☆映画の旅の途中☆

色んな映画をどんどん観る旅

『ピンクリボン』(2004)

2014年03月13日 | 邦画(1990年以降)
『ピンクリボン』(2004)

監督:藤井謙二郎
プロデューサー:浅井隆
出演者:黒沢清、高橋伴明、井筒和幸、女池充、池島ゆたか 、吉行由実、若松孝二、渡辺護、足立正生、田尻裕司

【作品概要】
いまも年間90本以上の新作が製作・公開されているピンク映画の歴史をつづるドキュメンタリー。
監督・藤井謙二郎は、かつての日本映画界の「縮図」と言われるピンク映画のプロデューサー、監督、俳優、配給、興業関係者たちにインタビューを試みる。冒頭、黒沢清監督がかつて高橋伴明監督の紹介を受け、デビュー作の「神田川淫乱戦争」を撮ったことを語る。若松孝二、渡辺護、井筒和幸監督らが語るピンク映画の歴史は、まさに現代日本映画史の裏側と言っても過言ではない(MovieWalkerより)。
【感想レビュー】
面白かったー!

高橋伴明監督や若松孝二監督がピンク映画の監督出身だと知った時から、社会派の映画を撮る監督たちが、なぜピンク映画出身だったのかという疑問をずっと持っていたのです。
さらに調べていくと、どうやら日本映画の監督にはピンク映画出身の監督が沢山いるとのこと。
黒澤清監督や井筒和幸監督も園子温監督も。
このドキュメンタリー映画は、その疑問に応えてくれるばかりか、驚きの事実のオンパレードでした!
例えば、次のような話し。
予算が少ないから撮影期間は3日ほど。また35ミリカメラで撮影するので、失敗が許されない緊張感の中で撮るのだそうだ。おのずと鍛えられ、スキルも上がる。すぐに監督デビューが出来る、とも。
また、構想から上映までおよそ1ヶ月半‼だから、一般映画よりもよっぽど時事を反映しやすいのだそうだ。

今も日本映画の3分の1を占めるピンク映画だが、なんだか影が薄い…。
法規制や社会の風潮も影響しているし、アダルトビデオの台頭も大打撃なのだそうだ。
そのアダルトビデオとの違いや実際の撮影現場、若手の監督のお話しも、初めて知る事ばかりで面白い

沢山の方のインタビューが出てきますが、みな一様に誇りを持ってものづくりをしている精神が表れていました。
ピンク映画に対するよく分からない事から生じる穿った見方が変わりました!


印象に残ったお言葉

『ピンク映画はゲリラだと思っている。メジャーになったらおしまい。』
若松孝二監督

『40年前も、20年前も、今も、若い人がある時、スクリーンで映画を観てしまうんですね。それは、ハリウッド映画であれ、アニメでも何でもいいんですけど。なんかこれは凄いものなんじゃないかと。何か一本のフィルムによる映画が作られていく現場に参加したい!…というところまで、人間の人生をこう、もっと真っ当な人生があったかもしれないのに変えていってしまう。
その原因は、ある時スクリーンで映画を観てしまったからだと思うんです。

その怖さ…と同時にまぁ恐ろしい力ですね。今や、他のメディアがこれだけ発達しているにも関わらず、40年前、いやひょっとするともっと前から、100年前から変わらず、その力があり続けているっていうのは、凄い事だと思います。
映画にそんな力があるっていう事を知っていながら、自分でまた映画を作っている、懲りずに作っている自分が怖いですし、映画ってこう何でこんなに怖いのっていう。って思うしかないですね。』
黒沢清監督


『少年H』(2012)

2014年03月13日 | 邦画(1990年以降)
『少年H』(2012)

監督:降旗康男
脚本:古沢良太
妹尾盛夫:水谷豊
妹尾敏子:伊藤蘭
妹尾肇:吉岡竜輝
妹尾好子:花田優里音
うどん屋の兄ちゃん:小栗旬
オトコ姉ちゃん:早乙女太一
田森教官:原田泰造
久門教官:佐々木蔵之介
吉村さん:國村隼
柴田さん:岸部一徳

【作品概要】
妹尾河童が自身の少年時代を描き、国民的ベストセラーとなった同名小説を、『鉄道員』など数々の名作を送り出す巨匠・降旗康男監督が映画化した家族ドラマ。激動の時代を必死に生きるとある家族の物語がつづられる。一家の両親役として、実際の夫婦である水谷豊と伊藤蘭が28年ぶりに共演を果たした(MovieWalkerより)。



