(書評)
ピエトロ・アレティーノ『ラジオナメンティ』(角川書店)
副題は「女のおしゃべり」
「本書はボッカチョの『デカメロン』と双璧をなすもの」(訳者「解説」)だそうだ。
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それにもかかわらず、人間についてのあまりのリアリティのゆえに、さらに、世間的規範を何ひとつ顧慮しようとしないかに見えるその姿勢のゆえもあってか、本書は上述のように多くの歴史書、文学史書の中ではつねに引き合いに出されながらも、訳者の知る限りではわが国ではかつて一度も翻訳出版されたということはなかった。
(結城豊太「解説」)
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この「解説」は、一九七九年四月に書かれている。角川文庫の初版は、昭和五十四年六月三十日だ。私のこの本は初版だ。222頁で260円。いつだったか、隠れていたのを発見した。表紙が汚れている。開くと、紙は薄茶色。
「わが国」の知識人は国生み神話を隠蔽したいのかもしれない。
(終)