月夜の笑まい
詩 L
夕暮れの市場で見え隠れした
因果
指先で手まさぐると
そいつは男の肩になった
ので
あたしときたらばしめやかに
優しい小動物に戻ってやった
うしろめたいような風が頬をさすり
猫が一匹 月のお山に駈けていった
月はひたすら冴え冴えて
淫らな笑まいを降りそそぐ
めくるめく渦中に
また行ってしまった 小手先の淫蕩
かすかな痛みは遠のく汽笛でごまかした
兩切り煙草を口にくわえて
黄泉の国まで行こうなら
あたしの口紅は
いつだって赤い
(終)