『The NET 網に囚われた男』(2016)
@東京フィルメックス オープニング作品
【作品解説】
韓国 / 2016 / 112分 / 監督:キム・ギドク (KIM Ki-duk)
提供:キングレコード 配給:クレストインターナショナル
妻子と平穏な日々を送っていた北朝鮮の漁師・ナムは、網がエンジンに巻き込まれたトラブルにより、意に反して水上の韓国との国境を越えてしまう。韓国の警察に捉えられたナムは、スパイと疑われて拷問を受け、更には韓国への亡命を強要される。妻子の元にただ戻りたいだけのナムは自らの意思を貫き、ついに北朝鮮に戻ることになる。表面的には資本主義の誘惑に打ち勝った英雄として北朝鮮に迎えられたナムだったが、彼を待っていたのは更に過酷な運命だった……。キム・ギドク作品のトレードマークであった極端なバイオレンスは本作では封印され、体制に翻弄される一人の男の姿が重厚に描かれた傑作。ナムを演じたリュ・スンボムの熱演も見どころだ。
© 2016 KIM Ki-duk Film. All Rights Reserved.
(東京フィルメックス公式HPより引用)
【感想レビュー】@東京フィルメックス
今年も開会式+オープニング上映へ行って参りました
会場に熱気があって、映画祭に来たなぁ…としみじみ嬉しくなります。
上映前にギドク監督のご登壇もあって、こんなチャーミングな方だったんだとビックリしました。
『嘆きのピエタ』しかギドク監督作品は観てないと思う…ので、なんとも言えないのですが、なぜか勝手に、グロさやどこか少し土臭いイメージを持っていたので、今回の作品を観て、これまたビックリしました。
朝鮮統一問題がテーマなので、大筋が非常に分かりやすかったです。
長きに渡るこの大きな問題の最先端に、個人がどんどん絡みとられていってしまう様は、まさに、“網”でした。
主人公の男ナムは、漁師をして生計を立てている。貧しくても、家族が身を寄せ合って暮らす北朝鮮での暮らし。愛のある生活に妻も娘の顔も明るい。
一方、資本主義の韓国は、物は溢れ豊かで人々はさぞ幸せだろうと男は考えるが、貧富の格差が激しく、その暗部が計り知れないことを知る。
同民族間で血を流した朝鮮戦争。その憎しみ、その哀しみを持ち続けている人々。
そして南北のどちらにも、家族や親戚と分断され、会えないまま辛い日々を送っている人々。
そういった双方どちらにも内在する問題を、映画は、ごく自然な物語運びで滑らかに展開していく。凄く心地よくて引き込まれました。
私は、韓国は、北朝鮮を思想面で言っても、経済面で言っても、もはや別の国だと思いたいし、思っている人が多いのではないか、と考えていたので、上映前の監督も仰っていたし、劇中でもそういう台詞に託されていたと思うけれど、“南北統一”という理念を、新鮮に感じました。もはやそれは、非現実的にも思えるし、ドイツのように統一されることなんてあるのかしら…とさえ思うのです。
でも、“南北統一”は劇中の会話で度々交わされます。ユートピアのような、そんなことが現実になるのかしら…と思う次の瞬間、劇中の世界にも巨大な黒い染みが拡がっていくようで、たちまち意気消沈してしまうのですが…。
いや、でも…それでも。。北朝鮮の恐怖政治が終焉を迎え、朝鮮戦争を直接知らず、世代が移り変わって意識が変わっていった時に、そんな日が来るのかもしれないなぁ…とも思いました。問題山積みなのだけども。。
それは、主人公を警護するお役目の青年に表れていて、彼の誠実さだけが救いでした。
また、これはストーリーとは関係ないのですが、主人公のナムを演じた俳優さんが、ちょっと格好良くて。
それは顔が、とかではなくて(←失礼…)、北朝鮮で暮らしている男性の役としては、髪が長髪だし…むむむ。
とか、筋肉のバランスが良過ぎてクールな肉体だったのも、肉体仕事でついた筋肉というよりも、トレーニングでついた洗練された筋肉の感じがして、ちょっと違和感に思っていたら、上映後のQ&Aで監督が、彼は今ヨーロッパで暮らしていて〜と仰っていたので、なんだか妙に納得したのでした…
監督のお人柄に少しだけ触れる機会というのは映画祭ならではですが、ギドク監督がなんだかもっのすごくニコニコ、ニコニコされていて、とってもチャーミングだったので、作風とのギャップにも驚きでしたけれど、お話しを聞いてから観たので、なんだか温かい気持ちになって、安心しながら観ました。
アクションシーン、格好良かったな.
