漫画の思い出
花輪和一(26)
『護法童子・巻之(二)』(双葉社)
「旅之六 空蝉」
「空蝉」について、確認。
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「うつせみ」は「現(うつ)し臣(おみ)(人の意)」から「うつそみ」となり、さらに転じた語。「万葉集」で「空蝉」や「虚蝉」などの字があてられ、「せみのぬけがら」の意にも用いられるようになり、また、「はかないこの世」の意を表すことから、「世」「人」などにかかる枕詞(まくらことば)にもなった。
(『旺文社古語辞典』「うつせみ」)
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日本人はニヒルが好きみたいだね。
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智恵子は現身(うつしみ)のわたしを見ず、
わたしのうしろのわたしに焦がれる。
(高村光太郎『智恵子抄』「値(あ)ひがたき智恵子」)
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蝉の抜け殻というのは、蛹の皮だ。成虫の抜け殻ではない。
ところが、「空蝉」では、成体から例の〈す〉のような文字、「ばん」かな、そんなのが抜け出す。この文字の意味を、私はまだ調べていない。金剛経の「オン・バザラ・ダト・バン」の「バン」なのだろう。「びちびち」は魚の跳ねる様子を表わす擬態語だろう。
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本当はおれはこの肉体を脱(ぬ)いでいるんです
だから本当のおれはこのへんにあるんです
(「空蝉」)
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この男は印を結んでいるように見える。だが、違うのだろう。
結局、護法童子は活躍せず、大日如来なのだろうか、ぺかぺかのでかいのがいて、勧善懲悪で終ってしまう。
何が何だか、さっぱり分らない。
(終)