趙治勲名誉名人、やっぱりあなたは強かった。
**********
国内で開発された囲碁の人工知能(AI)「DeepZenGo」が趙治勲名誉名人(60)に挑む「第2回囲碁電王戦」(ドワンゴ主催)の第3局が23日、東京都千代田区の日本棋院で行われ、趙名誉名人が167手までで先番中押し勝ちし、2勝1敗で三番勝負を制した。
対局は、先番となった趙名誉名人が実利を稼ぎ、DeepZenGoが厚みを築く展開となった。趙名誉名人は白模様を荒らし、DeepZenGoの攻めを封じていく。終盤にさしかかった時点で、劣勢と判断したDeepZenGo側が投了した。
勝負には敗れたが、日本トップクラスの棋士と互角に打ち合った人工知能(AI)囲碁ソフト「DeepZenGo(ディープゼンゴ)」の健闘は、和製AIの目覚ましい進歩を証明した。
基礎となったソフト「Zen」は今年3月、碁石を先に3個置くハンディをもらって小林光一名誉棋聖に僅差で勝つレベルだった。それから8カ月。ハンディ無しで趙治勲名誉名人から1勝をもぎ取るまでに急成長した。
一方で課題も見えた。開発者の加藤英樹氏は終局後、「局面に応じた時間の使い方など、状況の変化に柔軟に対応する力が弱い」と分析した。
囲碁電王戦を主催するドワンゴは対局後の会見で、近い時期に第3回を開催する意向を明かした。さらに進化したAIとプロ棋士との新たな対局が遠からず見られそうだ。
<囲碁電王戦>趙九段がAIに勝つ 最終局で2勝1敗
11月23日 16:44毎日新聞
◇治勲「ソフトは強いところと弱いところがあり人間味感じた」
二十五世本因坊治勲(趙治勲九段)と国産囲碁ソフト「DeepZenGo」が対局、1勝1敗で迎えた第2回囲碁電王戦三番勝負第3局は23日、東京・市ケ谷の日本棋院で打たれ、治勲が167手で黒番中押し勝ちし、2勝1敗で勝ち越した。ハンディなしでソフトと棋士が国内で初めて対局したが、トップ棋士が貫禄を示した。
世界トップ棋士級の実力を示した米グーグル傘下の人工知能(AI)開発企業のソフト「アルファ碁」超えを目標に、国内のソフト開発者や東大のAI研究者らが参加するプロジェクトが今年3月に発足。同ソフトは急成長したが、「深層学習」の効果がはっきり出た序盤の強さに比べ、さまざまな機能を併用し打つ手を判断しなければならない中終盤では逆転を許し、課題を残した格好だ。一方、第2局では勝利し、短期間でトップ棋士と互角に渡り合う飛躍的進歩も示した。
模様を張るソフトに対し、治勲が実利を稼ぎ、しのぐ展開となった第3局。じっくりした進行でヨセ勝負となったが、ソフトは自身の勢力を過大評価しており、届かなかった。
治勲は「ソフトは強いところと弱いところがあり、人間味を感じた」。ソフトの開発チーム代表、加藤英樹さんは「第3局は完敗だった。トップ棋士と早くに対局し、改善すべき点が見えたのは良かった」と振り返った。
三番勝負について、本因坊文裕(もんゆう)(井山裕太九段)は「約半年でここまで強くなったのは驚異的だ。しかし、まだ治勲先生の方が上回っていたと思う」と分析した。【最上聡】
【囲碁電王戦 国内最強ソフトvsトップ棋士】第3局(1) 趙名誉名人勝ち越し目指して
国内最強とされる囲碁の人工知能「Deep Zen Go」と、歴代最多74タイトルの趙治勲(ちょう・ちくん)名誉名人(60)が対局する第2回囲碁電王戦の第3局が23日、東京都千代田区の日本棋院で始まった。趙名誉名人の先勝で始まったこのシリーズは、第2局でZenが勝ちタイに。注目が集まるなかの第3局だ。
先番は趙名誉名人
第3局の会場は、JR市ケ谷駅近くにある日本棋院の東京本院。第1、2局が行われた東京都内のホテルから場所を変えた“囲碁の殿堂”で、趙名誉名人にとっては数え切れないほど対局してきた本拠地だ。「Deep Zen Go」開発チームの加藤英樹代表に続き、定刻(午後1時)の10分前に趙名誉名人が入室した。
5分前になって、立会人の小林覚九段が先後を決めるため「握ってください」と両者に促す。主催するドワンゴが配信するニコニコ生放送の中継用に、小林九段の背景には紅葉のボードが用意されているのが、通常の対局とは明らかに異なる。第1局は黒(先)番で趙名誉名人が勝利、先後を入れ替えた第2局は「Zen」が勝利している。趙名誉名人の手の中の白石を偶数と予想した加藤代表は、盤上に黒石2つを置く。実際に趙名誉名人が握ったのは23個。加藤代表の予想が外れたため、趙名誉名人の黒(先)番に決まった。第1局と同じだ。
