インディアンズの酋長チームロゴが差別問題で来季から消える!
私が所有している「ワフー酋長」が描かれたクリーブランド・インディアンズのキャップ
メジャーリーグのクリーブランド・インディアンズが今季限りで「ワフー酋長」を使ったチームロゴを変更することを発表した。インディアンズは1947年から、このロゴを使用してきたが、チーム名も含めネイティブアメリカンへの人種差別にあたるとの議論が起きていた。メジャーリーグ機構側もロゴの変更を要望、インディアンズ側と、これまで協議を続けてきたが、ついに球団側が、ロゴ変更を決意したものだ。
米各メディアが一斉に報じており、スポーツイラストレイテッド誌は、「クリーブランド・インディアンズは、2019年からワフー酋長のロゴのユニホーム使用をやめる」との見出しで、メジャーリーグ機構とインディアンズが来季からチームロゴを変更することに合意した事実を伝えた。
インディアンズのオーナーであるポール・ドラン氏は、「多くのファンがワフー酋長のロゴに愛着を持っていることを理解する一方、マンフレッド・コミッショナーが希望するように2019年からロゴを外すことで最終的に合意しました」との声明を発表。
またロゴ変更を訴えてきたロブ・マンフレッド・コミッショナーも、「これまで我々はインディアンズとワフー酋長のロゴの使用について対話を図ってきた。建設的な話し合いができた。ただ、球団オーナーのポール・ドラン氏は、球団の歴史において、ロゴとその場所に長い思い入れを持つファンがいることも明らかにしている」とのコメントを出している。
ワフー酋長を使ったロゴは、1947年以来、インディアンズのユニホームや帽子などに使用されてきた。当時、17歳だった故ウォルター・ゴールドバッハ氏が最初のロゴをデザインしたもの。ちなみに同氏は昨年12月に88歳で死去している。ただ、ネイティブアメリカンへの差別ではないか、の批判があり、過去、数年にわたり、ロゴのマイナーチェンジを行い、ワフー酋長のロゴ使用の比率を落としてきていた。彼らの中心的なロゴは、ブロック体のCの文字で、アリゾナ州グッドイヤーでのスプリングトレーニングでは、ワフー酋長のロゴはギフトショップを除き、帽子、ユニホームだけでなく広告からも外されていた。
「チームはアリゾナ州のネイティブ系アメリカ人の人口に敬意を払い使用していなかった」というが、2016年にカナダで起きた訴訟問題が、今回の決断への大きな引き金になった。
ロゴ差別問題は、2016年のトロント・ブルージェイズとのア・リーグ優勝決定戦前に訴訟問題に発展。ネイティブ系アメリカ人活動家が訴訟を起こしたのである。この裁判では、カナダの判事が「カナダの法律においては、ワフー酋長のマスコットは先住民を違法に差別していない」との判決を下しており、インディアンズはトロントでの試合でロゴのついたユニホーム着用が許されていたが、インディアンズの地元メディア「Cleveland.com」によると、「ロゴは数年にわたり、ネイティブ系アメリカン団体から人種差別として批判を受け、訴訟を起こされるなど一触即発の状態にあった」という。
同紙によるとロブ・マンフレッド氏が2019年のオールスターゲームをインディアンズの本拠地であるクリーブランドで開催することを決めたとき同時にワフー酋長のロゴ変更の方針が、ほぼ固まっていたようだ。
ただ、インディアンズのチーム名は変更されない。アメリカン・リーグの創設球団の1つで、インディアンズは1915年から同チーム名を続けているためだ。球団の新しいメインロゴは、大きなCの文字とIndiansの筆記体が合わせられるという。また商標を維持するため、現在のロゴの入ったマスコットの販売は続けられる。
しかし、長年の愛着のあるロゴの変更決定はインディアンズファンに大きな衝撃を与えたようで早くもSNS上で賛否が噴出している。前出の「Cleveland.com」は、「インディアンズのファンがワフー酋長のロゴ撤回にソーシャルメディアで反応している」と賛否が入り乱れている現象を取り上げ、「ファンはコミッショナーのロブ・マンフレッド氏がプッシュしたロゴの変更に対して賛成する立場と、クリーブランドの歴史の一部となるチーム遺産を攻撃するものとする両意見に分かれている」と報じた。
「ワフー酋長なしにインディアンズの歴史はない。Cを使って何をするんだ?」
「インディアンズがワフー酋長のロゴをあきらめたのは悲しいことだ」
という反対意見に対して「ワフー酋長は20世紀のもの。必ず別のロゴを作り出せる」という賛成意見や、「インディアンズはロゴだけでは語れない。ファンは理解するべきだ。ワフー酋長のロゴ撤回で、ワシントンDCのフットボールチームにプレッシャーがかかることを期待する」と、同じくネイティブアメリカンをチームロゴに使っているNFLのレッドスキンズに対して問題提起するコメントまで寄せられている。
引用記事はこちら
インディアンズは、1948年にワフー酋長をユニフォームに採用、しかし実際には、その数年前からチームのアイデンティティの一部となっていた。
1948年 初期モデルの「ワフー酋長」
1946年にワフー酋長はチームの初代ロゴに採用され、その後マイナーチェンジを経て1951年に現行モデルが完成。キャップに初採用されたのが1954年(その時は広島東洋カープのような横長の赤字「C」の下にワフー酋長を配置)。一旦キャップのワフー酋長は廃止になるが1962年だけ、今度は横長の赤字「C」の上にワフー酋長を配置。その後4パターンの「C」を採用した後、1986年に再度「ワフー酋長」が採用され、少々マイナーチェンジはあるものの現在に至る。しかし、近年はブロック体「C」が優先的に使用され、その露出が著しく縮小された。
この件については、私も以前から関心を抱いており、ここでも言及した。その際には『歴史と伝統・愛着を理由に守ろうとする人々、侮蔑的な意図を感じ撤廃を求める人々、相反する2つの主張はどこに着地点を見いだせるのだろうか?』と玉虫色な表現ではっきりした自身の意見を述べることは避けたが…廃止ということで決着がついた。(参考記事)
単純にデザインとして評価すれば『ワフー酋長』は素晴らしい出来栄えのロゴであるというのが私見だったので…批判は覚悟だが寂しい気持ちに満ちているのが正直な心境だ。
とは言っても、それを不快に感じる人が存在するのであれば放置するべきでもない。この決定は避けられなかったのだろう。
1989年映画「メジャーリーグ」が公開され、私とMLBの距離を一気に縮めてくれた「ワフー酋長」ゆえに思い入れの強いカリカチュアだったが…その歴史に幕を閉じる時がやってきた。
今年いっぱいで撤退を余儀なくされたワフー酋長ではあるが、その歴史と伝統、功績は永久に失われることはない。しかし、昨今、人種問題に絡んでしまうと、その歴史と伝統も撤去の対称になりうると認識しなければならないという教訓になった。
※他にもユニフォームのこと、球場のことを言及しています。