ふと、「聖地ルルド」というサブタイトルが目に留まり、帚木蓬生氏の「信仰と医学」を読んだ。
聖ベルナデットの聖母マリアとの遭遇、そして今日までの多くの巡礼者(そう言えば、コロナ禍の中で、聖地はどうなっているのだろうか)、
聖ベルナデットの聖母マリアとの遭遇、そして今日までの多くの巡礼者(そう言えば、コロナ禍の中で、聖地はどうなっているのだろうか)、
そういったあれこれを断片的に知識として知ってはいても、それをまとめて医学的な視点から記述した日本語の文献はあまり読んだことがなく、興味をもったのである。
箒木氏は仏文科卒後に精神科医となった作家であり、フランス留学の経験もある。
ルルドについて語るにはこの上ないバックグラウンドである。
この本では、まず氏が実際にルルドを訪れた時のエピソードをプロローグとし、
ついで、ルルドにおいて、ベルナデットという少女がいつ、どのようにして聖母マリアと出会い、語らい、それに対して周囲の社会がどう反応したかを詳細に綴っている。
この記録は一人の神父によるものとのことだが、まるでドキュメンタリーのように、当時のセリフの一言一言まで書かれており精細だ。
次いで、その後のルルドの発展や、「ルルド国際医学評議会」について、
また最終章は、おそらく皆が抱いているであろう疑問、「奇跡の治癒はプラセボ効果か」というタイトルで論じられている。
その疑問に、明確に回答を出すような書き方は、本書では注意深く避けられている、と思える。
しかし著者は言う、
「しかしルルドが(中略)他に類を見ない特異な場所になっているのは、そこでは宗教と医学が手を取り合って、お互いを、補完し合っているからである」。(“おわりに”より)
宗教と医学が並び立つからこそ、ルルドは特別であり、病者も健康な人も、いつか訪れてみたいと思える地なのであろう。
いつか、ベルナデットの見た風景を見に行きたい、と思う。