Action is my middle name ~かいなってぃーのMorrisseyブログ

かいなってぃーのMorrissey・The Smithsに関するよしなしごと。

Hand in Glove

2024-11-02 19:29:16 | ザ・スミス歌詞/The Smiths
Hand in Glove
“The Smiths”(1984)収録
ファーストの7曲目。レコードではB面2曲目。1983年5月にリリースしたザ・スミスのデビューシングル曲。
シングルの画像が男の裸、しかも歌詞も歌詞で、「BL!?」と思った(ちょくちょく思い過ぎ)。
しかし当時の日本盤の日本語訳にはタイトル「手袋はめて」と書いてあったため、どういうことだろう??と思った。何か、ドラえもんの秘密道具の「スーパー手袋」のように、お揃いの手袋でもはめると愛のパワーが出る話??と想像したり…。1992年、中川五郎氏訳『モリッシー詩集』では「仲良くつるんで」となっていた。その時初めて辞書を引いた私は“Hand in Glove”に、「(…と)きわめて親しい間柄で、ぐるになって、結託して」という意味があると知った。
でもこの歌詞は「仲良くつるんで♪」というちょっとのん気なものではない気がする。たった3分ちょっとで、唯一無比の愛への確信が、最後には二度と会えないという予感に終わる、急速展開ソングなのだ。
なぜこの愛は、唯一無比なのか?
モリッシーは1985年に“Star Hits”のインタビューで、自分が書いたお気に入りの歌詞は“Hand in Glove”にあると答えている。
「私にとって最も貴重な歌詞は
『善良な奴らは笑う
そうさ、僕らはボロ布に隠れてるかもしれないが
奴らが決して持てないものを持ってる』
というもの。これは、私が服を買う余裕がなくてボロ服を着ていたときに感じたことだが、自分が精神的に困窮しているなんて思わなかった。
インスピレーション?
人々が自分の持ち物や服装を非常に重要視し、物質主義的な価値観を持っていることが、まったくくだらない。内面にあるものこそが、その人の本当の姿なのだという古い決まり文句に立ち戻る」
つまり、持たぬ者、貧しい人々はつまらない生活を強いられるという社会に押し付けられた固定観念からの脱出こそがテーマなのだ。モリッシーの好きな『蜜の味』や『長距離ランナーの孤独』などのキッチンシンクドラマからの影響も感じる。
モリッシーは、いわゆる「The Good People(世間的に善良な人々)」の「こうであらねば」「これ以外はNG」みたいな考え方が嫌いだ。「善良」であるがゆえのステレオタイプ的視野狭窄とか、無知とか、残酷さとか、そういうもの対抗するのが「太陽は後ろから昇る」他のどんな愛とも違う僕たちの愛である。だから唯一無比なのだ。そんじょそこらのラブラブとは覚悟が違う。
もちろん「善良」な奴らはそんな異物を見逃すわけないから非難しまくる。不適切です!!不謹慎です!!その奴らが嫌いな「異物」には、もちろん同性愛も含まれるだろう。
しかしこの歌でモリッシーが言わんとしているのは、主体の性だとか、でも「いいもん、愛があるもんね!ルンルン」な気分の話ではないではない。この歌は単なるラブソングではなく、善良な人々の牛耳る世間への宣戦布告、言わば共闘のための手段としての「僕たちの愛」の話だ。
でも簡単にいくわけはない、さすがモリッシーの書く「僕」は冷静で、高まりながら終わりも見つめる。常にメタ視点のメタッシーである。「奴ら」につぶされるから二度と会えないのではない。
モリッシーは上記インタビューで、「叙情的な意味で、痛烈に詩的でありながら、同時に歓喜に満ちた何かがあることが重要だった」と言いつつ、そのテーマは「完全な孤独」だと語っている。自分たちが孤独な自分たちである以上、共闘も終わる。「手袋」はいつかは外され、自分自身でヤバいものに対峙していかなくてはならない。
よくこの歌は、モリッシーがジョニー・マーとの関係を歌ったものではないかと言われる。ジョニー自身が2006年“Uncut”のインタビューで、
「“Hand in Glove”を出した時、僕でさえ自分とモリッシーのことだと思った。当時、お互いにつるんでた相手はお互いだけだったしね」

