Quelque chose?

医療と向き合いながら、毎日少しずつ何かを。

「デエビゴ」

2020-02-18 | 医学・医療・健康
不眠症治療薬「デエビゴ」が販売承認になり、
今日、製薬会社の説明を受けた。

スボレキサント(ベルソムラ)と同系のオレキシン受容体拮抗薬(レンボレキサント)である。

ゾルピデムとの比較において、睡眠潜時や中途覚醒に対する作用が有意に上回るという。

スボレキサントと比べ、半減期が長い。いわゆる悪夢は少ないということだが、さて実際に使うとどんな感じか。クラリスとの併用が可能なのはよいかもしれない。

・・はいいのであるが、

そのネーミングはどうした。

英語ではDAYVIGOだということなのだが、デイビゴではなくデエビゴ。

東北出身のMRの方が「地元では親しみやすい音だと思います」とおっしゃっていた。
んだべし。

あと、「沖縄の薬ですか?と聞かれたりします。」とのことである。
何か、花が咲くのかこの薬。

アルコールと乳癌

2020-02-14 | 医学・医療・健康
人間ドックの診察をしていて、
お酒は乳癌と関連しますよ・・という話をしたのであるが、
念のため、これまでに報告されているデータを確認することにした。

飲酒と乳癌との関連について報告するコホート研究はすぐ見つかった。

さらに、日本乳癌学会のガイドラインを見てみると

ステートメント
・アルコール飲料の摂取により閉経前では乳癌発症リスクが増加する可能性があり,閉経後では乳癌発症リスクが増加することはほぼ確実である。
〔エビデンスグレード:Probable(ほぼ確実)〕

となっていた。

やはり、「飲酒は乳癌と関連しますよ」ということである。
"あとで悔やむような飲み方"をしないように気をつけたい。

なお、アルコールの「量」については

「用量反応関係は明瞭」であるが
「閾値は同定されなかった」
とされており、
つまり、”飲めば飲むほどリスクは高くなるけれども、「特に、どのくらい以上飲むのがホントにだめなのか」というような基準はない"ということだ。

いずれにしても、乳癌の発症リスクを考えるなら、飲酒は控えめにした方が良いのである。

まあアルコール(の代謝物)は一般に言って発がん性があるので、乳癌だけのリスクではないわけであるけれども。

アルコールという薬物の害をわかった上で、お酒と上手に付き合いましょう。

DPP4阻害薬は強皮症の肺線維化を抑制するのか?

2020-02-10 | 医学・医療・健康
Soare A, et  al.
Dipeptidylpeptidase 4 as a Marker of Activated Fibroblasts and a Potential Target for the Treatment of Fibrosis in Systemic Sclerosis.
Arthritis Rheumatol. 2020 Jan;72(1):137-149. doi: 10.1002/art.41058.


DPP4(dipeptidyl-peptidase-4)阻害薬(シタグリプチン、リナグリプチンなど)と言えば、言わずと知れた糖尿病の薬(DPP-4によるインクレチン分解を抑制し、血糖上昇時の膵臓からのインスリン分泌を誘導する)。

しかし、DPP-4が分解する基質は他にもあり、また酵素作用に依存しない機能も報告されていることから、DPP-4阻害薬には、血糖コントロール以外に、他の病態に対しても応用できる可能性がありそうだ。

ということで今回の論文は、強皮症とDPP-4についての報告。

まずDPP4の発現を検討すると、強皮症の皮膚では健常人と比べ、DPP4発現細胞が増加していた。
In vitroの実験では、ヒト皮膚線維芽細胞をTGFbで刺激するとDPP-4が発現誘導され、DPP4の発現はmyofibroblastマーカーやtype I collagenの発現と関連していた。
さらに、強皮症患者由来の線維芽細胞をシタグリプチンで処理すると、TGFbによるmyofibroblastへの転移が抑制されたという。マウスによる疾患モデルにおいては、DPP-4の治療効果も一部示唆されたとのこと。

強皮症の間質性肺炎と言えば最近はNintedanibが話題であるが、まだデータが少なく、今のところは、実際どうなんだろうな・・という感じもある(先日のRheumatologistの誌面では、まだちょっと様子を見てから使おうという意見が掲載されていたし)。
しかしDPP-4阻害薬であれば、糖尿病において十分な臨床経験のある薬であり、膠原病に一定の有効性が期待できるのであれば興味深い。
今後の研究を見守りたい。

(とは言え、DPP-4が今後もし臨床応用されるとしても、血糖も下がるしそれはそれで注意が必要なのは当然ですね。)


abremilastのベーチェット病への効果

2020-02-02 | 医学・医療・健康
Real-world effectiveness of apremilast in multirefractory mucosal involvement of Behcet's disease
Ann Rheum Dis 78(12): 1736, 2019

ARDのletterに掲載されていた、他の治療で効果が少なかったベーチェット病患者さん少人数(13例)での使用経験報告。

アプレミラスト6ヶ月までの投与期間で、口腔アフタについては改善を維持。
陰部潰瘍については有意ではないものの、良い傾向にあった。
関節痛についてもある程度の効果は期待できるという。
なお、途中の投与3ヶ月時点、で副作用の下痢のために3名が使用中止したとのこと。

まだまだこれからデータを蓄積していく必要はあるけれど、参考になる。 

リウマチ診療とAI

2020-01-29 | 医学・医療・健康
今日参加した講演会にて、
リウマチ診療に、AIによるディープラーニングを活用しようとする試みについての話を聞いた。
具体的には、多数の患者さんからのレントゲン画像をデータ化し、AIに評価させようとする取り組みということであった。

レントゲンなどの画像評価はばらつきも出やすく、AIが作業をサポートしてくれれば診療に活かせそうで興味深かったが、

後で、一緒に参加していたN先生と、
このシステムができる頃には、リウマチの外来診療のあり方自体が変わっているかもしれないですね、という話をした。


ただ、診療体制が変わったとしても

痛む脚をゆっくり動かしながら、杖をついて外来にいらっしゃる高齢のリウマチ患者さんに、体調はどうですか?と話しかけるのは、
やっぱりまだまだAIではなくて私でありたい。