静かな立ち上がり
「時間になりました」の小林立会人の合図で両者一礼。多くの報道カメラのシャッター音が響く中、趙名誉名人は右上星に第一着を。やや間を置いて、Zenの加藤代表が左上星に白石を置いた。10手付近まではよく出現する配石での出だしになった。
中押しで敗れた第2局の終局後、趙名誉名人は「序盤からマズい手を打っちゃった。勝てる気がしなかった。(終盤も)もっと軽くサバかないといけないのに…」と反省していた。力が入っていたのだろうか。「(第3局まで)2日あるから勉強して…。あっち(Zen)は2日もあればすごく進歩するんだろうけど、こっちはたいしたことないけど…」と話しながら雪辱を期していた。
一方のZen・加藤代表は「感無量。開幕前に“1勝1敗で第3局を迎えられたら”と思っていた通りになった。より楽しんでもらえるのでは」と喜んでいた。
日本棋院のインターネット棋譜中継「幽玄の間」では、伊田篤史八段が解説を担当。「Zenとは2月に打ちましたが、そのときとは別物ですね」と評した。2月といえば、井山裕太六冠との十段戦五番勝負を控え、まだ十段位を保持していたころ。Zenにあらかじめ4つの黒石を置いた有利な状況で戦ったが、そのときの感触とは違うという。ドワンゴと東京大の支援を受けて、Zenを強化しようという「Deep Zen Goプロジェクト」の始動が発表されたのは、3月のこと。「コンピューターの成長速度はうらやましいです」とは、伊田八段のいつわらざる感想だ。
開始1時間で57手まで進行。ニコニコ生放送で解説を担当する井山六冠も「まだ、(形勢を)どうこういえる状況ではないですね」。
【囲碁電王戦 国内最強ソフトvsトップ棋士】第3局(2) 嵐の前の静けさ
国内最強とされる囲碁の人工知能「Deep Zen Go」と、歴代最多74タイトルの趙治勲(ちょう・ちくん)名誉名人(60)が対局する第2回囲碁電王戦の第3局が23日、東京都千代田区の日本棋院で行われている。1勝1敗のタイで迎えた注目の第3局も、いよいよ終盤へと差しかかってきた。
トッププロがうらやむ
70手を超え、石が左辺にもいきわたり始めた。ニコニコ生放送で解説を務める井山六冠は「ちょっと予想のつかない場所に打ってきますね」とZenの打ちぶりを表現する。同じようなことを、趙名誉名人も第2局後に語っていた。「人間なら(反撃されることを想定して)怖くて打てないところに、コンピューターは平気で打ってくる。気づかないもん」と。計算が速い、疲れないことともに、感情がないことも強さの秘けつのよう。
今年3月にZenは小林光一名誉棋聖相手に、3つの石を先に与えてもらった有利な状況で勝利している。そこから半年。井山六冠はニコニコ生放送の解説中に「(強さの発展度合は)うらやましいですよね。別人…いや別物です」と、先の伊田八段と同じ感想を述べていた。「打ってみたいか?」と聞き手の吉原由香里六段に尋ねられると、「結果は別として、興味はありますね。見ただけの感じと、実際に打った感じは違うと思うので」。まだまだ強くなりそうと追い打ちをかけられると「打つなら早いほうがいいですね」とも。
中盤から終盤へ
午後3時を回った。100手をすぎ、記録係の「趙名誉名人、残り50分です」の声に、「あっ、はい、いけねいけねぇ、そうかあ」と盤面をグルグル見回す趙名誉名人。第2局では「(終盤に)慌てて打つのがイヤだから、序盤は時間を使わずに打っていった」と話していた。それでもZenに比べれば消費時間を多く使い、追われるようにして慌てての着手が、ミスにつながったこともあったという。
「Deep Zen Go」が考える自身の評価値が70を突破。趙名誉名人については30以下とたたき出した。Zenが自分のほうが有利と考えて、手を進めているという認識だ。
ただ、立会人を務める小林覚九段も、井山六冠もニコニコ生放送に登場し、「黒(趙名誉名人)がいいのでは」との認識を示した。なんでも第1、2局の棋譜進行を10時間以上かけて研究したという小林九段は「(序盤の)布石の感覚がいい。人間が持っている感覚に似ている。ややこしい詰め碁は嫌いなのかな…というのも人間らしい。ボクが対局したら、勝つ気配はない」とお手上げ状態。
必勝を期して、趙名誉名人は考えに考え、手を進めていく。
【囲碁電王戦 国内最強ソフトvsトップ棋士】第3局(3) 趙治勲名誉名人が和製AI「Deep Zen Go」に勝利