と、言っている。通常のスミスの曲は、モリッシーの歌詞があってジョニーが曲をつけていたが、この曲はジョニーが先に曲を書き、「おおお!」というできだったが自分の家で録音できないので恋人のアンジーにモリッシーの家に車で連れて行ってもらった。

なんとその時モリッシーは、この歌詞を2時間で書いた。玄関開けたら2時間でハンドイングローブ。天才である。それですぐ録音した。

モリッシーが歌詞を書く際、大きなテーマとして虐げられるものの抵抗、そしてその孤独があったが、頭の中に目の前の、ジョニーのことがなかったはずがない。甘い愛なんかじゃない、肝胆相照らす仲の相棒を得た歓喜と、そんなすごい関係はずっとは続かないのではないかという絶望。マーの奏でるギターにその混濁した強烈な感情をそのまま高速瞬間冷凍のように歌詞にしてしまって乗せたこの歌は、あまりに美しい。何度聴いても、どんな展開で、何が起こるかもわかっているのに泣けてしまう。 奇跡みたいな創作物だ。

1986年12月12日のロンドンのブリクストンアカデミーでのスミスのライブでのラスト曲となった。ジョニーが正式にバンドを脱退したのが翌年1月なので、その時点で「これが最後」なんて誰も思っていなかった。

その映像を観ると、最後までジョニーと踊り、ジョニーと笑い合う。3分ちょっとなのに、ずっと続く、永遠みたいだ。そしてモリッシーの咆哮のような

And I'll probably never see you again
I'll probably never see you again
I'll probably never see you again

で、終わる。本当に、終わる。ザ・スミスは終わってしまう。

もう二度と会えないかも
もう二度と会えないかもしれない
たぶんもう二度と会えないだろう

The Smiths - Hand In Glove - Brixton Academy, 12th Dec 1986

密につながって

密につながっている僕たち
太陽は後ろから昇る
他のどんな愛とも違う
僕たちだから、この愛は違う
ぴったり合わさっている僕たち
望めばどこへだって行ける
そしてすべては君が
どれだけ僕の近くにいるかなんだ

人に見られても
ジロジロ見られようとも
ああ、本当に気にしない
本当にどうでもいい
僕のサングラスにキスしてよ
ああ…

密につながっている僕たち
善良な奴らは笑う
そうさ、僕らはボロをまとってるかもしれないが
奴らが決して持てないものを持ってる
ぴったり合わさっている僕たち
太陽は後ろから輝く
ボロにくるまっていても僕らには
奴らが決して手に入れられないものがある

人に見られても
ジロジロ見られようとも
ああ、本当に気にしない
本当にどうでもいい
僕のサングラスにキスしてよ
ああ…

だから君とぴったり合わさって
僕は自分の主張を貫く
息絶えるまで戦う
奴らが君の髪一本でも触れようものなら
最期まで戦い抜く
良い人生はどこかにある
だから魅惑の君、僕の腕にくっついてて
でも、僕は自分の運を知りすぎている
そう、わかり過ぎてるんだ
君にはもう二度と会えないかも
もう二度と会えないかもしれない
たぶんもう二度と会えないだろう

Hand in glove

Hand in glove
The sun shines out of our behinds
No, it's not like any other love
This one is different because it's us
Hand in glove
We can go wherever we please
And everything depends upon
How near you stand to me

And if the people stare
Then the people stare
Oh, I really don't know
And I really don't care
Kiss my shades
Oh oh oh, oh oh oh

Hand in glove
The Good People laugh
Yes, we may be hidden by rags
But we've something they'll never have
Hand in glove
The sun shines out of our behinds
Yes, we may be hidden by rags
But we've something they'll never have

And if the people stare
Then the people stare
Oh, I really don't know
And I really don't care
(Kiss my shades)
(Oh-oh-oh, oh-oh-oh)
(Oh-oh-oh, oh-oh-oh)

So, hand in glove I stake my claim
I'll fight to the last breath (Oh)
If they dare touch a hair on your head
I'll fight to the last breath (Oh)
For the good life is out there somewhere
So stay on my arm, you little charmer
But I know my luck too well
Yes, I know my luck too well
And I'll probably never see you again
I'll probably never see you again
I'll probably never see you again

Oh oh oh oh, oh oh oh


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