☆映画の旅の途中☆

色んな映画をどんどん観る旅

『私たち』(2015)@東京フィルメックス

2016年11月26日 | 西洋/中東/アジア/他(1990年以降)
『私たち』(仮題)(2015)

The World of Us / 韓国 / 2015 / 95分 / 監督:ユン・ガウン(YOON Ga-eun)
【作品解説】
ソンは、友だちを作りたくても上手く振る舞うことができず、学校でも仲間外れにされがちな10歳の少女。そんなソンは、夏休みに近くに越してきた同い年の少女、ジアと知り合う。お互いの家を訪ねるうち、友情を築いてゆく二人。だが、新学期が近づくにつれ、家庭環境の格差が二人の友情に影を落とす。多忙な父親、母親が働きに出ているソンは、母親に代わって弟の面倒を見なければならない。一方、一見幸せに見えるジアも、自分なりの問題を抱えていた……。子供たちの生き生きとした表情が鮮烈な印象を残すユン・ガウンの監督デビュー作。社会問題がさり気なく盛り込まれている点も興味深い。ベルリン映画祭ジェネレーション部門で上映。

© 2015 CJ E&M CORPORATION. And ATO Co., Ltd. ALL RIGHTS RESERVED
(フィルメックス公式HPより)

【感想レビュー】@東京フィルメックス
コンペティション部門の1本。
今日行われた閉会式で、スペシャル・メンションと観客賞を受賞されたようです

とにかく完成度の高さにびっくりしました

10歳時分、学校という場所にいた女子になら、まさにあるあるネタの連発です

子どもたち、特に主役の子の顔のクローズアップは素晴らしくて引き込まれました。周囲の彼女に対する不穏な言動を鏡のように映し出します。
学校と家とがほとんど彼女の世界のすべて。
視野の狭さを感じさせる描写にもなっていました。
そして、これだけ彼女を観ているわけなので、
思わず感情移入してしまいました。私はあまり映画に出てくるキャラクターに感情移入して観る方でないのですが、思わず

また、幼い弟の瑞々しさにも心が洗われるようでした。
弟の台詞が秀逸で、はっ…と一本取られてみたり…

ミサンガ。

ホウセンカの爪染め。

胡瓜の巻き物。

キムチチャーハン。

扇風機。

小さなエピソードやアイテムの重なりが、映画に奥行きをもたせ、豊かな世界を構築していきます。

少女時代、その渦中にいる時はもちろん大変なのだけど、ノスタルジーを感じさせる映画で、祝日の朝からなんだかとっても心に染み入りました





『The NET 網に囚われた男』(2016)@東京フィルメックス

2016年11月20日 | 西洋/中東/アジア/他(1990年以降)
『The NET 網に囚われた男』(2016)
@東京フィルメックス オープニング作品

【作品解説】
韓国 / 2016 / 112分 / 監督:キム・ギドク (KIM Ki-duk)
提供:キングレコード 配給:クレストインターナショナル

妻子と平穏な日々を送っていた北朝鮮の漁師・ナムは、網がエンジンに巻き込まれたトラブルにより、意に反して水上の韓国との国境を越えてしまう。韓国の警察に捉えられたナムは、スパイと疑われて拷問を受け、更には韓国への亡命を強要される。妻子の元にただ戻りたいだけのナムは自らの意思を貫き、ついに北朝鮮に戻ることになる。表面的には資本主義の誘惑に打ち勝った英雄として北朝鮮に迎えられたナムだったが、彼を待っていたのは更に過酷な運命だった……。キム・ギドク作品のトレードマークであった極端なバイオレンスは本作では封印され、体制に翻弄される一人の男の姿が重厚に描かれた傑作。ナムを演じたリュ・スンボムの熱演も見どころだ。
© 2016 KIM Ki-duk Film. All Rights Reserved.
(東京フィルメックス公式HPより引用)

