☆映画の旅の途中☆

色んな映画をどんどん観る旅

『私が結婚した男 The Man I Married(デジタル)』 (1940)

2014年04月13日 | 西洋/中東/アジア/他(クラシック)

『私が結婚した男 The Man I Married(デジタル)』(1940)

監督:アーヴィング・ピシェル
主演:ジョーン・ベネット、フランシス・レデラー、ロイド・ノーラン、オットー・クルーガー、フランク・ライヘル、アンナ・ステン

【作品概要】
ドイツ出身の夫・エリックとニューヨークで暮らす美術批評家のキャロルは、幼い息子を連れ大戦前夜のドイツを訪ねる。それをきっかけに、エリックが徐々にナチズムに傾倒していき…。当時のナチスのニュースリールを挿入する手法を駆使し、全体主義が国のみならず家庭や愛情を破壊する恐ろしさを描いた、知られざる傑作。

【感想レビュー】@theater
先日の『ナチスと映画Ⅱ』特集の2本目で観ました。
本当に怖い‼…
これは、1940年の作品なのですが、当時、ナチズムがどのようにして世間に浸透していったのかが描かれています。
演説に熱狂する群衆を映したプロパガンダのフィルムは、以前何かで観た事があるのですが、その時の率直な感想は、気持ち悪い‼…と同時に底冷えするような恐怖感でした。
今回も、華やかなニューヨークから来た夫婦がその群衆の中に居る画が印象的でした。
温かくユーモアのあったドイツ人の夫が、ナチズムにどんどん傾倒していく様子はどんなサスペンスよりも怖く、それでも流されずに思った事を言うアメリカ人妻にハラハラします。

間違っている事は分かっていても、もう誰も戦争突入を止められないだろう、行き着く所まで行かなければ…と言う夫の父の言葉が、時の空気を反映していました。

77分と短い作品ながら、これが当時作られて公開された事が凄いなぁと思いますし、今の日本や世界の空気
と比較してどうなのだろう、と身につまされる思いで観ました。




『愛の嵐 Il Portiere di Notte(35mm)』

2014年04月11日 | 西洋/中東/アジア/他(クラシック)
『愛の嵐 Il Portiere di Notte(35mm)』
1973年

監督:リリアーナ・カヴァーニ
主演:ダーク・ボガード、シャーロット・ランプリング、フィリップ・ルロワ、ガブリエレ・フェルゼッティ、イザ・ミランダ、アメディオ・アモディオ、マリノ・マーゼ
【作品概要】
1957年ウィーン。ホテルのナイトポーターとして働く元ナチス突撃隊将校のマクシミリアンは、高名な指揮者の妻・ルチアを見て驚愕する。過去の秘密を共有する二人は…。シャーロット・ランプリングが、ナチスの制服を着てディートリッヒをまねて歌うシーンはあまりにも有名。背徳的、退廃的、倒錯的と批判された本作であるが、エロティシズムと死との関係を追及した「悲痛で残酷で怖ろしいほどの傑作!」(ヴィスコンティ)。(シネマヴェーラHPより)

【感想レビュー】@theater
ようやく、是非行きたいと思っていた『ナチスと映画Ⅱ』特集に行けました!

その世界観にひたすら圧倒的され、気付いたら終わっていたという感じ。
記憶に残る数々のシーンがあります。

古い映画独特の始まりの音楽。
石畳みを歩く男。この始まり方、好き
です。
男と女が偶然に再会してしまうまでの状況描写や心理描写が、実に綿密に、そして緊張感をもって描かれています。
『魔笛』を鑑賞中の描写も印象的でした。魔法の笛とパパゲーノ!
フラッシュバックするように間に差し込まれる強制収容所内の映像、記憶。
それでもまだ、2人の過去は明らかにはならない。
それが一転。ひとたび再会してしまった2人のボディーランゲージはもう圧巻です。収容所での関係が徐々に明らかになっていきます。支配する者と支配される者。この支配従属関係における行為は、愛なのか…。求め合う2人。
彼女の立場でナチス親衛隊の将校を拒む事などできようか。それでも女は満更でもない様子。
確かに背徳的で退廃的な魅力があります。シャーロット・ランプリングの存在感とナチスの制服を着てディートリッヒをまねて歌うシーンが脳裏から離れません。どんな衣装を纏っても、どんな姿であっても、彼女の気高さにただただ心酔してしまうのでした。

戦後ウィーン。元ナチス親衛隊が社会においてある一定の力を持っていた様子も伝わってきます。この許されない愛の結末まで含めて、記憶に残る映画となりました!



