団地小説短編集を歩く

団地小説短編集の舞台を歩きながら団地や地域の魅力をお伝えします。

番外編 1 高尾団地 取り壊し始まる。

2016-10-01 22:52:06 | 日記
  早々に脱線してしまって申し訳ございません。今回は団地小説短編集から離れて高尾団地の取り壊しが始まったお話です。

  高尾団地の概要  

   

  団地名  高尾市街地住宅

   所在地  姫路市高尾町96番地

   交 通  JR「姫路」駅又は「山陽姫路」駅から徒歩7分

   建物構造 鉄骨鉄筋コンクリート造10階建、1棟、5階以上公団住宅 (UR賃貸住宅)

         (エレベーターは、1階、5階~10階に停止します。)

   総戸数  77戸

   施 設  1階~4階各種施設

   完成年月 昭和41年11月

    当該住宅は、当公団が土地所有者から土地を借り受けて建設した区分所有建物で、地上1階~4階が土地所有者が所有

   する店舗・事務所等で、地上5階~10階が当公団が所有する賃貸住宅となっています。

   
   

   


   1フロアーに13戸、全戸2DKの片廊下式の住宅です。503号室が管理事務所等になりますので77戸になります。(

    作者 註)大変原始的な貼り付けで申し訳ございません。

   都市機構(写真のパンフレットは都市公団当時のものです。)のパンフレットから引用しました。  
   
    若干補充説明をします。高尾市街地住宅は「全面借地方式市街地住宅」手法で建設されました。市街地住宅とは便利な

   既成市街地内で公団住宅の建設用地を確保するため下層部に土地所有者の店舗や事務所を上層部に公団住宅を建設するもの

   です。当初は借地方式で建設されていましたが、借地方式では土地所有者のメリットが少なく用地の確保が困難となり、

   土地の利用比率により公団が公団住宅の土地利用相当分の土地を買取る「一部買収方式市街地住宅」制度が作られました。

    高尾市街地住宅は1・2階を姫路市が所有する店舗事務所、3・4階を「姫路モノレールの大将軍駅」、5階~10階を

   公団住宅として建設されました。

    しかし平成16年、都市基盤整備公団から独立行政法人都市再生機構への移行に伴い業務の見直しがおこなわれ

   「全面借地方式市街地住宅」は直接都市機構が管理せず「土地所有者等への譲渡、返還等」すべき団地と分類されました。

    この分類に従い入居者全員退去の上、住宅部分は姫路市に譲渡され姫路市により取り壊されることになりました。

    (その他の「全面借地方式市街地住宅」の団地が今後どうなるかについては筆者の知るところではありません。)  


         平成28年8月13日

     姫路モノレール大将軍駅の取り壊しに先立ち8月13日・14日の両日見学会が開催されました。  

         

     700人の定員に対し十倍以上の応募があり抽選で選ばれた鉄道ファンや廃線マニア?が訪れた。
     
         

     看板が読みにくくて申し訳ありません。Weblio辞書で 姫路市企業局交通事業部 姫路市営モノレール を

     ご覧下さい。看板に書いてあること全てと、それ以上のことが書いてあります。

        
     
     私は鉄ちゃんでも廃線マニアでもありません。団地ファンとして高尾団地を記録に残したいと行ったのです。

     団地の玄関ホールはすでにベニヤ板で囲われて入ることは出来ませんでした。5月頃には退去が完了したそうです。

     ここに高尾団地があり、77所帯の生活があったとわかるものは、この一枚の「注意書き」だけでした。


          平成28年9月21日

     再度、高尾団地(跡?すでに都市機構の建物ではありません。)に行きました。

     解体工事のための足場の組み立てが始まっていました。

       


       


       


       

