日本・フランス・アメリカ 3つの国をくらべてみたら

アメリカでの生活を中心に、6年半暮らしたフランスや母国日本との違いに触れながら、気の向くままに書いていきます。

ホームレスの生徒数424人

2019-11-15 23:39:00 | 生活
2018年度、私の住むサウスカロライナ州のエイケン郡には、424人のホームレスの生徒がいたそうだ。エイケン郡は人口約17万人。その中に幼稚園から高校まで約24,500人の生徒がいる。その中の424人なので、およそ1.7%がホームレスという事になる。これらの生徒をサポートする活動をしている人の情報によると、実際は定住する場所が無いが、それを隠して学校に通っている生徒もいるため、本当のホームレスの数はもっと多いだろうという事。つまり、各クラスに1人くらいはホームレスの生徒がいるという事なのだろう。日本にも、もちろんホームレスの人はたくさんいるのだが、こんな田舎にもたくさんの子供が家もなく生活していると思うと心が痛む。

では、ホームレスの生徒たちはどんな生活をしているかというと、必ずしも公園など野外で寝泊まりしているわけではない。カウチ(=ソファー)サーフィングといって、親戚や知り合いなどの家のソファーに寝かせてもらったり、車中泊をしたりする生徒もいるようだ。つまり、自分の家として毎日帰る場所が無い状態はホームレスということになる。アメリカにはカウチサーフィングをする人用のサイトもあって、家を提供する人とされる人が登録することができる。こうした援助方法もあるのだが、素性の知れない人を家に入れることができる人は、大したものだと思う。

アメリカにはスープキッチンという、低所得者やホームレスの人のために無料で食事を配っている場所もある。私の住む人口約30,000人のエイケン市にも2か所、スープキッチンの活動を行っている場所がある。機会があって何度かボランティアとして配膳などを手伝ったことがあるが、毎日お昼には60~100人の人が食事をしに来るそうだ。活動を行っているのは教会などのグループで、日替わりで違うグループの人がやってくる。提供される食料は、主に市内のスーパーやレストランなどの期限切れになったばかりの食品。ピザやスーパーのケーキなどはそのまま提供され、缶詰や野菜、肉などから作られた温かいスープなども添えられる。

このスープキッチンは、もともとは、20名くらいが座って食事ができる場所があって、来た人から順に食事をしては次の人に場所を譲るというシステムだった。しかし、数か月前に食事をしに来た人の間でけんかが起こり、今はテイクアウトしかできなくなってしまった。この施設にはホームレスのための宿泊施設もあるのだが、男女別の部屋と家族ルームもある。1回に連続して泊まれるのは1週間で、その後は6カ月間を空けないと宿泊することができない。アメリカ南部と言えど、冬には氷点下まで気温が下がることもあるこの場所でホームレスとして生きていくのは大変だろう。一刻も早くその状況を打破して仕事や住居を見つけるしかないのだが、一度こうした状況に陥った人にはなかなか難しいことなのかもしれない。

スープキッチンで配膳をしたときに驚いたことがあった。それは、食事をもらいに来ている人たちの多くがスマートフォンを片手に食事をしていたこと。このスープキッチンで食事をするために、低所得であったりホームレスであったりすることを証明する必要はない。だから、もしかしたら、単にただで食事ができるならと、ここに来ている人もいるのかもしれないが、食事の質を見る限り、お金があるならここには来ないだろう。アメリカの携帯料金は日本に匹敵するか、それ以上に高いこともあるので、一体この人たちがどうやって通信料を払っているのか謎だ。もしかしたら、無料のWiFiだけを利用しているのかもしれないが、スマートフォン本体は自分で調達しなければならない。自分の食事のお金を払うよりも、スマートフォンにお金を払うことを優先するということに衝撃を受けた。

確かに、こうした宿泊所や食事、あるいは日雇いの仕事などを探すには、スマートフォンを使ってインターネットにアクセスするのが一番手っ取り早く、情報の数も多いだろう。何年か前に、ヨーロッパにシリアからの難民が押し寄せたとき、非難ボートで海岸にたどり着いた多くの難民が一番最初に尋ねることが「スマートフォンはどこで充電できますか?」だったそう。これに関して、スマートフォンを持っている人は果たして難民なのかという議論があったそうだ。しかし、実際問題として、自分が何かの災害にあって数少ないものしか持ち出せないとして、スマートフォンは5本、または3本の指に入るくらいの優先順位があるのではないだろうか?

いずれにせよ、貧富の差の拡大や貧困はアメリカにとって大きな問題だ。同じ資本主義でも、日本とは比べ物にならないくらい大きな社会問題になっている。その違いがどこから来るのか私にはわからないが、大国アメリカの抱える闇は深いなぁ、と思う。


最新の画像もっと見る