ここ最近、MLBでは、伝統的なブリーチズ(裾を膝まで上げるパンツ)を着用して、ストッキング、ソックスを見せて履くクラシックスタイルのユニホームの着こなしが、じわじわと広がっていることを昨年9月18日付のニューヨークタイムズ紙が特集した。MIAのイチロー選手が、ずっと貫いてきた着こなしのスタイルだ。
同紙は、「ストッキングを外に出す選手が増えてきており、ストッキングの上から着用する、スターラップスを取り入れている若い選手も出てきた」と報じている。ちなみにスターラップスとは、白いストッキングの上からもう一枚履く野球用の靴下で、足の甲と踵の部分がU字にくりぬいてあり、足の裏にストラップをかけて着用する。チームによってデザインが決まっており、黒や紺、赤などチームカラーを採用。米国では、馬に乗るときに足をかける鐙(スターラップス)に似ていることからスターラップスと呼ばれている。
MLBでは90年代からユニフォームのズボンをくるぶしまで下げるか、ズボンのすそをスパイクの踵にかけるようにして着る選手が多かったが、ここにきて原点に帰る傾向が見えてきたというのだ。
同紙は、ズボンの裾をあげて、ストッキングを外に出す選手、さらにその上にスターラップスというソックスをつけている若い世代の選手たちを何人かを紹介している。
CLEのフランシスコ・リンドーアは父親からのアドバイスに従ってスターラップスをつけているという。TBの若き遊撃手、ブラッド・ミラーもスターラップス派で、ツイッターのアカウント名は「ブラッド・スターラップ」。ミラーのチームメートで右腕のクリス・アーチャーもスターラップスを着用しており、記事中に名前が挙げられている。
NYMのカーティス・グランダーソンもそうで、高校時代から「ニグロリーグ」へ敬意を示すために、ストッキングを上にあげているという。しかし、スターラップスは着用していない。グランダーソンは足のアーチ部分にストッキングとスタラップスが二重になってしまう部分が出来て不快感があるそうだ。
このニューヨークタイムズ紙の特集記事は、野球とストッキングの歴史についても触れている。
レッドソックスやホワイトソックスというチーム名が、そのチームを識別するためのストッキングの色に由来しているのは、広く知られているところだが、1860年代の選手たちは、色のついたストッキングを履き、ふくらはぎを見せることで、女性ファンにアピールできると考えていたと報じている。イチロー選手のユニフォーム姿を見ると、さもありなん、と言ったところか。
同紙の特集記事は、さらにスターラップスの誕生の裏話も披露。
ストッキングの色でチームを識別していたMLB創成期。しかし、色つきのストッキングを履くことは、リスクもあったという。スパイクなどでふくらはぎ部分を負傷したときに、毒性のある染料が傷口に入ってしまうことがあったという。染料が傷口に入ることを防ぐために、ストッキングを二重に履くアイデアもあったが、動きにくいため、白いソックスの上に色のついたスターラップスを着けることになったと伝えている。ストッキングを外に出すイチロースタイルのメジャーリーガーが増えてきたことで、同紙は新なビジネスチャンスが生まれていることも報じた。NBAにソックスを供給しているスタンス社が、2016年5月にMLBの公式ソックスになったという。
スタンス社の野球担当者は、「これまでソックスは長い間、後回しにされてきました。そしてようやく、メジャーリーグ機構はソックスに注目をするべき時が来たと決断したのです。我々はその手伝いをしたいと思います。数シーズン後には、素晴らしいものをお見せすることができると思います」と同紙の取材に自信たっぷりに語っている。選手からアイデアを募っているそうだ。
記事では、NBAでクリスマスの試合の日に着用する特別なユニフォームとともに、スタンス社がNBAクリスマス用の特別ソックスも作っているという実績も紹介した。
同紙では一切触れられていなかったが、イチロー選手も、動きやすさや怪我防止、また疲労を防ぐ意味もこめて、このクラシックスタイルを貫いてきた。その美しさはメジャーリーガーの中でも際立っていた。2009年のWBCでは不振に陥ったイチロー選手のために、日本代表のチームメートたち全員がストッキングを上げたこともあった。
日本では、クラシックスタイルを採用する選手は、そう多くない。昨年優勝した広島の菊池選手、阪神の鳥谷選手、新人選手としては初のシーズン2本のランニング本塁打を昨年記録した東北楽天の茂木選手ら、どちらかというとスピードをイメージさせる選手がそのスタイルを採用しているが、まだチーム全体に広がるところまではいっていない。
阪神の掛布2軍監督は、ストッキングを見せて履くクラシックスタイル派。2軍監督に就任した際、チーム全員に義務づけることも考えたが、結局、それぞれの判断に任せた。(逆に1995年千葉ロッテのGMに就任した広岡達朗氏は全選手にクラシックスタイルを義務つけた)
だが、MLBの影響を受けて、これからは、若い世代の選手たちが、おしゃれなストッキングスを履いて古さを新しさに変えていくのかもしれない。
MLBでユニホームの着こなしに異変!クラシックスタイルが増加中から引用(一部追記、編集)
ストッキングの履きこなし方も時代によって流行があり、1970年代~80年代にかけてはスターラップスのアーチ部分がどんどん長くなり、サイドに見えるラインが長ければ長いほど、細ければ細いほどカッコいいという風潮があった。
#17 キース・カムストック(巨人)
当時小学生だった私もこのスタイルに憧れ自分のスターラップスのアーチを一生懸命伸ばして、履きこなそうと頑張ったものだ(苦笑)
話が脱線したが、昨今MLBにて、そのストッキングに変化が起こっている。同一チーム内で縞の入ったストッキングを履いている選手もいれば、従前どおり無地のストッキング(※1)を履いてる選手もいる。ストッキングもユニフォームの一部であり、ルール上、同一チームの選手は同一意匠のユニフォームを着用しなければならないと定められているのだが…。(最近スパイクも同一チーム内で色が統一されていないような気もする…)ロングパンツの流行により、ストッキングは忘れられたギアになってしまい無法地帯になってしまったのだろうか?