      くどいようですが、解体工事の発注者は 姫路市長 石見利勝 でした。
 

       高尾団地と姫路モノレール

     それでは、どのようにして高尾団地と大将軍駅が出来たのでしょう。以下はあくまで私の推測です。

    「市街地住宅制度」の公団のメリットは、便利な既成市街地で公団住宅の建設用地を確保出来ることです。公団住宅

    の関西圏の西端は明石市、結果として姫路市での公団住宅は高尾団地の1団地で終わりましたが進出を考えていたの

    かも知れません。モノレールが通り抜ける近未来的な団地は、公団住宅の広告塔の役割も期待出来たはずです。

     土地所有者のメリットは、店舗・事務所等建設するのに公団の資金が利用出来、店舗・事務所等の家賃収入で

    長期分割で支払うことが出来ることです。又、建設は公団住宅と合せて公団が行うので設計や入札・工事等の専門的

    な知識がなくても安心して事業を始めれることです。姫路市などの公共団体においても公団の資金が利用できる

    ことは魅力です。

     今は人口50万を超え、高層ビルが林立する姫路市も当時は、今よりずっと小さな山陽百貨店の西は高層ビルなど

    ありませんでした。未来の乗物、モノレールが巨大な高層建築の中を通り抜ける近未来的な風景はそれ自体が姫路

    大博覧会の巨大なパビリオンであり、日本人が想像した未来ではなかったのでしょうか。

     市街地住宅制度を利用して高層ビルを建て都市的景観を作ることはその後も、兵庫駅前市街地住宅(神戸市

     兵庫区 20階建)や新長田駅前市街地住宅(神戸市 長田区 25階建 住宅は23階まで) ニュータウンのランド

    マークとしては、高倉台市街地住宅(神戸市 須磨区 14階建)やひよどり台中央市街地住宅(神戸市 北区 10・

    14階建)等多くの事例があります。なお上記の4団地は「一部買収方式市街地住宅」で建設されましたので今の

    ところは、今後とも都市機構が自ら管理活用する「ストック活用」団地に分類されています。

     姫路市においてもこの時期、高尾団地と同じような「下層階に店舗・事務所上層階に住宅」の形式(当時は、住宅

    の下の店舗・事務所等を下駄にたとえて、住宅が下駄を履いた「下駄履き住宅」と呼ばれていました)で再開発が進

    められた地区があり市街地住宅の考え方が生かされたのではないかと思われます。市街地住宅制度で使われた店舗・

    事務所・住宅等の利用形態と利用階数にる利用係数により土地の利用比率を決める考え方は、再開発等多くの事例で

    参考にされました。
 
       

    姫路モノレールの姫路駅付近から見た 終点手柄山  高尾団地  姫路駅に近い最後の橋脚です。

       
    
    高尾団地の少しアップの写真です。高尾団地には何度も行きましたが、周辺の猥雑さに気がとられて高尾団地がこんなに

    美しい団地であったことに気がつきませんでした。姫路駅から徒歩7分の好立地は皮肉にも、高尾団地の3・4階に作

    られた姫路モノレール大将軍駅が利用者が少ないためわずか1年8ヶ月余りで休止される一因となりました。

    山陽電車の高架橋を走るのは阪神電車です。直通特急は姫路まで乗り入れます。いいタイミングで電車が来ましたが

    私は鉄ちゃんではありません。高尾団地から続くモノレールの橋脚がよくわかります。くどいようですが、私は廃線

    マニアではありません。      

      
     
    姫路駅側に残る最後の橋脚です。   

      

    終点の手柄山です。剣のように突き出ているのが、慰霊塔。その左側の茶色の建物の中に「手柄山駅」があります。

    姫路モノレールは昭和41年5月17日、大手前公園や手柄山公園を会場とした姫路大博覧会の交通手段として

    開業しました。(手柄山駅の写真と説明を訂正しました。)
  

      

    モノレールの橋脚に沿って姫路駅側から高尾団地まで歩きます。

      

    モノレールの下は「高架下商店街」として利用されていました。

      
    
    高尾団地は、今見ても(今はもう見られませんすが)近代的で美しい団地です。建物の中にモノレールの駅があったこと
  
    も衝撃的なデビューでした。しかし未来の交通機関のモノレールも大将軍駅は昭和43年1月31日には利用者が少ない
      
    ために休止、モノレールも昭和49年4月11日には休止、昭和54年1月26日には廃止されました。3・4階に廃駅

    を持つ建物は、時には注目をされることはありましたが、未来を先取りした栄光の団地にとっては、不運なことでした。

    そして、公団の団地としては短い一生を終えることになりました。私は高尾団地を最後まで見届けたいと思います。




     番外編 13 高尾団地・姫路モノレール大将軍駅 解体工事完了 まとめ(2018.1.26)があります。
      

       


      

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