『チスル』(2013)

2014年04月10日 | 西洋/中東/アジア/他(1990年以降)
『チスル』(2013)

監督:オ・ミョル
ヤン・ジョンウォン
イ・ギョンジュン
ソン・ミンチョル
【作品概要】
第二次世界大戦終結後、南朝鮮だけの単独政権樹立を意図する選挙を阻止しようとした済州島の民衆の鎮圧に伴う虐殺事件“済州島4・3事件”を基に、済州島出身のオ・ミョル監督が映画化。沈黙を強いられてきた生き証人の言葉にならぬ声を掬い上げ、島民が逃げ込んだ実際の洞窟で撮影を敢行、圧倒的な映像美で彼らの絶望と希望の刹那を描き出す。

【感想レビュー】@theater
うーん…。
モノクロの美しい映像も、引きで撮った山の尾根のシーンも素晴らしかった。
チスルとは、ジャガイモの意味なのだそうですが、伏線も効いていて、それが一つの象徴的なシーンに繋がっていくところも良かったです。

けれど…。一つ一つのシーンに無駄な時間が多く感じ、悶々としてしまいました…´д` ;。
登場人物達の顔は識別しにくいからなのか?
いや、でも敵味方も分からないまま大量の無差別殺人が繰り広げられた描写としては分かるし…。

登場人物達のキャラクターに感情移入がしにくいからなのか?
いや、でも私はそういう観方をあまりしなかったりするので、そこはそんなに影響していないような気もするし…。

…などと、色々考えていますが、合わなかったのかもしれません。。




『北朝鮮強制収容所に生まれて』(2012)

2014年04月09日 | 西洋/中東/アジア/他(1990年以降)
『北朝鮮強制収容所に生まれて』(2012)

監督:マルク・ヴィーゼ
シン・ドンヒョク
ヒュン・クワン
オウ・ヤンナム

【作品概要】
北朝鮮政治犯強制収容所で生まれ、脱北した男性の想像を絶する半生と、収容所の実態を本人へのインタビューで描くドキュメンタリー。監督は、テレビや映画のドキュメンタリーを手掛けるドイツ人監督マルク・ヴィーゼ。ジュネーブ人権映画祭最優秀映画賞、オスロ・ヨーロッパドキュメンタリー最優秀映画賞ほか受賞多数。(Movie Walkerより)

【感想レビュー】@theater
自分でも意外だったのだけど、観た直後、心がしんと静まりかえってしまいました。
観たらきっと、収容所で行われている理不尽な事への怒りや、やるせない感情が渦巻くと思っていたので、かえって戸惑いました。
何なのだろう…この静かな気持ちは…。妙にしんとしています。もちろん、彼から目がそらせませんでした。集中して観ました。

しかしそうして観ていくうちに、彼に“虚”を見た気がしました。


印象的だった事は幾つもあります。

強制収容所内の監獄で拷問を受けた時の事を聞かれた彼が、疲れた、明日話すからと話すのを止めた。

話し始めた彼は、拷問を受けた事自体が辛かったのではなく、シャワーを浴びる度に、鏡に映る傷だらけの自分の身体を見ると、怒りが湧き上がってくるのだと言う。

また、資本主義の韓国で、何でも手に入るし幸せなはずなのに、自殺者の増加によって、北朝鮮の収容所よりも亡くなる人の数は多い。収容所で暮らしていた時はもっと心が純粋だった、とも言う。

国境が開かれ、北朝鮮の人民が解放されたら、真っ先に収容所に行きたいとも言った。


彼の原風景は、収容所なのである。
そこが、彼の故郷なのである。

“虚”な心ほど、怖いものはない。
観終えた後のしんとした気持ちは、スクリーンを通してそれが私の心に映ったからかもしれない。
彼からそれを引き出すインタビューであり、彼と監督との距離だったのかもしれない。
人間が人間として存在出来る環境というものが、いかに尊いものなのか。
それを訴えるのは、彼の“虚”を捉えたドキュメンタリー映画だった。

『次郎長三国志 第八部 海道一の暴れん坊』(1954)

2014年04月07日 | 邦画(クラシック)
『次郎長三国志 第八部 海道一の暴れん坊』(1954)

監督:マキノ雅弘
清水次郎長:小堀明男
清水の大政:河津清三郎
桶屋の鬼吉:田崎潤
関東綱五郎:森健二
法印大五郎:田中春男
大野の鶴吉:緒方燐作
張子の虎三:広沢虎造
江尻の大熊:澤村國太郎
小松村七五郎:山本廉
お園:越路吹雪
森の石松:森繁久彌
追分三五郎:小泉博
身受山鎌太郎:志村喬
娘おみの:青山京子
夕顔:川合玉江

【作品概要】
出演者は前作と略々同じであるが、今回は「七人の侍」の志村喬、「風立ちぬ(1954)」の青山京子、「赤線基地」でデビューした川合玉江などが新しく出演する。

清水一家は次郎長女房お蝶と豚松の法事の日。百姓姿の身受山鎌太郎が受付に五両置いたのを石松は二十五両と本堂に張り出した。さて読経の声もたけなわ、死んだ豚松の母親や許婚お静が来て泣きわめく。鎌太郎の諌言までもなく次郎長は深く心打たれていた。法事を終えた次郎長は愛刀を讃岐の金比羅様へ納める事になり、選ばれた石松は一同心ずくしの八両二分を懐に旅の空へ出た。


【感想レビュー】
石松!大活躍の会

石松のキャラクターが愛らしくて愛らしくて
いつも一緒の三五郎の、色男を意識した台詞にもなんだかニンマリしてしまうし
志村喬さんの親分ぶりにも惚れ惚れとするし

でも、やっぱり森の石松を演じる森繁久彌さんに釘付けな第八部でした!!
いよいよ次回は最終回です!!