国内最強とされる囲碁の人工知能「Deep Zen Go」と、歴代最多74タイトルの趙治勲(ちょう・ちくん)名誉名人(60)が対局する第2回囲碁電王戦の第3局が23日、東京都千代田区の日本棋院で行われた。
1勝1敗のタイで迎えた注目の対局は午後4時6分、「Deep Zen Go」の加藤代表が投了を告げた。和製AIとの三番勝負第3局は、趙名誉名人が167手で黒番中押し勝ちし、シリーズ2勝1敗でトッププロの勝利になった。
【囲碁電王戦 国内最強ソフトvsトップ棋士】第3局(4) 趙治勲名誉名人「ボクは退化したけど、(Zenは)すごく成長した」
【第2回囲碁電王戦第3局】囲碁ソフト「DeepZenGo」と対局し勝利した趙治勲名誉名人(左)。 右はコンピュータ囲碁ソフトZenと開発者の加藤英樹氏=23日午後、東京都千代田区(春名中撮影)
(産経新聞)
国内最強とされる囲碁の人工知能「Deep Zen Go」と、歴代最多74タイトルの趙治勲(ちょう・ちくん)名誉名人(60)が対局する第2回囲碁電王戦の第3局が23日、東京都千代田区の日本棋院で行われ、趙名誉名人が167手で黒番中押し勝ち。シリーズ2勝1敗での勝ち越しを決めた。対局後の感想戦では、趙名誉名人とAI開発者が相手の印象と今後の抱負を語った。
完勝劇
140手を超えたあたりで、ニコニコ生放送で解説する井山六冠が「盤面10目いくかどうかだが、黒地が多い」と判断を下した。一時70を超えたZenが考える局面の評価値も56まで低下。「前向き、楽観派」とされるZenも、さすがに苦しくなってきたようだ。
午後4時6分、趙名誉名人の167手に対し、Zenの加藤代表が投了の意思を表明。人間同士の対局の場合、“投げ場”といわれるいわゆる終局時期ではなかったため、記者室の報道陣は大慌てに。フジテレビやテレビ朝日、NHKなどのテレビクルーはじめ一同が、対局室へと急いだ。
対局を振り返る2人による感想戦が約10分行われた。
「強かったね。(韓国から)日本にきて55年間囲碁の勉強をしているけど、今までの積み重ねは何だったろうというくらい、序盤の感覚は違った。(自分のほうが)いいはずなんだろうけど、自信はなかったですね。人間のようにポカもあったけど、そんなところはすぐに改良されていくでしょう。3月にZenの碁を見てから半年でボクは退化したけど、その間に(Zenは)すごく成長した。半年後に対局したら負けちゃうかもしれないけど、恥ずかしいとも、悔しいとも思わない。AIが強くなったら、それを使って(棋士も)勉強して、互いに強くなっていったらいいんですよ」。肩の荷が下りたかのように、趙名誉名人はすがすがしい表情で語った。
一方、Zenの評価値が終局になる直前には50・1%にまで降下していたことを明かした加藤代表は、「楽観派のZenの評価がここまで下がっては望みがない。数手前から妙な手を打ち出していた。最初からよくなく、完敗だな、と」と頭を下げた。グーグルの「アルファ碁」に対抗する和製AIにしようとの目的で始まった「Deep Zen Goプロジェクト」。加藤代表は「アルファ碁に追いつくこと、そして協力いただいた囲碁界に何らかの貢献をできるようにしたい」と話した。
主催者のドワンゴ・川上量生会長は「開発協力の立場では(Zenが)負けたことは若干悔しい気持ちがあるが、主催者としては人間の勝利をうれしく思う。近いうちに第3回電王戦を実現できれば」と次回の開催を示唆した。
**********
地を稼いで、相手の厚みをぶち破る。まさしく趙治勲流の戦い方です。こうなれば、鬼神のごとき趙名誉名人、負けるはずがありません。プレッシャーがかかり、スケジュール的にも大変だったのに、ここまでがんばってくれた名誉名人には、頭が下がります。本当にありがとうございました。
それにしても、Deep Go Zenの進歩の速さは驚異的。本当に半年後には、人間棋士を中国人・韓国人を含めて総なめにし、アルファ碁にも勝ってしまうかもしれません。
そんなZenを観るのは、最高の気分です。開発チームのみなさんには、さらなる努力をお願いします。
それにしても、趙名誉名人、まだまだ強いです。イセドル九段にも勝てます。がんばってください。ファンとして、応援させていただきます。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます