悲しい場だからこそ、笑いを必要とするのです。坂東三津五郎丈の本葬における、三津五郎丈が属した菊五郎劇団の総帥・尾上菊五郎丈の弔辞のことです。記録しておきましょう。
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【坂東三津五郎さん本葬】(3)尾上菊五郎さんの弔辞「向こうのネオン街でいい店紹介して」
産経新聞 ソナエ 2015.2.25
■尾上菊五郎さん
寿(ひさし)君(本名の守田寿)、ひと月前に病状の経過、これからの仕事のことと、話をしたいというので、国立劇場が終わってから君の家に行って、1時間ほど2人きりで話した。「病気のことはもう大丈夫です。夏からは舞台に完全に復帰したい」と、非常に前向きな言葉をもらってとても喜んでおりましたし、帰り際に、肺にちょっと転移したというから「風邪引かないようにね」と玄関で別れたのが最後になってしまいました。残念だ。
あなたは俳優協会理事として、日本俳優協会のいろいろな改革に寄与してくれましたし、俳優協会の一番の目玉の行事でございます「俳優祭」においては、いつもいつも実行委員として本当によく尽くしてくれました。ありがとうございました。
また、「ありがとう」といえば、あなたは本当に若手をかわいがって、若手を育ててくれました。これから3年後、5年後、10年後に、君のまいた種が花咲き、実をつけて、これからの歌舞伎を背負って立ってくれると思うと、私もこっちの世界にいるか、そっちの世界にいるか分かりませんけれども、非常に楽しみです。
また、楽しみといえば、せがれの巳之助君。私ども俳優協会として、また菊五郎劇団の一員として、また、先輩として、きっと立派な役者にしてみせます。そして、大和屋を背負っていってもらいたいと思っております。
しかし、君は本当に趣味が多くて、野球も一緒にやったし、ゴルフもしたし、また、君はお城が好きで、何か自分の番組まで持っていたようで。この間も追悼番組でやっておりましたが、姫路城が好きだ、彦根城が好きだと言っておりました。彦根城も好きですけれども、あなたは本当にホステス嬢もキャバクラ嬢も好きでした。
どうか向こうの世界へ行ったら、また、向こうの世界のネオン街でいい店を探しておいてください。私が行ったら、どうぞいい店を紹介してください。お願いいたします。
本当に今までお疲れ様でした。ありがとう。
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「彦根じょう」も好きだったが、「ホステスじょう」も「キャバクラじょう」も好きだったなんて、菊五郎じょうにしかいえないことです。それだけ三津五郎じょうと近しい関係だったということで、微笑ましく思えると同時に、菊五郎丈の寂しさを感じます。
先輩思いの三津五郎丈ですから、中村勘三郎丈とともに、音羽屋の御大のためにきっと向こうの世界のネオン街でいい店を探して待っていると思います。ですが、三津五郎丈には申し訳ないけれども、菊五郎丈を始め、歌舞伎界の重鎮たちを20年ばかり向こうに呼ばないようにしてください。ファンにはつらすぎます。お願いします。
改めて、合掌。
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