本当はたろうちゃんちに行くはずだったある日、オレコはいけなかった。
前日に「あしたはたろうちゃんちにいくよ」と説明しておいたので、朝の散歩のとき、
オレコはいつものように、しー、をして、すぐさま駐車場へと走って行ったのだが・・・
お父さんが会社から帰ってこなかったので、車がなく、それでいけないのだった。
「ごめんね、ごめんね、今日はいけないのよ、車がないの、ごめんね、明日いっぱい遊ぼうね」
お留守番ばかりだった1週間、たろうちゃんちへ行くのがきっと楽しみだったに違いない。
謝っていたら、理解したのか、駐車場へ行くの~~~、というツッパリをやめ、くるりと体の向きを変え、てくてく歩きだした。
朝の散歩は苦手なものが多いから、用が済んだらすぐ帰る、ていうことも多いのに、この日は違った。
苦手な小学校のわき道を抜けて、あれよあれよ、行ったことのないところまで足を延ばして、1時間弱。
「たろうちゃんちいけないから、ちまんないから、おーちゃん、たくさんありーたのよ」
ほんとにそんな感じだった。
普段怖くて通れないところ、行ったことのないところ、ずんずん歩いて歩いて、さ、帰ろうかお母さん、って、自分で切り上げた。
えらいねえ、えらいねえ、いいこだねえ、って、思いっきり褒めてなでなで。
楽しみをふいにして、ごめんね。
火曜日からずっと帰ってこなかったお父さん、週末になったらorekoといっぱい遊ぼうって、頑張ってるよ。
いっぱい遊んでもらおうねえ。
たろうちゃん、orekoが来ないから、さびしがっているかもね。
「おれこちゃん、どうしちゃったのかなあ~」
こんどあったら、たくさん話すことがありそうだねえ~。