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WSJの「核なき世界は夢物語」社説が、真実を照らし出す

2016年05月14日 05時34分04秒 | 時事放談: 海外編

ウォールストリート・ジャーナルが、核兵器に関してすばらしく皮肉の利いた、それでいて真実を伝える社説を書いています。記録しておきましょう。

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【社説】オバマ大統領が広島で絶対にしない演説
核なき世界は夢物語、民主主義国家の責任とは

Wall Street Journal 2016 年 5 月 12 日 12:52 JST

 米ワシントンのホワイトハウスは今週、オバマ大統領が今月下旬に開催される主要7カ国(G7)首脳会議(サミット)に合わせて訪日する際、広島を訪問すると発表した。第2次世界大戦を日本本土への侵攻なしに終わらせるために米国が核爆弾を投下した街で、大統領はどんな話をするつもりなのか、憶測が飛び交っている。そこで、おそらく大統領は言わないと思われるが、こういう話をすればいいと考えられる原稿を作ってみた。

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 私はきょう、みなさんの前に複雑な心境で立っています。7年前、プラハで私は核なき世界を実現するために政府を挙げて尽力することを約束しました。これは私が学生の頃から抱いていた目標です。私の国はそれ以降、2010年にロシアと締結した新戦略兵器削減条約(新START)を通して核兵器を大幅に減らしてきました。イランとも交渉の末に核開発に関する合意に至りました。核安全保障サミットを定期的に開催してきました。北朝鮮に対しては、核実験の後で国際的な経済制裁を強化しました。

 それにもかかわらず、核のない世界は今日、私が大統領に就任した当時よりもはるかに手の届かないところにあるように思います。任期終了が近づくなか、自分がどうしてうまくいかなかったのかを私がどう考えているのか、みなさんにお伝えすることが私の義務だと感じています。

 まず言っておきたいことは、問題は誠意が不足していたことではない、ということです。あなた方は第2次世界大戦の灰の中から街を復興させましたが、広島と長崎は永遠に、あることを記憶にとどめておくための街であり続けます。それは、原始的な核兵器ですら驚異的な破壊力を持っていたという記憶です。悲惨な戦争を終わらせるため、すなわち米国民と日本国民の命を救うために、核兵器の使用は不可欠だったと確信しているわれわれでさえも、罪のない数十万人の市民にもたらした核爆弾のすさまじい犠牲を忘れません

 大統領として、私の最大の責任は核兵器が二度と使われることのない世界、あるいはならず者に核兵器を持たせない世界を実現するために力を尽くすことです。ワシントンで開かれた最近の核安全保障サミットで、世界各国から国内で保有する高濃縮ウランの削減と核物質の管理強化を図るという約束を取り付けました。核物質が盗難に遭えば、テロリストの手に渡り、核兵器に使用されかねません。

 残念なことに、核のない世界は単なるサミットや民主的に選ばれた政治リーダーの善意だけでは達成できないことを私は身をもって学びました。それどころか、民主主義国家が兵器削減に動くたびに、独裁国家が軍事力強化を加速させるように見えます。

 北朝鮮は核弾頭の小型化へ向けて前進を続けています。弾道ミサイルに搭載すれば、日本や米国を攻撃することが可能になるものです。ロシアに関しては、外交面で「リセット」を図った私の努力にもかかわらず、中距離巡航ミサイルの実験をしています。これは条約違反です。1996年に国連で採択された核実験禁止条約から抜ける日も近いかもしれません。中国は核兵器の大幅な近代化を進めている最中ですし、インドも同じです。

 パキスタンは国内の政情不安にもかかわらず、核兵器の数を急速に増やしています。イランは核開発に関する合意には至ったものの、長距離ミサイルの実験を止めていません。このミサイルの利用目的として最も可能性が高いのは核弾頭の搭載です。サウジアラビアの有力者も独自に核兵器を保有する議論をしています。

