骨の「強さ」は、いわゆる「骨密度」だけではなく、骨の「質」にもよっている。
そしてその骨の「質」は、糖尿病や動脈硬化など、生活習慣病に影響される。
そういったことが、近年次第に明らかになってきています。
特に糖尿病については、高血糖状態から骨のコラーゲン分子が糖化を起こすことで骨構造の劣化が生じ、このために糖尿病患者さんでは、骨密度の低下がなくても骨折が多くなると報告されています。
しかしこの点について、これまで日本人を対象とした臨床研究はあまり見当たりませんでした。
最近、日本人男性を対象として、"高血糖状態が骨粗鬆症による骨折のリスク上昇と関連する"という知見を報告する論文が発表されましたので、以下に簡単に紹介してみます。
65歳以上の地域在住日本人男性を対象とした「藤原京スタディ」というコホート研究による解析で、空腹時血糖値とHbA1c、骨密度を解析し、骨粗鬆症による骨折の有無を調査。
1型糖尿病と確定済みであったり、チアゾリジンによる治療中であるなどの一部を除いた1,951名を解析。さまざまな背景因子や臨床データから、血糖と骨折リスクとの関連を検討しています。
血糖の状態については、空腹時血糖値とHbA1cをそれぞれ以下の3カテゴリーに分類して検討。
・正常型: 空腹時血糖が100 mg/dL未満 または HbA1cが5.7%未満
・耐糖能異常/前糖尿病型: 空腹時血糖が100 mg/dL以上126 mg/dL未満 または HbA1cが5.7%以上6.5%未満
・糖尿病型: 空腹時血糖 126 mg/dL以上 または HbA1c 6.5%以上
その結果、
・血糖値またはHbA1cが「糖尿病型」の男性は、骨粗鬆症性骨折のリスクが血糖値正常の人に比べて明らかに高い(2倍以上)
・HbA1cが「前糖尿病型」(糖尿病ほどではないが血糖が高い)の人は、主要な骨粗鬆症性骨折(脊椎、股関節、上腕骨近位部、橈骨遠位部)のリスクが、血糖が正常の人に比べて2倍程度高い
・高血糖であるほど骨折リスクが高くなるという傾向がある
ということがわかりました。
つまり、糖尿病の方はもちろん、まだ「糖尿病」と診断されていない段階でも、骨折リスクが高まった状態にあるということです。
健診で「血糖が高め」と言われたら、将来の骨折予防のために今から要注意!ですね。
Iki M, et al.
Hyperglycemic status is associated with an elevated risk of osteoporotic fracture in community-dwelling elderly Japanese men: The Fujiwara-kyo osteoporosis risk in men (FORMEN) cohort study.https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S8756328219300055
ちなみにFORMEN studyというのはFujiwara-kyo Osteoporosis Risk in Menの頭文字を取ったそうです。