財政赤字の限度額・医療保険制度  “オバマびいき”米メディアの裏事情 【世界を斬る】日高義樹

2013-10-04 | 国際

“オバマびいき”米メディアの裏事情 イラン大統領の屈辱的対応に「大きな進歩」
 zakzak2013.10.03 連載:世界を斬る 日高義樹
 米国の首都ワシントンは混乱のまっただ中にある。17年ぶりに政府機関の閉鎖という事態になっただけでなく、この先のメドがまったくたたないのだ。16兆7000億ドル(1644兆円)の財政赤字の限度額を増やす問題や、新しい医療保険制度の実施をめぐる問題でホワイトハウスと共和党の話し合いが膠着状態のままなのである。
 ワシントンの政治の混乱は、明らかに米経済の回復の足をひっぱっている。連邦準備制度理事会のバーナンキ議長は、「米政府の財政問題が景気の回復を阻害しているため、いつ金融緩和をやめていいか分からない」と述べている。
 そうした状況で、オバマ大統領は、2年前に同じ騒動が起きたときに比べると、まるで人ごとのような態度をとっている。オバマ氏は、米マスコミが味方についているのを知っているからだ。
 『ニューヨーク・タイムズ』など米リベラル派のマスコミは、もともと“オバマびいき”だが、最近は、ひいきの度がひどくなっている。政府機関の閉鎖や財政赤字の限度額をめぐる問題でも共和党だけを非難し、米史上最大の赤字を作り出したオバマ氏を批判する気配が見られない。
 9月28日のCNN特集番組では、司会者が「共和党の議員らは、なぜ、子供みたいに騒ぎ立てているのでしょうか」と、一方的に共和党を切り捨てた。
 シリア攻撃をめぐるオバマ氏の無様な行動についても、米マスコミは何ら批判していない。議会や世論の反対に押されて踏み出せず、最後は宿敵ロシアにまるめ込まれたことも、一部の保守派ジャーナリストを除いて誰も批判しようとしない。
 ニューヨークの国連総会で、オバマ氏はイランのロウハニ大統領から屈辱的な応対を受けたが、米マスコミは「大きな進歩」と持ち上げた。実際は、6月に親書を送って申し入れていた首脳会談を断られただけでなく、握手すら拒否された。
 イランの国営放送は「イラン指導者の尊い手が、血ぬられた米指導者の手を握るなどもってのほか」と伝えた。オバマ氏は、未練がましくニューヨークを出発する直前のロウハニ大統領に電話をかけ、15分ほど話をした。通訳を介してだから、実際は半分の7分半話しただけだ。
 米マスコミの“オバマびいき”について、知人の政治専門家がこう言っている。
 「ホワイトハウスは、米国のジャーナリストにとって望ましい再就職先なのだ」
 オバマ政権には20人近いジャーナリストが就職している。ジェイ・カーニー報道官も『タイム』の腕利きの編集者だった。こうした事情とマスコミの“オバマびいき”がどうつながっているのかは想像の域を出ないが、尖閣諸島を中国が武力攻撃した場合、オバマ政権の対応に、米マスコミが強い影響を与えることを予測しておく必要がある。
 <筆者プロフィール>日高義樹(ひだか・よしき)
 1935年、名古屋市生まれ。東京大学英文科卒。59年NHKに入局し、ワシントン支局長、理事待遇アメリカ総局長を歴任。退職後、ハーバード大学客員教授・同大諮問委員を経て、現在はハドソン研究所首席研究員、全米商工会議所会長顧問。
 *上記事の著作権は[zakzak]に帰属します *リンクは来栖
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米 議会対立で政府機関の一部で閉鎖続く / オバマ政権が推進する医療保険制度改革 2013-10-02
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『帝国の終焉 「スーパーパワー」でなくなった同盟国・アメリカ』日高義樹著 2012/2/13第1刷発行 2012-10-02 
 (抜粋)
p192 第5章 オバマはアメリカをイギリスにする
p200~ 第2部 アメリカは財政赤字で分裂する
 オバマ大統領は福祉費を減らそうとは考えてはいない。金持ち階級に対する増税を主張し、階級闘争を煽っていると非難されているが、保守派がつくっているティーパーティーはどんな形にせよ増税には反対で、赤字を減らすためには福祉費を切れ、と要求している。アメリカはこの2つのグループの対立がやむ様子はなく、ひどくなるばかりである。
 アメリカが国家として存在していくためには、歯止めのきかなくなった財政赤字の増加を食い止めるための方法をどうしても見つけ出す必要がある。まず考えられるのは、福祉費や社会保障費の増大を食い止め、軍事費をこれ以上増やさないと同時に、何はともあれ、国家の収入を増やすことである。
p201~
 オバマ大統領が増税とは言わず「国家の収入を増やす」と言っているのは、オバマ大統領の得意とするレトリックで、意味するところは増税である。
 アメリカでは50%の人が税金を全く払っていない。しかも、その税金のほとんどを20%、つまり10人に2人が払っている。富裕層に対するオバマ大統領の増税政策に対して共和党が反対しているのは、これ以上金持ちに増税をすれば、その差がもっと大きくなると腹を立てているからだ。
 金持ちに対する増税とは、金持ちからお金を取り上げて、働かない人にお金を与えることを意味している。アメリカに移民してくる人人々は、そういったアメリカの仕組みの恩恵にあずかろうとしてやってくる。
 ほとんどがリベラルなアメリカのマスコミは、ほとんどが共和党を批判し、オバマ大統領を支持している。
