(書評)
岸本裕史『ドラえもんの学習シリーズ ドラえもんの算数おもしろ攻略 改 訂版 算数まるわかり辞典 4~6年生』(小学館)
(13)整数を分数に(p96~97)
無知は、恥ではない。
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こざかしい智に走らないこと。技巧に走らないこと。また、そのさま。
(『日本国語大辞典』「む‐ち【無知・無智】」)
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「智に働けば角が立つ」(N『草枕』)という、この文そのものが「こざかしい智」の表れだ。普通に知が働けば、角は立たない。角が立つのなら、「こざかしい智」だ。Nはそのことに気づかなかった。〈自分は普通のことも知らないようだ〉といった反省すらできなかった。文豪伝説の信者には普通の知が足りない。
偽ドラえもんにも足りない。
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3÷1=3/1
(p96)
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これを教えた後、偽ドラえもんは、「3=□/2」(p96)の解き方について、次のように語る。
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「直す整数×直す分母=分子」にすればいいんだよ。
(p97)
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またもや暗記だ。
3÷1=□÷2 または 3/1=□/2
〈÷〉と〈/〉の意味は同じ。
一般的には、
a/b=c/d
(a/b)×bd=(c/d)×bd
ad=bc
こういう説明を、偽ドラえもんはやりたくないらしい。その理由は不明。
下手な解き方の場合、□に1から順に整数を入れてみる。この種の問題をいくつかやっているうちに見当が付くようになる。スマートな解き方を学ぶのは、その後だ。
3:1=□:2
(内項同士掛けた数)=(外項同士掛けた数)
つまり、
1×□=3×2
というようなことも、丸暗記ではいけない。
偽ドラえもんは、後に、「a:bの比の値は、a÷bの商だ」(p238)と、やはり丸暗記させる。
分数、割り算、比例がきちんと理解できていなければ、中学以降の数学は理解できない。数学が理解できなければ、経済学や心理学や論理学なども理解できないらしいよ。
(13終)
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