韓国海軍の哨戒艦沈没事件、北朝鮮の魚雷攻撃が原因 問題は後ろ盾の中国の出方だ

2010-05-21 | 政治〈領土/防衛/安全保障/憲法/歴史認識〉

余録:「原因は北朝鮮製魚雷」断定
毎日新聞 2010年5月21日
 「禁じられたおもちゃの魅力」を示す話がある。米国の心理学者が子供に対して行った実験で、それで遊ぶのを厳しく禁じたおもちゃほど子供の目に魅力的に映るようになる結果が出た。禁止の厳しさは遊びの魅力を増すものらしい▲そんな子供の心理を連想させる過去の北朝鮮の対外行動である。国際社会の非難をよそにミサイルや核を見せびらかし、テロや外国人拉致といった非道に手を染める。おぞましいのはそれらを通しこの国が人の生命をまるでおもちゃのようにもてあそんできたことだ▲だから今度も「やっぱり」の声が出て不思議でない。韓国の調査団は哨戒艦「天安(チョンアン)」の爆沈原因を「北朝鮮製魚雷によるもの」と断定した。それは「北の小型潜水艦艇から発射された以外には説明がつかない」というのだ▲この爆沈では死者・行方不明者46人が出た。韓国政府は対北朝鮮制裁強化を国連安全保障理事会に提起する構えで、日米両政府もこの問題での韓国支持を表明した。一方で北朝鮮は調査を「韓国の捏造(ねつぞう)」だと非難し、「制裁なら戦争などで応じる」といつもの調子だ▲だが昨年のデノミ失敗による経済混乱で国内の不満が高まる北朝鮮だ。先日の金正日(キム・ジョンイル)総書記訪中では期待した中国の援助獲得もうまくいかなかったという。加えて総書記の健康や後継問題もからんだ状況での対外緊張が何をもたらすかは今まで通りとは限らない▲「禁じられた遊び」による対外危機を瀬戸際外交と国内引き締めに利用してきた北朝鮮の手口ももういいかげん有効期限切れである。国際社会は連携して北の指導部にそれを理解させなければならない。
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中日春秋
2010年5月21日
 「やっぱり」と思った人が多かっただろう。韓国哨戒艦の沈没原因を調べていた調査団は、北朝鮮製の魚雷を受けたためと結論づけた▼見つかった部品の一部には、以前に韓国が入手していた北朝鮮製魚雷の表記と一致するハングル表記があるなど、かなりの“決定的証拠”。だが、それに対する北朝鮮の反応もまた「やっぱり」だ。やれ、捏造(ねつぞう)だ、やれ、全面戦争だといつも通り猛々(たけだけ)しい▼事実なら愚挙というほかない。それは、国民が日々の暮らしにもあえいでいるのに、軍にばかり金を注ぎ込むような指導者の姿勢に発していよう。むだな所に金をかけることを笑う韓国の諺(ことわざ)、<犬の骨に銀めっき>こそふさわしい▼自分がしたことへのしっぺ返しはもっと手ひどくなるという意味の<行くこん棒に来る砧(きぬた)棒>という諺も、韓国にはあるという。軍事報復などは論外だが、北朝鮮が国際社会での一層の孤立というしっぺ返しを受けるべきは当然である▼ただ、問題は後ろ盾の中国の出方だ。北朝鮮を外交カードのように考えている節もあり、常々、無茶なかばい立てが目立つ。反省を促すべき包囲網にいつも大きな穴をあけてしまう▼五輪をやり万博をやり、今、「普通の国」を懸命にアピール中なのではなかったか。ならば、国際社会に「やっぱり」とため息をつかせるような対応は、もうそろそろよしにしてほしい。
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編集手帳
5月21日 読売新聞
 室町時代の書物『尺素往(せきそおう)来(らい)』に、当時のならず者を列挙した一節がある。いわく〈山賊。海賊。勾引。辻斬(つじぎり)。追落…〉◆勾引(ひとかどい)は「だまして、あるいは暴力で人を連れ去ること」、追落(おいおとし)は「往来の人を脅して追いかけ、その人が落とした財布を奪うこと」をいう。前者は拉致そのものであり、後者は、核で脅しをかけて近隣諸国から金品を引き出す手口に似ている◆犯罪のカタログのような国の、今度は「辻斬」である。46人が死亡した韓国海軍の哨戒艦沈没事件で、韓国の調査団は北朝鮮の魚雷攻撃が原因と断定した◆韓国政府は国連安全保障理事会で制裁を求めるという。憤る韓国世論が北朝鮮の挑発に乗せられないようにするためにも、各国協調の仕置きが欠かせない◆時代劇にはときに、辻斬りの下手人が権門に連なる身分であるために裁きの手が及ばない、という筋立てがある。北朝鮮の後ろにも、陰に陽にかばってくれる国際政治の顔役が兄貴分として控えている。中国をいかにして包囲網に引き入れるか。鳩山政権がみずから任じる“親中”の真贋(しんがん)が問われることにもなる。


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