取り組みを進めている。国は受動喫煙の対策を呼びかけているが、客離れの不安から飲食店では遅れている。「努力する店を応援したい」と意気込んでいる。

 同センターでがん対策を研究する主任研究員の伊藤ゆりさん(39)。受動喫煙は、がんや脳卒中になるリスクを高める。特に肺がんのリスクは、受動喫煙しなかった人の1・3倍になるとの研究もあるという。

 しかし、全国飲食業生活衛生同業組合連合会(東京)が2012年に全国の飲食店を対象に行ったアンケートでは、全面禁煙にしている店は居酒屋では2・6%にとどまる。

 こうしたことから、伊藤さんが昨年10月、フェイスブックで全面禁煙の店を紹介するサイトを開設。仏のガイドブック「ミシュランガイド」をまねて、「ケムラン〜美味しい禁煙飲食店〜」と名付けた。

 店は、伊藤さんが同僚との飲み会や出張などの度に探して回り、関西を中心に、東京、北海道なども含め計約50店を見つけた。店名や料理を紹介し、「海外は飲食店禁煙が当たり前」などと、ひと言添える。来春には一般の人からの投稿も募る計画だ。

 立ち飲みの居酒屋「百足(むかで)家」(大阪市北区)は今年6月、全面禁煙にし、10月、サイトに掲載された。

 たばこが吸えず帰ってしまう客もいたが、女性客は増えたという。「立ち飲みでも高級感のある店にしたかった」と店長の高田礼央さん(32)は掲載を喜ぶ。

 地ビールを提供するバー「ビアベリー天満」(同)も全面禁煙にして紹介された。オーナーの八幡康斎さん(43)は「ビールの香りを大事にしたいから、たばこのにおいはずっと気になっていた」と語る。愛煙家のために店外に喫煙場所を設けている。

 伊藤さんのサイトには連日、「たばこの煙やにおいを避けて逃げ出すことしかできなかったが、希望が生まれた」など歓迎の声が寄せられている。

 ただ、全面禁煙の居酒屋はまだ少数派。大阪市内のある焼き鳥店は「店に長居してもらうには喫煙できる環境が必要。禁煙にすれば確実にお客さんが減り、経営が成り立たない」と打ち明ける。

 伊藤さん自身、かつて喫煙者だったという。「たばこを楽しむ権利はあるが、周りの人をリスクにさらしてはいけない。努力しているお店を少しでも応援できれば」と話している。

■受動喫煙経験…飲食店が最多4割

 厚生労働省が2015年11月に全国約5000世帯を対象に行った国民健康・栄養調査では、過去1か月間に受動喫煙を経験した場所として飲食店をあげた人が41.4%で最も多かった。受動喫煙対策を望む場所としても最多の35%の回答があった。

 東京五輪・パラリンピックを見据え、政府は受動喫煙対策の法制化を急いでいる。同省は10月、飲食店やホテルのロビーなどを原則禁煙とし、悪質な違反者に罰金を科すなどの受動喫煙対策案のたたき台を発表した。ただ、飲食業界や自民党の厚生労働部会では「分煙で対応できる」と反発が相次いでいる。

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ケムランさんの公式フェイスブック:https://www.facebook.com/quemlin/

居酒屋に限らず、飲食店で喫煙可能というのは、あまりに異常な事態です。一日も早い飲食店の全面禁煙化を願います。

ケムランさんのみならず、全面禁煙の居酒屋さん、飲食店さん、強く応援します!