(書評)
『~スペシャルプライス版~刑務所のすべて』(ミリオン出版)
著者 龍神 他多数
刑務所を出ても『どん底』(ゴーリキー)のような居場所しかなければ、また戻ってくるのも平気だろう。
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(監視がきびしく非道な取扱いを受けたことから)道路工事・鉄道工事・鉱山採掘などの労働者の合宿部屋。たこべや。
(『広辞苑』「監獄部屋」)
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刑務所は何のためにあるのだろう。
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刑務所は本来、「刑を務め、罪を償う場所」だが、実情はまるで違う。
実際には長期懲役経験者の誰もが、「犯罪者養成所である」と語る場所だ。振り込め詐欺のエキスパートが、コソ泥に詐欺の仕方を嬉々として語ったり、ハッキングのプロがヤクザ相手にパソコン講座を開いたりと、「シャバに出てからいかにして、今度はバレないように割のいい犯罪をするか」を日夜語り明かしている。
(内池智樹「“情報”を制する者が刑務所を制する!」)
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後悔はしても、反省はなかなかできない。
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そして何より主治医のA先生に出会えた事で、ヤクザやネタと縁を切り、今の私になれたと確信しています。もし、少年院に入っていなかったら、きっとネタはやめられていませんでした。いま頃は、刑務所か精神病院か墓場だったと思います。
(真心「私が過ごした少年院の三年間」)
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「ネタ」は隠語。
日本は収容所列島になってしまうかもしれない。
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現在の半官半民であるPFI形式ではなく、利益を出すことを要求される完全民営となれば、ビジネスの論理がモラルを駆逐してしまうことは避けられない。結果、作中で紹介したアメリカの例よろしく、様々な悲劇の温床となりえるのである。事実、アメリカのある州では、過去30年で犯罪率は3%しか増えていないのに、収監された人数は600%にのぼるという異常な事態が発生しており、これは民間刑務所の利益を確保するために法律が厳罰化され、以前であれば罰金刑等で済んだ軽犯罪ですらも収監の対象になっているからだと言われている。また、2008年にはアメリカのチェイニー副大統領が民間刑務所の株を保有する投資信託会社に出資し、同刑務所内で起こっていた虐待事件の捜査を妨害する圧力をかけたとして起訴される事件が起こり、世の中に民営刑務所の闇を知らしめる結果となった。
(漫画実話ナックルズ編集部「本当に刑務所を民間に任せていいのか!?」)
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「更生」という言葉を呪文のように唱えても、何も変わらない。むしろ、悪くなるかもしれない。
GOTO 『夏目漱石を読むという虚栄』〔7131 ごますり野郎]夏目漱石を読むという虚栄 7000 「自由と独立と己れ」の交錯する「現代」 7100 北極あるいは肛門 7130 知識人用語 - ヒルネボウ (goo.ne.jp)
(終)