極刑判断のひとつに 2人殺害で死刑「永山基準」の妥当性は 2018.7.5

2018-07-05 | 死刑/重刑/生命犯

日本の殺意 
極刑判断のひとつに 2人殺害で死刑「永山基準」の妥当性は
  2018年7月5日
 果たしてどんな言葉を残すのか? 麻原彰晃(本名・松本智津夫)らオウム真理教(現アレフ)死刑囚の刑執行が刻一刻と迫っている。すでに教団の死刑囚13人のうち、7人は全国の拘置所に移送済み。6人が残る東京拘置所も含め、専用施設で絞首刑になる。精神を壊しているとされる麻原死刑囚だが、犯した罪を死によって償うのだ。
  同じく殺人で死刑判決を受けた西川正勝、住田紘一・元死刑囚は、昨年7月に刑が執行された。両人とも元殺人犯だが、違いは殺した人数だ。西川元死刑囚は4人、住田元死刑囚は1人だった。1人殺害の住田元死刑囚は、これまでなら無期懲役も考えられたが、同僚女性を強姦して殺害した上、遺体をバラバラに切断。「殺人は是認される」といった供述も裁判員裁判の裁判員たちの心証を悪くした。
 「死刑判断は、1983年の最高裁判断がひとつの基準になっています。俗に言う“永山基準”です。永山則夫元死刑囚は昭和40年代に4人を殺害。1審は死刑が言い渡されましたが、2審東京高裁は被告の犯行当時の年齢(19歳)や幼少期の虐待などの事情を鑑みて、無期懲役にしました。ところが、最高裁は『その罪責が誠に重大であって、罪刑の均衡の見地からも一般予防の見地からも極刑がやむを得ない』と審理を差し戻したのです」(「アトム市川船橋法律事務所」高橋裕樹代表弁護士) 
 その際に基準として示したのが、①犯罪の性質②動機③犯行態様(殺害方法の執拗性、残虐性)④結果の重大さ(特に殺害者数)⑤遺族の被害感情⑥社会的影響⑦犯人の年齢⑧前科⑨犯行後の情状の9つ。
 「これ以降、一般的には複数人を殺害すると死刑判決が下るものだと解釈されています。司法研修所のリポートでも、3人でほぼ死刑、2人だとその可能性が高く、1人ならケース・バイ・ケースと報告されています」(高橋弁護士)
  死刑の次に重い無期懲役も、平均31年ほどで仮出所できる。その後に再犯することも多く、有名なところでは小田原一家5人殺害事件の犯人が再び殺人未遂を犯し、仮釈放を取り消された例があった。
  一方、海外の死刑事情はどうなっているのか。
  アムネスティ・インターナショナルによると、2017年末で142カ国が法律上または事実上、死刑を廃止。うちEUなど106カ国では、すべての犯罪において死刑を廃止している。
 アメリカは州によって違い、ハワイ州、ニューヨーク州など20州が廃止、カリフォルニア州、コロラド州など30州に死刑がある。2012年にコロラド州の銃乱射で12人を殺害したジェームズ・ホームズは、陪審員1人が死刑に反対したため、終身刑12回と禁錮3318年という、日本ではよく分からない判決が出ている。
 「麻原死刑囚の刑執行が近いとされます。彼の拘禁反応が詐病であれば別ですが、執行は本人が執行を理解していなくてはなりません」(高橋弁護士)
  麻原死刑囚の罪状は、17事件で殺人26人と逮捕監禁致死1人。機械的にみて、死刑は免れない。執行当日、彼は正気なのか……。

 ◎上記事は[日刊ゲンダイ]からの転載・引用です
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〈来栖の独白〉
 「日刊ゲンダイ」というペーパー、過去には熱心に読んだりもしたが、現在は殆ど読まない。
 永山基準は、過去には一定の物差しになっていたが、被害者遺族の獅子奮迅の働きにより近年は、1名殺害でも死刑判決、ある。
 メディアは、オウム死刑囚の刑執行を6月中と読んでいたようだが、それは無かった。分散したとはいえ、13人もの死刑囚。法務省矯正局の頭を悩ませるところだ。
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永山則夫事件 判決文抜粋(所謂「永山基準」) 
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「凶悪犯罪」とは何か(1~4) 【2】 光市事件最高裁判決の踏み出したもの