【感想レビュー】@東京フィルメックス
今年も開会式+オープニング上映へ行って参りました
会場に熱気があって、映画祭に来たなぁ…としみじみ嬉しくなります。


上映前にギドク監督のご登壇もあって、こんなチャーミングな方だったんだとビックリしました。

『嘆きのピエタ』しかギドク監督作品は観てないと思う…ので、なんとも言えないのですが、なぜか勝手に、グロさやどこか少し土臭いイメージを持っていたので、今回の作品を観て、これまたビックリしました。

朝鮮統一問題がテーマなので、大筋が非常に分かりやすかったです。
長きに渡るこの大きな問題の最先端に、個人がどんどん絡みとられていってしまう様は、まさに、“網”でした。

主人公の男ナムは、漁師をして生計を立てている。貧しくても、家族が身を寄せ合って暮らす北朝鮮での暮らし。愛のある生活に妻も娘の顔も明るい。

一方、資本主義の韓国は、物は溢れ豊かで人々はさぞ幸せだろうと男は考えるが、貧富の格差が激しく、その暗部が計り知れないことを知る。

同民族間で血を流した朝鮮戦争。その憎しみ、その哀しみを持ち続けている人々。
そして南北のどちらにも、家族や親戚と分断され、会えないまま辛い日々を送っている人々。

そういった双方どちらにも内在する問題を、映画は、ごく自然な物語運びで滑らかに展開していく。凄く心地よくて引き込まれました。


私は、韓国は、北朝鮮を思想面で言っても、経済面で言っても、もはや別の国だと思いたいし、思っている人が多いのではないか、と考えていたので、上映前の監督も仰っていたし、劇中でもそういう台詞に託されていたと思うけれど、“南北統一”という理念を、新鮮に感じました。もはやそれは、非現実的にも思えるし、ドイツのように統一されることなんてあるのかしら…とさえ思うのです。

でも、“南北統一”は劇中の会話で度々交わされます。ユートピアのような、そんなことが現実になるのかしら…と思う次の瞬間、劇中の世界にも巨大な黒い染みが拡がっていくようで、たちまち意気消沈してしまうのですが…。

いや、でも…それでも。。北朝鮮の恐怖政治が終焉を迎え、朝鮮戦争を直接知らず、世代が移り変わって意識が変わっていった時に、そんな日が来るのかもしれないなぁ…とも思いました。問題山積みなのだけども。。

それは、主人公を警護するお役目の青年に表れていて、彼の誠実さだけが救いでした。


また、これはストーリーとは関係ないのですが、主人公のナムを演じた俳優さんが、ちょっと格好良くて
それは顔が、とかではなくて(←失礼…)、北朝鮮で暮らしている男性の役としては、髪が長髪だし…むむむ。
とか、筋肉のバランスが良過ぎてクールな肉体だったのも、肉体仕事でついた筋肉というよりも、トレーニングでついた洗練された筋肉の感じがして、ちょっと違和感に思っていたら、上映後のQ&Aで監督が、彼は今ヨーロッパで暮らしていて〜と仰っていたので、なんだか妙に納得したのでした…

監督のお人柄に少しだけ触れる機会というのは映画祭ならではですが、ギドク監督がなんだかもっのすごくニコニコ、ニコニコされていて、とってもチャーミングだったので、作風とのギャップにも驚きでしたけれど、お話しを聞いてから観たので、なんだか温かい気持ちになって、安心しながら観ました。

アクションシーン、格好良かったな.





『この世界の片隅に』(2016)

2016年11月16日 | 邦画(1990年以降)
『この世界の片隅に』(2016)

監督:片渕須直/原作:こうの史代
2016年/日本/配給:東京テアトル

【作品概要】
本作は、昭和19~20年の広島・呉を舞台に、戦時中、毎日眺めていたものがいつしか変わり果て、身近なものが失われてもなお生きていく、主人公・すずの日々を描くアニメーション。原作は、第13回文化庁メディア芸術祭優秀賞を受賞した、こうの史代の同名漫画。心に染みるこの原作を、映画『マイマイ新子と千年の魔法』(第14回文化庁メディア芸術祭 優秀賞受賞)の 監督・片渕須直がアニメ映画化に挑んでいる。
(ユーロスペースHPより抜粋)