 これらはすべて、良識ある政治リーダーが無視できない事実です。核なき世界に向かって進んでいるのではなく、以前より破壊力のある核爆弾が、より危険な政権の手の中にあるという第2の核の時代に入りつつあるように見えます。冷戦時代にあったのは私の国とロシアとの間の軍拡競争だけでした。今は地域的に軍拡競争が発生しています。中東や南アジア、おそらくこの東アジアにおいてもです。誤算や偶発事故など突然の展開が起こる可能性が大きくなっています。

 間違っていたことを認めるのが知的誠実さというものです。私は軍縮に関する合意がこれを防ぐためにほとんど役に立ってこなかったことを認めます。クリントン元大統領は経済支援と引き換えにした1994年の核開発凍結合意が、北朝鮮の核開発を阻止すると信じていました。しかし、これは失敗しました。私はイランとの取り決めが同じ憂き目に遭うことはないと考えたいのですが、確かなことは言えません。約束しても信用できない国はあります。約束を破ることの代償が取るに足らないものである場合はなおさらです。

 私は米国が兵器を削減し、核の近代化への投資を見送れば、他の国も同じことをするだろうという信念に希望を持ちすぎました。敵国が軍拡レースで先んじるなか、米国は今、古くなり、おそらく頼ることのできない兵器を抱えこんでいます。安心かつ信頼できる抑制力を維持しようと思うなら、私の後任の大統領は核の一新を最優先課題にしなければならないでしょう。

 私の最大の過ちはおそらく、核兵器の根本的な問題は核兵器そのものだという考えだったと思います。真の問題はそれを保有する人の資質です。核兵器は、米英のような成熟した民主主義国家が保有していれば、世界の安全にとって脅威にはなりません。危険な政権が保有したときに危険になるのです。私は聴衆のみなさんの気分を害するつもりはありませんが、1945年に核爆弾を持っていたのが米国であって、その敵国でなかったことは幸運だったと思っています。忘れてならないのは、民主党の偉大な大統領、ハリー・トルーマンが核爆弾を使ったのは、米国が始めたわけではない戦争を終わらせるためだったということです。

 広島のみなさん。私たちは核の時代に生きています。核がなかった時代にすぐにでも戻れると装うことは誠実ではありません。民主主義国家の政治家の責任は、私がかつてそうしたように、核のない世界という夢を掲げることではありません。核兵器をテロや戦争ではなく、その抑止と平和という目的に資することを確実にするのが彼らの責任です。この教訓を得るために、私は任期のほとんどを費やしましたが、後に続く人が私の経験から学ぶことを願ってやみません。

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まことに、正論。

「核兵器なき世界」など、夢物語にすぎません。もしアメリカが核兵器を捨てたら、他国は喜んで核武装して、アメリカを脅し始めることでしょう。それは、北朝鮮であり、中国であり、ロシアであり、イランであり、これまでアメリカに煮え湯を飲ませられてきた国々です。それが「現実」というものです。

ところが、「ナイーブな」(「幼稚な」「馬鹿な」という英語の“naive”の意味です)日本人は、アメリカが核廃絶を訴えれば、世界がそれに従うと信じています。そんなことはありえないのです。ならず者国家やテロリストたちに道徳論を説いても、何の効果もないのですから。

だからこそ、そういうろくでもない国からの攻撃に耐えられる高度な国防力を備えておかなければいけません。

にもかかわらず、「ナイーブな」サヨクは、国防をおろそかにします。戦後71年の平和がもたらした日本人特有の「平和ボケ」です。

日本が核武装すべきかどうかは別にして、核攻撃を受けたときに反撃できる国でなければ、日本はいつ核攻撃を受けてもおかしくありませんし、その危険性は日に日に増しているのです。そのことを、この社説からも読み取るべきです。

そして、オバマ氏の広島訪問が核兵器廃絶につながることはまったくありえない、という哀しい現実をわれわれ日本人はすべて受け入れるべきです。


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