(※1)STLのように元から縞模様があるストッキングを着用しているチームもあるので、全チームが元から無地というわけではない
上記記事に記載がある「
スタンス社」が昨年5月にMLBに参入した結果、MLB選手の足元は同一チーム内でも縞入りやチームロゴが入ったストッキングと、従前からの無地ストッキング(厳密にはサイドにスタント社の格子柄マークと後方にMLB「バットマン」ロゴが追加され以前のように完全無地ではなくなった)が入り乱れるようになった。
例としてTEXの一部選手のストッキング正面にはテキサスのシンボルでもある「ローンスター」が、後方にはチームロゴの「T」が表示され、足首には派手な縞の模様が入っていた。CLEも本来はネイビー単色のはずのストッキングに4本の赤い縞が入り、チームロゴの「C」が表示されていた。
他にも…
#2 クリス・デービス(OAK)
#29 スコット・カズミアー(LAD)
ロングパンツの流行で長年無視され続けてきたストッキングが反乱を起こし、強烈に自己主張し始めた。これは一過性ではなく定着していくのだろうか?
まぁ、野球に限らずユニフォームっていうのは流行に左右されやすい。新しいものが出てくると当初は違和感はあるけど次第に慣れていく。他のスポーツはよくわからないが、野球に関して言えば、新しいスタイルが発生してもダメなものは徐々に淘汰されていくし、いいものは残っていくしね。襟なしユニフォームが出てきた時、左袖に配置されていたチームロゴ(一部チームで採用)が胸に移動した時、背番号や背ネームが表示され始めた時も、当時は違和感があったかもしれない。でも、今では全く違和感のないデザインだしね。
チームロゴが左袖に配置されているニューヨーク・ジャイアンツ復刻ユニフォーム
(1912年版なので本来は背番号がないはずなんだけど、現代版にアレンジされてますな)
そこまで昔に遡るとキリがないので、近年の流行りで新たに発生し、淘汰されたモノ、定着したモノを思いついたレベルで羅列してみた。
【淘汰された一過性の流行り】
○ブルオーバー上着
○ベルトレスパンツ
◇水色のビジターユニフォーム
◆投手用ヘルメット(安全対策のためなので厳密には流行りではない)
2015年NYM在籍時 #54 アレックス・トーレス(現群馬ダイヤモンドペガサス/元TB、SD、NYM)
安全対策と言われれば否定的なことは言及しにくいが…マリオ帽子のように巨大でデザインもひどく、敵ばかりか味方からもからかわれ…結局普及しなかった…
【(一部でも)定着したと思われる流行り】
●ロングパンツ
●フラットブリムキャップ
●ストッキングのクラシックスタイル
○コンプレッション・アンダーシャツ
◇ラケットライン(※1)(正確には新懐古主義による復活)
【現段階で定着してるか不明】
○昇華プリント(MLBでは全く採用されていない)
○メッシュ素材(※2)(同じくMLBでは全く採用されていない)
●今回言及したスタンス社スタイルのストッキング(MLBのみ)
注:○は機能性向上のため発生した流行り
●はファッション的要素で発生した流行り
◇デザイン的な流行
◆安全対策のため
(※1)但し、最近はNPB、KBOでは減少傾向。NPBで採用しているのは埼玉西武、阪神、福岡ソフトバンク、広島(V)と一時期に比べると減少。KBOでも以前は殆どの球団が採用していたが現在採用しているのはNC、トゥサン、ロッテ(V)だけ。MBLでも現在は全球団の約1/3まで減少。採用球団はBOS(H)、DET、HOU、SEA、TB、ATL、CIN(H)、COL(V)、NYM(V)、SD(H)、SF(V)、WSH(H)[オルタネイトは調査対象外]。但しCPBLでは半数の統一、Lamigoが採用。(NPB、KBO、CPBL、MBL全て2017年現在の状況)
(※2)元中日・横浜のエディ・ギャラード投手は中日球団が支給したメッシュのユニフォームを「メッシュはマイナーリーガーが着用するもの」と断固拒否し、MLB時代同様ニットのユニフォームを着用し続けた。そんな強いこだわりを持つ彼が、横浜移籍後、MLBでは既に過去の遺物となったプルオーバーのユニフォームを着用することになってどう思ったのであろうか?
正直、機能性だけを重視するのなら上着のボタンも、パンツのベルトも不要だからこそ、プルオーバーやベルトレスパンツって生まれたんだろうけど、そこはやっぱ野球のユニフォーム。無駄でも伝統的仕様は完全に排除できない。そーゆー見た目だけのこだわりがあるからこそ野球なんだよなぁ~
でも、ファッション的要素で発生した「ロングパンツ」や「フラットブリムキャップ」はそこそこ定着してる感もあるから「スタンス社スタイルのストッキング」も定着するのかなぁ?今は違和感だらけだけどね
こちらの
記事の方が、詳細詳しく書いてありましたので追記(2017/5/23)
※他にも
ユニフォームのこと、ゴチャゴチャ言ってます(笑)