金沢発 あれやこれや

-ヒントをくれる存在に感謝しつつ物語をすすめます-

ビトロス8世の日記5-こたつとらいぞう-

2021-07-14 22:13:25 | 天空の戦い
《ビトロス8世の日記5-こたつとらいぞう-》
酔いがまわり、その晩は帰宅をあきらめ、軒下に泊らせて
もらった。翌朝、私は軒下に寝そべったまま、昨晩の小学生の登校を見送った。
「なるほど普通の小学生だわ」

まだ酔いの残った頭で昨晩の話を思い返した。
私を呼び止めた小学生は、実は小学生であって小学生ではなかった。
高い位の神が地上に生まれる場合、考えられる最適な肉体が用意される。
今回はこの地球の最高自然霊の肉体が提供された。
神が起きているうちは自然霊の意識は裏にまわりでてこれない。
昨晩は、神が寝たあとだったので、自然霊が表にでて自分と会話してた。
そのことを昨晩小学生から、いやその自然霊から聞いた。

「酔いはさめましたか」
そういいながらこぶしほどの小さいつむじ風と綿菓子のかけらのような
小さい雲が近づいてきた。つむじ風は「こたつ(小竜)」、雲は
「らいぞう(雷蔵)」といい、最高自然霊の守護精霊である。
ふたりは小学生を「王子」と呼んだ。
「どうもお世話になりました。酔いも醒めましたのでもう帰ります。」
「いえいえ、王子が飲み友達ができてとても喜んでおります。今後も
 ちょくちょく来てくださいね。」
私は3回ほどお辞儀をして不思議に満ちている家をあとにした。

その日の夜、私に「酔っ払い」という新レッテルが飼い主から与えられた。
(初稿2007-02-24 14:48:09)
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ビトロス8世の日記4-王子との出会い-

2021-07-13 21:53:16 | 天空の戦い
《ビトロス8世の日記4-王子との出会い-》
昼寝から覚め、重い気持ちで身体をひきずりながら示された家に
向かったのは陽もとっぷり暮れた夜8時過ぎだった。

通行人に場所を聞くわけにもいかず、番地標識をたよりに目的の
家を探し当てた時にはもう夜もふけていた。
その家は居間にぽっと明かりがついていた。
連絡書によると対象は子供なのでとっくに寝ている時間である。
2階に子供部屋らしき部屋を見つけ中をのぞいてみた。
寝姿だけをおがんで帰ろうと思ったのだ。

その時である。背後から突然声がした。
「おい、なにのぞいてんだ」
振り返ると人らしき黒影がある。
「犬」の振りをしてやり過ごそうとしているとその声はさらに続いた。
「お前さん、もしかして新しい担当かい」
「神の都合がつかないとは聞いたが、代理に犬をよこすたなあ。
 よっぽど隊員不足なんだな。しかたねえ。まあ今日は初対面だ
 からな、こっちきて一杯飲めや」
雲が去って月光に照らしだされた屋根の上には右手に缶ビール、
左手にたばこを持った小学生がいた。
「で、お前さんどこに住んでるの」
久しぶりの酒でうつろになった私はなかなか返事ができないでいた。
もじもじしている私の肩をその子がポンと触った。
私は返す言葉をやっとのことで絞り出した。
「み、み、み、南烏山です。あれっ、喋ってる。」
テレパスで答えようとしてたら、急に言葉が喋れるようになってびっくり。
きょとんとしている私をその子がにっこり笑って見ていた。
(初稿2007-02-24 14:46:07)
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ビトロス8世の日記3-タマからの通信-

2021-07-10 22:10:00 | 天空の戦い
《ビトロス8世の日記3-タマからの通信-》
今朝、通信員から連絡があった。
通信員とは3軒隣の猫の「タマ」ちゃんである。

猫族について少し触れる。我々と同様に母星が壊滅したため、この
地球に転生先を求めた種族である。高い知性をもち高度な精神文明を
築いていたらしい。地上では地球の猫に転生している。主に西方の
防衛隊に属すが、諜報能力が高いのでどの部隊にも通信員として必ず
「猫」が複数いる。

天空では「犬」も「猫」も開放され本来の姿で2本の足で立つ。
猫族は細おもての顔になり、猫というよりはきつねに近い顔となる。
我ら犬族もすらりとしたかっこうとなり、顔はひきしまりりりしい。

