「連立」はや不協和音、政策めぐり駆け引き

2009-09-10 | 政治
  「鳩山政権誕生」を1週間後に控え、民主、社民、国民新の3党は9日、連立政権樹立合意にこぎ着けたが、3党間では不協和音も生じている。(政治部 石川有希子)
 ◆「法案通すのは与党」◆
 9日夕、国会内の常任委員長室で行われた連立政権合意書の署名式。国民新党の亀井代表が合意書に署名すると、民主党の鳩山代表がすかさず、「亀井先生の字は芸術的だなあ」と持ち上げた。大声で笑う亀井氏に、社民党の福島党首も「絵はお描きになるんですか」と水を向け、盛り上がった。
 署名式終了後、鳩山氏は記者団に「国民の暮らしを正しい方向に導くための連立政権だ。合意は何より素晴らしい。新たな政権のスタートラインに立つことが出来た」と胸を張った。
 民主党は、社民、国民新両党との連立協議で、政策決定システムの内閣一元化の実現に固執した。
 実際、合意書には、民主党の主張通り、内閣に3党の党首級でつくる「基本政策閣僚委員会」を設置することが明記され、閣内での政策決定に道筋をつけることに成功した。
 与党の政策決定への影響力を排するのは、「鳩山首相」がリーダーシップを発揮しやすい環境をつくるためだ。民主党の次期幹事長には、強権的なイメージの強い小沢代表代行が就任する。政策決定から小沢氏を外し、「二重権力構造」となることを回避する狙いもあったと見られる。
 しかし、入閣が決まった亀井氏も、入閣が有力な福島氏も、民主党で最も頼りにしている人物は小沢氏だとされる。
 民主党の岡田幹事長は6日夜、テレビ番組に出演後、福島氏と会談した。福島氏が、外交・安全保障政策で様々な注文を付けると、岡田氏は「対案も出さずに原則論ばかり言っても、仕方がないでしょ」とたんかを切り、席を立った。
 困惑した福島氏は小沢氏に電話で相談。小沢氏は翌7日、岡田氏に福島氏から電話があったことを伝えた。
 小沢氏周辺からは、「どんなに与党の力が政府に及ばない仕組みを作っても、法案を通すのは与党だ。国会対策を仕切る小沢氏次第では、政府が立ち往生することもある」と余裕のコメントが漏れる。
 福島氏らが小沢氏を頼るからには、鳩山氏らも政策面で小沢氏の意向を無視するわけにはいかないとの見方は強い。
 ◆「民主は甘く見過ぎ」◆
 連立協議を通じ、各党は不満もうっ積させた。
 社民、国民新両党には、民主党が傲慢(ごうまん)だと映る。
 8日夜、国会内で行われた社民党の重野幹事長、岡田、亀井両氏の会談。亀井氏が「入閣するなら、無任所大臣がいい。党務もこなし、大臣ポストもこなすのは難しいから」と謙遜(けんそん)して言うと、岡田氏は「それなら軽い大臣でいいじゃないですか」と真顔で応じたという。
 これを聞いた国民新党内では、「民主党は我々を甘く見過ぎている。いつ離脱してもいい」(中堅)と反発の声が上がっている。
 一方、民主党側でも「少数政党に振り回された」との思いが強まっている。
 民主党が連立を組むのは、単独過半数に届かない参院で多数を確保し、安定した政権運営を目指すためだが、「来年の参院選で単独過半数を取ったら、社民党とは関係をぶった切ってやる」(中堅議員)との声も出ている。社民党が外交・安全保障政策などで主張を曲げようとしなかったからだ。
 ある民主党議員は9日、「街頭演説をしていたら、支持者から『私たちは民主党に投票したんであって、社民党に入れたわけではない。なぜ社民党のわがままを許すのか』と怒られた。やっていられない」と語った。
 ◆「沖縄問題を何とか」◆
 連立協議は、独自政策で存在感を誇示しようとした社民、国民新両党に対し、政権前夜を迎えて「現実路線化」を強める民主党との駆け引きでもあった。
 社民党は、外交・安保政策で、沖縄県の負担軽減にこだわった。同党の重野幹事長は8日夜の岡田、亀井両氏との2時間に及ぶ会談で、連立政権の合意書に、米海兵隊普天間飛行場の国外移設と日米地位協定の改定提起を明記するよう強く求めた。岡田氏は「鳩山さんは首相就任後、訪米するんだ」と言って譲らなかった。9月下旬に予定される鳩山氏とオバマ米大統領との首脳会談を控え、「日米関係を損なうような合意をするわけにはいかない」(岡田氏周辺)との判断からだ。
 それでも福島氏は粘った。8日夜、鳩山、岡田両氏に電話し、「沖縄問題を何とかしてほしい」と訴えた。
 結局、合意書では「日米地位協定の改定を提起し、米軍再編や在日米軍基地のあり方についても見直しの方向で臨む」との文言が最終段階で盛り込まれ、社民党の要求が通った。
 ただ、鳩山氏は9日夜、「日米関係に悪影響を与えるのではないか」との記者団の質問に、「(合意書の文言は民主党の)マニフェスト(政権公約)でもともとうたっている。別に支障はない」と余裕の表情を浮かべた。福島氏も9日、周辺に「民主党のマニフェストそのままだけど、(社民)党内も納得してくれたからね」と満足げに語った。
 一方、国民新党は、郵政民営化見直しのための法案を今秋の臨時国会で成立させる方針を明記するよう求めた。合意書では、見直し方針は明記されたが、法律の制定時期は盛り込まれず、「速やかに成立」などの文言にとどまった。(2009年9月10日07時54分  読売新聞)

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