 「国民の多くは、豊かな人に増税をしろというオバマ大統領を支持している。社会保障費を減らせという共和党に批判的だ」
 アメリカの新聞は世論調査を使って、こう主張している。だが、世論調査の結果がオバマ大統領支持になるのは当然といえる。
 つまり45%の人はお金をもらうことに賛成しているが、ほとんどが税金を払っていない人々である。こういったアメリカのマスコミの報道は、アメリカでの民主主義に大きな歪みがあることを示している。
 「お金が欲しいという貧しい人々は、お金をタダでくれる政治家を支持する。アメリカの国がどうなろうとも、楽な暮らしができればいいと思っている」
 『ウィークリー・スタンダード』のフレッド・バーンズ編集長はこう指摘しているが、オバマ大統領が社会主義的な福祉政策を推し進めた結果、アメリカでは、働かないで国からもらうお金で食べる人が増え続けている。そういった人々が、タダで食べさせてくれる政治家に投票するのは当然である。民主主義では、多数が事を決める。したがって大衆の欲するように政治が行われる。民主主義、すなわち衆愚政治といわれるゆえんである。
p202~
 タダで食べさせてくれる政治家に投票する人々は、国家の将来や、産業問題、安全保障などについては考えない。ここから「民主主義は国家のためにならない」として民主主義を否定する、中国共産党の思考様式が生まれてくる。そして先進諸国は、民主主義のもたらす衆愚政治を避けることができるか、という大きな疑問に直面している。
 ヨーロッパはいま重大な経済危機に瀕しているが、ヨーロッパは、アメリカよりも手厚い福祉政策をとり、国民を完全に甘やかしてしまった。
p203~
 ギリシャでは、定年退職したあとも給料とほとんど同じ額、つまり100%の年金をもらえるシステムや医療費を全く払わずに済むシステムが確立している。したがって、この特権が奪われそうになれば、国民は暴動を起こし、首相を追い出してしまう。
p206~
  もともとアメリカはキリスト教の国である。だが自由、平等、民主を国是にする国でもある。したがってキリスト教に対立的な回教も、平等の考え方から受け入れている。だがそれにしても、回教徒を軍人に採用して、中東で戦わせたのは、思慮に欠けるやり方だった。第2次世界大戦でアメリカ政府は、日系アメリカ人兵士を太平洋ではなく、ヨーロッパに送ってドイツと戦わせた。
p207~
  日本にも、アメリカ的な自由、平等といった考え方に共感する人は大勢いる。だがその共感が世界国家主義につながっているケースが多い。国境がなくなり世界が一つになれば、人間はもっと幸福になるという考え方である。だがすでに述べたように、人類のDNAが突然変異を起こさないかぎり、世界国家が実現することはない。
  人と人との対立は人間の自然のあり方なのである。人は己の利益を守ろうとして対立する。思想や宗教で対立する。ハッサム中佐は、アメリカという国に、同じ回教徒である人々に銃を向けろと命令されたことに反発し、悩んだ末に回教徒ではない人々に銃を向け殺傷した。
  アメリカだけではなく、世界のあらゆる場所で人種や宗教からくる対立が起きている。つまりアメリカだけの問題ではない。人間そのものの問題なのである。簡単に言ってしまえば、理念や考え方、宗教が異なる人々が、一緒の行動をとることは非常に難しいということである。だからといって一人ひとりが勝手な行動をとり続ければ、アナーキー、無政府状態の混乱に陥る。人を国に置き換えれば、世界国家というものがいかに現実離れした考えかがよく分かる。
p208~
  国が真二つに分裂して混乱に陥っているアメリカは、自由、平等という建国の父たちの理想を受け継いでいくことができるのか。(略)
 情報化と国際化が拡大する新しい状況の中で、アメリカは235年前に歴史が始まって以来の危機に陥っている。このアメリカの危機は、ある意味では人類全体の危機でもある。
p225 第5部 アメリカが社会主義国家になる
p228~
 オバマ大統領の新しい国民健康保険制度は、オバマ大統領が推進している社会主義的な政策の象徴である。アメリカは、もともとがチャンスの国といわれ、成功した人々が途方もない報酬を手にすることができる。機会は平等だが、結果は平等でないのがアメリカという国なのである。
p229~
 アメリカ政府の統計によると、アメリカ人が支払っている2兆㌦の税金のうち、半分に近い41%を1%のアメリカ人、つまり300万人が支払っている。そしてその300万人の人々は、アメリカの国民総生産のほぼ5分の1、1兆㌦を稼ぎ出している。日本のGDPは5兆㌦あまりといわれているが、ほぼそれに匹敵する国民総生産を300万人のアメリカ人がつくりだしているのである。
 すでに述べたように、アメリカ人の半分近くの人は税金を払わず、アメリカ政府から生活保護費、医療費、それに食糧クーポンまでもらっているのである。
 「これはまさに社会主義」
 『ウィークリー・スタンダード』のノミエ・エネディ記者はこう述べているが、こうした状況が、アメリカを窮地に追い込んでいるのである。
p230~
 アメリカ人の3分の1にのぼるヒスパニックやアフリカ系のアメリカ人が全てではないが、その多くが「アメリカに行けば、ただで国が養ってくれる」と考えて、アメリカにやってきた人々である。オバマ大統領が推し進めている福祉拡大政策は、民主党特有のものであると同時に、三つ目のアメリカを構成している人々の考え方を反映しているのである。 *強調(太字・着色)は来栖
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