☆映画の旅の途中☆

色んな映画をどんどん観る旅

『カンダハール』(2001)

2016年12月27日 | 西洋/中東/アジア/他(1990年以降)
『カンダハール』(2001)

脚本:製作:編集:モフセン・マフマルバフ
音楽:モハメッド・レザダルヴィッシ
撮影:エブライム・ガフォリ
出演:ニルファー・パズィラ:ナファス、ハッサン・タンタイ
【作品概要】
主人公のナファスを演じたニルファー・パズィラは実際にアフガニスタンからの難民で、この作品は彼女の実体験にフィクションを交えて描かれている。アフガニスタンにおける、貧窮、女性差別、それらの中に生きる人々を描き出した作品。


【感想レビュー】
ドキュメンタリータッチの映画です。観る前に、『カンダハール』の撮影についてもかなり書かれている同監督の著書『アフガニスタンの仏像は破壊されたのではない 恥辱のあまり崩れ落ちたのだ』を読んでいたのが、理解の一助になりました。

とにかく強い映画です。メッセージも強いし、画も強い。画が強いから、またメッセージも強い。

脳裏にこびり付く幾つものカットがあります。

空からパラシュートにくくりつけられた義足がふわりと投下されていく様子。そしてそれを目撃するやいなや、地上にいる松葉杖をついた男達が一目散に走り出す様子は…。


それは、本当に一瞬、息を呑む映像です。

空撮で捉えられたアフガニスタンの山脈や渓谷。
壮大なBGMでも流せば、雄大な自然を讃える映像だと思わず勘違いしてしまいそうだ。

小さく、パラシュートが見える。徐々にカメラが近付く。すると、愕然とするのだ。

山脈や渓谷が近代化を阻む、厳しい土地。
そして、地雷が埋められてきた歴史。
地雷の被害は老若男女に及ぶはずなのに、その光景を見て走り出すのは、男達だけ。
その文化、その背景。

その、ふわりふわりと落ちていく義足つきのたくさんのパラシュートが一瞬にして物語る、有無を言わせぬ映像としての強さ。


前出の著書で、アフガニスタンの問題は、その強固な部族主義にある、とマフマルバフ監督は述べていて、『カンダハール』にも反映されている。

女性達が着用している頭からすっぽりと被るブルカは、彼女達の顔も、意志も、存在すらも、根こそぎ奪うような代物で、そんな、魂の半分も呼吸できないようなブルカが、渇いた砂漠に色とりどりに映える……。その映画的とでもいうべき美しさに、文字通り遣る瀬無くなる。


また、女性は直接、親戚以外の男性とは話してはいけなくて、どうしても話さなければならない時は、身内の男性を介して話すことになる!…ので、例えば、女性が病院で診てもらう時、医師が男性であれば、医師の話している意味が解っていても、身内の男性を介して話す、といったまどろっこしさ…!

もうシニカル過ぎて笑えてしまったりもするのだ。

…容赦のないマフマルバフ監督の視点。


『政治に1つ悪いことがあったら、その背景にある文化には10以上の問題があると思ってください』

今年の東京フィルメックス映画祭のQ&Aでマフマルバフ監督が話されていたことと繋がっていく。


政治的なメッセージと映画的な強さ、美しさの混在ぶりがヘビー級過ぎて、咀嚼に時間が掛かっております。


マフマルバフ監督の、『闇からの光芒 マフマルバフ、半生を語る』を今は読んでいます


そして現在のアフガニスタンを知りたいと思い、『知ってほしい アフガニスタン 戦禍はなぜ止まないか』シャード・カレッド著も購入しました。

年末だし、もう読むしかない…!!