【感想レビュー】
原作を読んでいないのですが、神戸の外国人居留地のキリスト教一家の、しかも当時少年だった視点から見る戦争というのは興味深い点が幾つもあった。
次々と日本を去っていく外国人達。洋服屋のお得意様を失っていく様子。ポーランドから決死の思いで脱出してきたユダヤ人たち。
徐々に日本が孤立していく。その度に、父が説明してあげるのが印象的だった。
また、敬虔な信者の母が、ちゃぶ台に並べる西洋食器で頂く料理の数々は新鮮だった。お味噌汁までスープみたいに!味噌汁はお椀で…父の指摘には思わず笑ってしまった。

戦前・戦中・戦後すぐの出来事を、2時間ほどの作品にしているので、エピソードを詰め込んでいる感は否めないが、それでも多感な少年時代に感じた数々の出来事が瑞々しく描かれていた。大人から子どもまで一緒に観られる映画です。


よくこれだけのエピソードを纏めたあげく、ユーモアまであって良かったなぁなどと偉そうに思い、珍しく脚本家まで気になったら、古沢良太さんだった!
『ALWAYS三丁目の夕日』、『鈴木先生』、『リーガル・ハイ』など、全部面白いし、好きな脚本家の方です。






『希望の国』(2012)

2014年03月11日 | 園子温監督☆映画
『希望の国』(2012)

監督:園子温
小野泰彦:夏八木勲
小野智恵子:大谷直子
小野洋一:村上淳
小野いずみ:神楽坂恵
鈴木ミツル:清水優
ヨーコ:梶原ひかり
志村(町役場職員):菅原大吉
加藤(町役場職員):山中崇
産婦人科医:河原崎建三
松崎:浜田晃
田中(警官):大鶴義丹
寺山(警官):松尾諭
島田(避難する住民):吉田祐健
橋本(避難する住民):並樹史朗
ガソリンスタンドの店員 米村亮太朗
水島(避難所の人):吹越満
谷川(避難所の人):伊勢谷友介
トークイベントのゲスト:田中壮太郎
TVの中の司会者:手塚とおる
三島(洋一の同僚):本城丸裕
荒井(洋一の同僚):深水元基
林(洋一の同僚):大森博史
ひろみ(妊婦):占部房子
検問所の警官:井上肇
TVの中の官僚:堀部圭亮
海辺の父親:田中哲司
鈴木めい子:筒井真理子
鈴木健:でんでん



【作品概要】
東日本大震災以降の日本の人々の暮らしを見つめた社会派エンタテインメント。原子力発電所近辺で暮らす2組の家族の姿を通し、改めて現在、日本が直面している危機について訴える(Movie Walkerより抜粋)

【感想レビュー】
震災から丸三年が経った。鎮魂の日。
ご冥福をお祈りいたします。


この映画は、先日やっと観たのだけど、DVDを購入してまた観ました。
どうしても、園監督のコメンタリーを聴きたかったのと、この作品の夏八木勲さんをどうしてもどうしても何回も観たかったから。コメンタリーは、これからまた観ますが、作品の感想を書きたいと思います。

全編に渡り、真摯な姿勢と鬼気迫るものを感じました。
国も県も市も村も、自分たちを助けてはくれない。留まる選択だけが強さではない、逃げる選択もまた強い勇気なのだと。どう生きていくかを決めるのは家族会議でだ、という強いメッセージ。
大切な人を守るのだという強い信念と大きな愛。この逆境を乗り越えていくエネルギーは、結局は個々の愛なのだ。

そして、夏八木勲さんに、ただただ圧倒されました。こういう人物が本当に居ると思わせる迫真の演技でした。夏八木さんでなくてはこの作品は成り立たないのではないかというほど、その存在感は常軌を逸するものがありました。
痴呆を患う妻を演じる大谷直子さんは、時に無邪気、時にはすべて解っているのではないか…というその狭間を行ったり来たりする難しい役どころ。
息子を演じる村上淳さんのあえて芝居がかった大きな演技。
そしてその妻を演じる神楽坂恵さんは、一番普通に居そうなキャラクターを演じている。しかしその“普通”が、どんどんエスカレートしていく描写は、過剰なようでいて、妙にリアルだ。実際に行動に移すかは別として、ああいう心理状態に近くなった人は沢山いるはずだから。
さらに主要人物だけでなく、近所の家族や市役所の担当など、一人一人のキャラクターが深く掘り下げられているので、それぞれの視点から捉えた震災が描き出されています。

