信長の棺
まだ読んでいる人はいるのかな、と思って検索したら、わが自治体では7冊中5冊が「貸し出し中」でした。予想より読まれています。
まあ、なんというか、陰謀ものですね。「ダヴィンチコード」とか「聖書の暗号」のたぐい、だと私はそう思います。
本能寺の地下に「逃げ穴」があったが、秀吉がそれを「ふさいで」しまったために、信長は逃げられなかったとかトンデモない話が骨子です。
信長の遺体は何故見つからないのか、普通なら「大火で焼けたから」と考えますが、それがこの小説の「主題」です。遺体は焼けて判別できないからない、とは筆者は考えないようです。
「信長殺し光秀ではない」からはじまって、「本能寺陰謀もの」は多くありますが、なんというか「つまらない話」ばかりです。
「明智光秀はたいした武将でもないのに、単独で大事を起こすわけない」が前提となっている場合が多いのですが、数人しかいない「方面司令官」である光秀をどんだけ下に見れば気が済むのでしょう。
で、信長の棺なんかもそうですが「秀吉陰謀説」が出てくるわけです。「中国大返しがあんなにうまくいくわけはない。事前に準備していたのだ」という感じの話になっていきます。
さて「秀吉は本能寺を予見していたか」についてです。
〇別に秀吉が本能寺の変の「黒幕」でなくとも、予見していてもおかしくはない。
と思います。
柴田勝家が上杉謙信に敗れた戦に、秀吉は従軍していません。勝家と「喧嘩して帰ってきて」しまったからです。で蟄居です。
ところが松永久秀が裏切るにあたり、秀吉は信長の命のもと、軍勢を率いて織田信忠と合流し、信貴山城の戦いで久秀を爆死させます。
「太閤もの」ですと、秀吉は久秀の裏切りを予見していたのだ、となりますが、そこまで凄くはないでしょう。ただ勝家と意見が違っただけとも言えます。上杉謙信に「上洛の意図」があったかは分かりませんが、謙信のそれまでの行動からみて「天下人になる気はなかった」でしょう。領土拡大の意図がない上杉家と「上杉家の領土内で戦う」のは愚かです。で秀吉は反対したわけです。実際、上杉の領土で戦って散々負けます。
ただ「死ぬ覚悟で帰った」のかと考えると、それもまた愚かです。そういう後世の武士の鑑みたいな人物は乱世にはあまりいません。
そのかわり、秀吉の心のどこかに「畿内の誰かが謀反を起こした場合、織田家には軍事力が足りない」という「読み」はあったと思います。
松永久秀の謀反を「なんとなくありそうなことだ」ぐらいには秀吉は考えていたでしょう。
これを中国攻めの段階に当てはめると、さらに謀反は増加していました。信長の晩年は謀反は増加の一途だったのです。
だから「絶対謀反は起らない」と考える方がむしろ変、です。秀吉は「そういうこともありうる」と考えたでしょう。信長が死ななくても、その時は帰京する必要があります。「帰京することを絶えず考えていた」としてもおかしくありません。
だから中国大返しの奇跡は、奇跡ではあるものの、「だから秀吉が黒幕だ」とはならないと思います。
まだ読んでいる人はいるのかな、と思って検索したら、わが自治体では7冊中5冊が「貸し出し中」でした。予想より読まれています。
まあ、なんというか、陰謀ものですね。「ダヴィンチコード」とか「聖書の暗号」のたぐい、だと私はそう思います。
本能寺の地下に「逃げ穴」があったが、秀吉がそれを「ふさいで」しまったために、信長は逃げられなかったとかトンデモない話が骨子です。
信長の遺体は何故見つからないのか、普通なら「大火で焼けたから」と考えますが、それがこの小説の「主題」です。遺体は焼けて判別できないからない、とは筆者は考えないようです。
「信長殺し光秀ではない」からはじまって、「本能寺陰謀もの」は多くありますが、なんというか「つまらない話」ばかりです。
「明智光秀はたいした武将でもないのに、単独で大事を起こすわけない」が前提となっている場合が多いのですが、数人しかいない「方面司令官」である光秀をどんだけ下に見れば気が済むのでしょう。
で、信長の棺なんかもそうですが「秀吉陰謀説」が出てくるわけです。「中国大返しがあんなにうまくいくわけはない。事前に準備していたのだ」という感じの話になっていきます。
さて「秀吉は本能寺を予見していたか」についてです。
〇別に秀吉が本能寺の変の「黒幕」でなくとも、予見していてもおかしくはない。
と思います。
柴田勝家が上杉謙信に敗れた戦に、秀吉は従軍していません。勝家と「喧嘩して帰ってきて」しまったからです。で蟄居です。
ところが松永久秀が裏切るにあたり、秀吉は信長の命のもと、軍勢を率いて織田信忠と合流し、信貴山城の戦いで久秀を爆死させます。
「太閤もの」ですと、秀吉は久秀の裏切りを予見していたのだ、となりますが、そこまで凄くはないでしょう。ただ勝家と意見が違っただけとも言えます。上杉謙信に「上洛の意図」があったかは分かりませんが、謙信のそれまでの行動からみて「天下人になる気はなかった」でしょう。領土拡大の意図がない上杉家と「上杉家の領土内で戦う」のは愚かです。で秀吉は反対したわけです。実際、上杉の領土で戦って散々負けます。
ただ「死ぬ覚悟で帰った」のかと考えると、それもまた愚かです。そういう後世の武士の鑑みたいな人物は乱世にはあまりいません。
そのかわり、秀吉の心のどこかに「畿内の誰かが謀反を起こした場合、織田家には軍事力が足りない」という「読み」はあったと思います。
松永久秀の謀反を「なんとなくありそうなことだ」ぐらいには秀吉は考えていたでしょう。
これを中国攻めの段階に当てはめると、さらに謀反は増加していました。信長の晩年は謀反は増加の一途だったのです。
だから「絶対謀反は起らない」と考える方がむしろ変、です。秀吉は「そういうこともありうる」と考えたでしょう。信長が死ななくても、その時は帰京する必要があります。「帰京することを絶えず考えていた」としてもおかしくありません。
だから中国大返しの奇跡は、奇跡ではあるものの、「だから秀吉が黒幕だ」とはならないと思います。