なぜ「犬」や「猫」として生まれることを選択するのかというと、
人間として生まれることに気がひけるからだ。なれない人間として
苦労しながら生活することを考えると「犬」でいいやと思う。
実際、人間として生まれ悲惨な一生を送って失敗した例が多い。

部隊の神々はほとんどが現世より数次元上の世界に転生されるが、日の
浅い神々は地上に人間として転生して修行される方がおり、「犬」
「猫」のなかには追っかけて近くの場所に転生するケースが多い。
私も、小隊リーダーの童子を追いここ東京世田谷に生まれた。
童子は数年前に寿命をまっとうされ天空へ戻っていかれた。

私は、渡された連絡書を読んで驚いた。
隊長クラスの神が地上に降りていて、本来ならば近くの神が
サポートにつくところだが、人員不足が生じており、
一番近い距離にいる「犬」の私にサポートについてほしい。
と書いてあった。

私は神に近寄るのも怖い。しかも隊長クラス。レベルが違いすぎる。
私に何ができるだろう。連絡間違いではなかったのか。
それ以前に、なぜ隊長クラスの神がわざわざ地上に人間として転生してるのか。
いったいなぜが起きてるのか。
考え疲れた果てに、いつのまにか深い眠りに落ちていた。
(初稿2007-02-24 14:43:16)
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ビトロス8世の日記2-天空の戦い-

2021-07-07 20:36:25 | 天空の戦い
《ビトロス8世の日記2-天空の戦い-》
今日も日課の昼寝にいそしんでいるが、「犬」としては想像しがたい
深い悩みをかかえている。
我々は第二の故郷となった地球を守るためにこの星の守護者とともに
防衛戦に参加している。私は東方の守護隊に属する。総数12の部隊
からなっている。

悠久の昔から続くこの戦いに名などない。我々は天空の戦いと名づけ
た。地球を侵害しようと隙を狙っている存在は実に多く、撃退のため
に休む暇がない。部隊生活は多忙で充実しているのだが、最近、自分
の役割について考えるようになった。
私の家は先祖代々騎士でありそれを誇りとしている。私は剣への関心
はそれほどではないのだが、先祖は自慢である。その剣がこの戦いで
良い出番がまったくない。魔術とは呼ばないらしいが、神々の放つ一
撃で勝負が決まっている。
私は勝負のついた敵をぼこぼこ殴っているに過ぎない。
通信隊や補給隊の仲間が生き生きと活躍しているのを見るにつけ、
こんなことでいいのだろうかと悩みをもちはじめている。

この星で誕生した生命でないことが災いしてか、我々は生まれ変わっ
ても前世の記憶をそっくり覚えている。前世の苦悩を持ち越すことほ
ど哀れなことはない。特に「犬」となった身では。
ああまたため息をついてしまった。家族に更に変なレッテルをつけら
れないよう「犬」らしくしないと。
(初稿2007-02-24 14:41:33)
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ビトロス8世の日記1-星を夢見る犬-

2021-07-06 00:10:55 | 天空の戦い
お祝いといっても、りっぱな贈り物も持ちませんゆえ
昔書いた小説を再掲させていただきます。
★★★NESARA/GESARA/JESARA記念★★★

《ビトロス8世の日記1-星を夢見る犬-》
昼寝は私の生活の最重要項目のひとつである。
快適な睡眠を得るためにあれこれと工夫するのだが、予期せぬ邪魔が
はいり起こされることが多い。その貴重な睡眠のなか私は夢を見る。
私の母星の夢、そして昨日のように感じる天空の戦いの夢だ。

申し遅れたが、私の地上での姿は「犬」である。飼い主からつけられた
名前はロッキー。私の昼寝姿がだらしないそうで長男には早くからグロ
ッキーと呼ばれている。ときどきあおむけに昼寝している姿がだらしな
いそう。言い訳ではないが、かわいいという人も少なくない。

なぜ犬が日記など書くのか、いきなりのいぶかしい展開でとまどうのは
当然のことである。説明しておかねばならない。
前述したとおり、私はこの星の生まれではない。遠く離れた星の出身。
残念ながら母星は悪意のある存在によって壊滅してしまった。
母星で転生することもかなわなくなった私たちは、太陽系宇宙を頼って
地球に移り住んだ。母星では「犬」は高度な知能を備えた種族であった
が地球の「犬」はまだまだ知能が低い。時々仲間の「犬」が世の中を
かえりみず、持っている知能をひけらかすことがあるが、慎むべきで
ある。

眠気が増してきた。今日はここまでとしよう。
(初稿2007-02-24 14:40:27)
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