園監督作品の、他の作品でも常々思っていたのですが、映画そのものが、まるで大編成の交響曲のように感じます。それぞれの楽器が時に雄弁に、時に支え合い、重厚なハーモニーを奏でているように感じるのです。
まるで劇中使用曲のマーラの第10番のように。


原発問題がタブー視され、発言も慎重になる中で、この問題に真正面から向き合い、表現者としての情熱とアイデンティティーを映画という形にした園監督に尊敬の念を禁じ得ない。

印象的なシーンがたくさんあります。好きなシーンもたくさんあります。

希望を感じるラストでした。




『箱入り息子の恋』(2013)

2014年03月11日 | 邦画(1990年以降)
『箱入り息子の恋』(2013)

監督:市井昌秀
天雫健太郎:星野源
今井奈穂子:夏帆
天雫寿男:平泉成
天雫フミ:森山良子
今井晃:大杉漣
今井玲子:黒木瞳


【作品概要】
彼女もいないまま30代半ばを迎えた主人公が、代理見合いをきっかけに知り合った女性との恋に暴走していく様を、彼らの家族の姿を交えて描く。

【感想レビュー】
ほのぼのとしていて、クスクス笑える映画でした
いや、本人達は一生懸命なのですが…。

夏帆さんの美しさが際立っていて、恋の始まり方も自然でしたし、星野源さんの冴えない男っぷりがリアルで面白かったです

バルコニー?ベランダのシーンはまるでロミオとジュリエットみたい

無様だってイイじゃないか!恋が成就するのだから!…なノリの爽やかな映画でした


『本日休診』(1952)

2014年03月10日 | 邦画(クラシック)
『本日休診』(1952)

監督:渋谷実
三雲八春:柳永二郎
三雲伍助:増田順二
湯川三千代:田村秋子
湯川春三:佐田啓二
津和野愁子:角梨枝子
加吉:鶴田浩二
お町:淡島千景
竹さん:中村伸郎
松木ポリス:十朱久雄
お京 :長岡輝子
勇作 :三國連太郎
船頭 :山路義人
豊子夫人:市川紅梅
瀧さん:岸惠子
兵隊服の男:多々良純



【作品概要】
製作は「麦秋」の山本武。井伏鱒二の原作から「わが恋は花の如く」の斎藤良輔が脚色し、「自由学校(1951 渋谷実)」の渋谷実が監督に当っている。
戦争で一人息子を失った三雲医院の八春先生は甥の伍助を院長に迎え、戦後再出発してから丸一年の記念日、伍助はこの日看護婦の瀧さんたちと温泉へ出かけて行き、三雲医院は「本日休診」の札を掲げたが、病院を訪れる者は後を絶たず…(MovieWalkerより)。

【感想レビュー】
面白かったです

豪華俳優陣であることもそうですが、何よりブラックユーモアな表現が随所にあり、また温かい人間愛にも溢れ、前に進むエネルギッシュなパワーがみなぎっている作品でした。

色んな場面が出てくるけれど、どこか舞台劇を観ているようにも感じたり、また鉄道住宅に入る前の鉄道と鉄道の間で身を縮めている時などは、古いヨーロッパ映画の趣きもあったりして、何ともお洒落です

三國連太郎さんの異空間にいるような演技に圧倒されました。
また、小津安二郎監督の作品に出ている俳優さんが何人もいましたが、特に佐田啓二さんは、こういう演技するんだぁぁぁっ!…とびっくりしました!
なんか…ひょいひょいって動いています
お顔が整い過ぎてるので、小津映画だと、余計にスキもない感じに見えますけど、本作ではとっても新鮮で生き生きしたキャラクターでした

電車住宅や船での生活など…、戦後数年のまだまだゴチャゴチャとした生活や背景。それでも、ユーモアがあって、隣人愛もあって、みんなで頑張っていこうという温かさに痺れました。
ラストの終わり方も、それを象徴するシーンだったと思います。