(抜粋)
安田 僕も全く同じ考えを持っています。光市の最高裁判決は、永山判決を踏襲したと述べていますが、内容は、全く違うんですね。永山判決には、死刑に対する基本的な考え方が書き込んであるわけです。死刑は、原則として避けるべきであって、考えられるあらゆる要素を斟酌しても死刑の選択しかない場合だけ許されるんだという理念がそこに書いてあるわけです。それは、永山第一次控訴審の船田判決が打ち出した理念、つまり、如何なる裁判所にあっても死刑を選択するであろう場合にのみ死刑の適用は許されるという理念を超える判決を書きたかったんだろうと思うんです。実際は超えていないと私は思っていますけどね。でも、そういう意気込みを見て取ることができるんです。ところが今回の最高裁判決を見てくると、とにかく死刑だ、これを無期にするためには、それなりの理由がなければならないと。永山判決と論理が逆転しているんですね。それを見てくると、村上さんがおっしゃった通りで、今後の裁判員に対しての指針を示した。まず、2人殺害した場合にはこれは死刑だよ、これをあなた方が無期にするんだったらそれなりの正当性、合理性がなければならないよ、しかもそれは特別な合理性がなければならない、ということを打ち出したんだと思います。具体的には、この考え方を下級審の裁判官が裁判員に対し説諭するんでしょうし、無期が妥当だとする裁判員は、どうして無期であるのかについてその理由を説明しなければならない羽目に陥ることになると思います。
 ですから今回の最高裁判決は、すごく政策的な判決だったと思います。世論の反発を受ければ裁判員制度への協力が得られなくなる。だから、世論に迎合して死刑判決を出す。他方で、死刑の適用の可否を裁判員の自由な判断に任せるとなると、裁判員が死刑の適用を躊躇する方向に流されかねない。それで、これに歯止めをかける論理が必要である。そのために、永山判決を逆転させて、死刑を無期にするためには、それ相応の特別の特別の理由が必要であるという基準を打ち出したんだと思います。このように、死刑の適用の是非を、こういう政策的な問題にしてしまうこと自体、最高裁そのものが質的に堕落してしまったというか、機能不全現象を起こしているんですね。ですから第三小法廷の裁判官たちは、被告人を死刑か無期か翻弄することについて、おそらく、何らの精神的な痛痒さえ感じることなく、もっぱら、政治的な必要性、思惑と言っていいのでしょうが、そのようなことから無期を死刑にひっくり返したんだと思います。悪口ばっかりになってしまうんですけど。

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正義のかたち:裁判官の告白/1 永山事件・死刑判決 2008-04-13 
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オウム死刑囚移送(2018/3/14~15) 法務省 秘密保持図る
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「死刑執行、教祖(麻原彰晃死刑囚)から」という声もあるが---【63年法務省矯正局長通達】に見る行刑の苦難


4 コメント

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死刑!!! (あやか)
2018-07-05 20:28:58
私は、死刑の判決と執行は、慎重にも慎重でなければならないという立場です。
しかし、『オウム真理教』の殺人犯については、速やかに死刑にすべきだと思います。!!
特に来年になりますと『元号』が替わります。
『平成時代』に起こったことは、『平成時代』のうちに、きれいにすべきでしょう。

★しかし、それにしても『永山則夫さん』は、素晴らしい『基準』を残してくださいました。
『永山基準』。。。。。。これは、永山さんの遺産ですねっ!
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あやか様 コメント ありがとうございます。 (ゆうこ)
2018-07-05 21:03:37
>慎重にも慎重でなければならないという立場
>『オウム真理教』の殺人犯については、速やかに死刑にすべき
 上記2つは、相互に矛盾ですね。慎重にという立場なら、オウム(麻原=松本智津夫)死刑囚こそ慎重にすべきでしょう。
>『平成時代』に起こったことは、『平成時代』のうちに、きれいにすべきでしょう。
 「きれいに」との意味、わかりません。また、大方のメディアも、『平成時代』に起こったことは『平成時代』のうちに、と云います。これも、さっぱり分かりません。
 昔、GHQがジミーの誕生日に東條以下戦犯を処刑したことの方が、理路整然としています。
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ゆうこ様のご見解拝読しました。。。。。。ところで、。。。。。。 (あやか)
2018-07-06 09:34:00
オウム真理教の麻原教主、、ついに、死刑執行されました。!!!!!!!!!
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あやか様 コメントありがとうございます。 (ゆうこ)
2018-07-06 12:01:16
 オウム真理教事件(死刑囚)については、弊ブログでもカテゴリを設けていますし、気になる事案です。先頃、死刑囚を分散・移送しましたし。ただ、同一事件の場合、同日執行が基本ですが、13名もの死刑囚は未聞のことであり、当局の苦慮は計り知れないと考えました。
 最終の高橋克也被告が確定(上告棄却2018/1/19)してからは当局・職員の精神的肉体的重圧は限界に達していたのでは・・・。
 私は、「死刑執行は慎重に」とか「死刑廃止」などとは考えません。
 死刑について戸惑うのは、拘置所職員の辛さを思う故です。その手で白昼、人を殺めねばならぬ辛さが、私の胸を締め付けます。また、朝、房へ行き、予感(不安)におののく死刑囚を房から連れ出す、刑務官の心中を思うのです。その胸中を私は直接、刑務官から吐露されたことがあります。

 日本人は、きれい好きですね。代替わりとなれば、清掃ですか。イエスの言葉を思い出します。
*マタイによる福音書23章27節
 偽善な律法学者、パリサイ人たちよ。あなたがたは、わざわいである。あなたがたは白く塗った墓に似ている。外側は美しく見えるが、内側は死人の骨や、あらゆる不潔なものでいっぱいである。
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