@東京フィルメックス オープニング作品
【作品解説】
韓国 / 2016 / 112分 / 監督:キム・ギドク (KIM Ki-duk)
提供:キングレコード 配給:クレストインターナショナル
妻子と平穏な日々を送っていた北朝鮮の漁師・ナムは、網がエンジンに巻き込まれたトラブルにより、意に反して水上の韓国との国境を越えてしまう。韓国の警察に捉えられたナムは、スパイと疑われて拷問を受け、更には韓国への亡命を強要される。妻子の元にただ戻りたいだけのナムは自らの意思を貫き、ついに北朝鮮に戻ることになる。表面的には資本主義の誘惑に打ち勝った英雄として北朝鮮に迎えられたナムだったが、彼を待っていたのは更に過酷な運命だった……。キム・ギドク作品のトレードマークであった極端なバイオレンスは本作では封印され、体制に翻弄される一人の男の姿が重厚に描かれた傑作。ナムを演じたリュ・スンボムの熱演も見どころだ。
© 2016 KIM Ki-duk Film. All Rights Reserved.
(東京フィルメックス公式HPより引用)
【感想レビュー】@東京フィルメックス
今年も開会式+オープニング上映へ行って参りました
会場に熱気があって、映画祭に来たなぁ…としみじみ嬉しくなります。
上映前にギドク監督のご登壇もあって、こんなチャーミングな方だったんだとビックリしました。
『嘆きのピエタ』しかギドク監督作品は観てないと思う…ので、なんとも言えないのですが、なぜか勝手に、グロさやどこか少し土臭いイメージを持っていたので、今回の作品を観て、これまたビックリしました。
朝鮮統一問題がテーマなので、大筋が非常に分かりやすかったです。
長きに渡るこの大きな問題の最先端に、個人がどんどん絡みとられていってしまう様は、まさに、“網”でした。
主人公の男ナムは、漁師をして生計を立てている。貧しくても、家族が身を寄せ合って暮らす北朝鮮での暮らし。愛のある生活に妻も娘の顔も明るい。
一方、資本主義の韓国は、物は溢れ豊かで人々はさぞ幸せだろうと男は考えるが、貧富の格差が激しく、その暗部が計り知れないことを知る。
同民族間で血を流した朝鮮戦争。その憎しみ、その哀しみを持ち続けている人々。
そして南北のどちらにも、家族や親戚と分断され、会えないまま辛い日々を送っている人々。
そういった双方どちらにも内在する問題を、映画は、ごく自然な物語運びで滑らかに展開していく。凄く心地よくて引き込まれました。
私は、韓国は、北朝鮮を思想面で言っても、経済面で言っても、もはや別の国だと思いたいし、思っている人が多いのではないか、と考えていたので、上映前の監督も仰っていたし、劇中でもそういう台詞に託されていたと思うけれど、“南北統一”という理念を、新鮮に感じました。もはやそれは、非現実的にも思えるし、ドイツのように統一されることなんてあるのかしら…とさえ思うのです。
でも、“南北統一”は劇中の会話で度々交わされます。ユートピアのような、そんなことが現実になるのかしら…と思う次の瞬間、劇中の世界にも巨大な黒い染みが拡がっていくようで、たちまち意気消沈してしまうのですが…。
いや、でも…それでも。。北朝鮮の恐怖政治が終焉を迎え、朝鮮戦争を直接知らず、世代が移り変わって意識が変わっていった時に、そんな日が来るのかもしれないなぁ…とも思いました。問題山積みなのだけども。。
それは、主人公を警護するお役目の青年に表れていて、彼の誠実さだけが救いでした。
また、これはストーリーとは関係ないのですが、主人公のナムを演じた俳優さんが、ちょっと格好良くて。
それは顔が、とかではなくて(←失礼…)、北朝鮮で暮らしている男性の役としては、髪が長髪だし…むむむ。
とか、筋肉のバランスが良過ぎてクールな肉体だったのも、肉体仕事でついた筋肉というよりも、トレーニングでついた洗練された筋肉の感じがして、ちょっと違和感に思っていたら、上映後のQ&Aで監督が、彼は今ヨーロッパで暮らしていて〜と仰っていたので、なんだか妙に納得したのでした…
監督のお人柄に少しだけ触れる機会というのは映画祭ならではですが、ギドク監督がなんだかもっのすごくニコニコ、ニコニコされていて、とってもチャーミングだったので、作風とのギャップにも驚きでしたけれど、お話しを聞いてから観たので、なんだか温かい気持ちになって、安心しながら観ました。
アクションシーン、格好良かったな.