©こうの史代・双葉社/「この世界の片隅に」製作委員会
【感想レビュー】@theater
優しいタッチの絵柄と押し迫る厳しい現実のギャップが苦しくて、気付いたらハラハラと涙が…。

けっこう周りでも静かに涙している方がおられたなぁ。

のんさんの声が主人公:すずのキャラクターに合っていて心地良く響きました。
すずは、おっとりしていて、天然で、周りにツッコまれっぱなし。そういう描写は、確かに現代的なのだけど、そういうキャラクターの主人公が、変化してしまう瞬間がある。すずは、現代に生きる私達と当時を繋ぐ役割りを担ったキャラクターでした。

戦争が始まって時が経っても、強く明るく過ごしていたすず。そんなすずが変わってしまう、それほどの大きな衝撃。。

呉の港に並ぶ軍艦の群れ。軍港の景色。優しいタッチながら物々しい。。

アニメならではの空襲の空の描写。

すずの幼い頃のファンタジーな思い出。



笑えたり泣けたり。

あっという間に観終わりました。

『火垂るの墓』と同様に戦争アニメの定番になっていく予感がします。


映画の隅々にぬくもりを感じました





『オリーブの林をぬけて』(1994)

2016年11月05日 | 西洋/中東/アジア/他(1990年以降)
『オリーブの林をぬけて』(1994)

監督・脚本: アッバス・キアロスタミ
撮影: ホセイン・ジャファリアン
出演: ホセイン・レザイ/タヘレ・ラダニアン/モハマッド=アリ・ケシャヴァーズ/ザリフェ・シヴァ

【作品概要】
「友だちのうちはどこ?」「そして人生はつづく」と続いた“ジグザグ道三部作”最終篇。「そして人生はつづく」の中に、大地震の翌日に式を挙げたという新婚夫婦の挿話があり、それがきっかけとなり生まれた作品。大地震に見舞われ、瓦礫と化したイラン北部の村。映画の撮影を手伝っていた地元の青年ホセインは、この夫役に抜擢される。ホセインは妻役の女性を本当に恋していて、一度は文盲だという理由でフラれた現実と役柄を混同して再度アタックするが……。

【感想レビュー】@theater
ブログにUPするのが遅くなりましたが、特集“キアロスタミ全仕事”で、最後に観た作品の感想。

“ジグザグ道三部作”の最終篇です。
『そして人生はつづく』の撮影時のアナザーストーリー的な感じです。

……ややこしいです


監督役は二人出てきて、それらを撮っているのがキアロスタミ監督ってことで合ってるのかな…

『そして人生はつづく』の監督役が出てくるシーンを撮影する監督役(この方もキアロスタミご自身でないと思う…風貌も違ったし…)。

大地震の前に映画に出てくれた少年を探しに行く『映画』で、大地震後に、その地で再び映画を撮る様子が『映画』になる。

どこからどこまでが真実で、どこからどこまでが脚色なのかさえよく分からず黙々と観る。

その複合的な視点は、この映画を画一的に捉えることを拒む。

その地に住む撮影に関わった方達の人生も、監督の人生も、粛々と続いていくようだった。


娘に熱烈に結婚を迫るホセインという青年が出てきて、あまりの粘着ぶりに日本だったらストーカーと言われそうだ…と半ば心配になりつつ…

同じようなくだりが延々と続く撮影シーン。
その合間に娘を延々と口説くホセイン。

この延々と続く我慢の時間を経て、映画は大きなカタルシスへ…!!!

ラストの抜け感ある画をスクリーンで観る醍醐味


あの瞬間、なんかすごい心の中で拍手👏していました

映画の始めと終わりで、こんなにも観ている側の気持ちが変化している点に、なんだか映画が時間芸術であることを改めて感じ入りました


“ジグザグ道三部作”コンプできて大満足でした