Netflix「イカゲーム」1を5にする韓国流シェープアップの妙

2021年10月12日 | 作品紹介（映画・ドラマ）

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▼Netflix「イカゲーム」1を5にする韓国流シェープアップの妙

諸事情によりちょっとまとまった時間が出来たので「イカゲーム」を全話見た。
韓国発のNetflixオリジナルドラマで、題材はいわゆるデスゲームもの。
深作欣二監督の「バトル・ロワイアル」に端を発し、「カイジ」「GANTZ」「神さまの言うとおり」、
そして同じNetflixで「今際の国のアリス」と、日本でも既に人気ジャンルとして確立している。
ヴィンチェンゾ・ナタリ監督の名作を24年越しに日本でリメイクする映画「CUBE」も今月22日に公開。

ポン・ジュノ監督の「パラサイト半地下の家族」がオスカーを席巻した直後ということもあってか
「イカゲーム」は配信開始から28時間で全世界8,200万人視聴を達成し90ヶ国で視聴ランキング1位を獲得。
「ハンガー・ゲーム」と「SAW/ソウ」をミックスし、近年サブスク界隈での躍進がめざましい
韓国テイストをふんだんに盛り込んだ本作は、ヒットの法則を抑えた盤石な作りと言えるだろう。

派生も含めると山のようにあるデスゲーム系の作品をわざわざ韓国で作るとなれば
当然ドラマ部分を強化した作りになっているのだろうと思いながら見たらまさにビンゴだった。
ゲームのルールは至ってシンプル、勝てば生き残り・負ければ死。
参加者は全員生活に困窮した者ばかりで、参加を決めた理由も金。
しかし本作では「なぜそこまで金に固執するのか」「大金を得て何をしたいのか」
「金を前にして人はどこまで人らしく居られるのか」を掲げながら
ゲームそのものではなく、ゲームに参加する人々の内面にフォーカスをあてている。
これが、日本のデスゲーム系作品との決定的な違いと言えるだろう。

例えば日本のデスゲーム系の多くは、次から次に出てくるゲームのルール作りに凝っていて
ゲームをクリアしライバルを出し抜くところにカタルシスを置いている。
しかし「イカゲーム」は、ゲームの勝者や敗者が決定するたびに参加者の人間性が露わになる。
外の世界に戻っても地獄が待っているだけなら、1/456の勝利を信じて賭けてみると決めたはずなのに
死を目の前にするとやはり素直に喜べず苦悩する者、むごたらしい死に様を見て拳を突き上げる者、
掃き溜めで足掻く人々の「濃さ」とバリエーションの豊富さが本作の最大の魅力になっている。
2話を丸ごと、参加者の外の世界での暮らしぶりに費やしてしまう
思い切りの良さはなかなか日本のドラマでは作れない。
1話でよくあるデスゲーム系と思わせておいて、2話で「タダものではないな」と気づかせる上手い構成だ。

高層ビルの上階で連日連夜飲み明かす者と、半地下でギリギリの生活を送る者。
格差の広がる現代の韓国で一発逆転を夢見るストーリーは決してファンタジーではなく、
90ヶ国で1位を獲得したのは、日本を含めた世界全体も似たような状況に陥っていることの証でもあるのかも知れない。

【要注意｜以下ネタバレ】

1話の前半で「これは初代『SAW/ソウ』のキャッチコピー（＝あいつはずっと【最前列】にいる）と
同じオチなのでは」と思ったら本当にそのままだったのは残念。
もちろん、多少のアレンジは加えられているが、参加者のドラマがどれも深く作り込まれていたのに対し
仕掛け人やVIPについてほとんど言及されなかったのは不満。
兄の消息を追っていた警察官もあのままとは思えない。
まぁ、その辺りはシーズン2のために敢えて未消化で残しておいたような終わり方でもあったので
決定的なマイナス要素ではない。

【ネタバレはここまで】

ゲームに招待する謎の男として1話と最終話にコン・ユが、
ゲームの終盤にはある人物としてイ・ビョンホンが登場するなど
韓国発・世界発信のコンテンツとしてかなり力を入れていたことがわかる。

1時間超えたかと思えば30分強で終わったり、
放送時間に縛られない自由な尺のおかげで最終話まで緊張感が途絶えることなく見終わった。
0から1を生み出したような革新的な作品ではないし、既視感満載なところも正直あるが
既存のアイディアを自国の社会背景も織り込んで咀嚼＆再構築し、
世界に通用するコンテンツとして送り出す韓国エンターテイメントの力技の勝利と言える。
Netflixに加入していてこの手のジャンルがお好きなら見て損はない。

「イカゲーム」はNetflixで現在配信中。

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性能に関してはレビューも高評価の優等生。持っていなかった方はラッキーなキャンペーンだ。

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