散髪をする

2022-03-14 22:38:53 | 
昨日は父の散髪をするつもりで実家に行きました。


「おとうさん かみのけ きってあげようか」

そうしっかり言葉を区切って伝えます。


寝転んでいた父は
私の目を見て

「うん。大分よくなった。
あともう少し腫れがひいたらいいんやけど…」

先日血だらけになった顔を撫でて、にこにこ話す。

「うん💦違うよ。
お父さんの かみのけ きってあげようかとおもってきたんやで。」
と、もう一度伝えてみると

「(笑)まだ、やめとくぅ〜。」
と、答えてくれました。


そうしてやっと話が通じたと思ったら
また顔を撫でながら
「顔の腫れがもう少ししたらおさまると思うんやわぁ〜。」
と、また付け加えてトンチンカンな返答がありました。


顔が治ったら切ろうと思っているんでしょうか。

傷はしっかり綺麗に治っていますし、顔は肝臓が悪いからか浮腫んでいるだけだと思うんですがね💦

「じゃあ、来週にお父さんの髪の毛を切ってあげるね。」

そう言って大きなカレンダーの次の日曜日にマジックで
『おとうさん 散髪』と書いておきました。

目で確認すると、うんうんと頷いてくれました。

という訳で、急遽 父の散髪ではなく、
母の散髪をすることに予定変更をしました。


部屋の床に新聞紙をひき
椅子を用意
散髪用ケープも用意します。

父が愛用の散髪セットを出してきました。

兄も私も、小さな頃はこの散髪セットで父の『作品』になっていた訳です。
母はつい最近までずっと父の『作品』でした。

父は絵を描いたり物を作ったりするのが大好きでこだわりを持っていましたから、
自分が切った家族の髪型にもいつもこだわりを持っていました。
切った直後は、ずっとその『作品』になった私たちを見つめています(笑)。

今回、母はもう父には髪の毛を切ってほしくないと言っていました。

父の手は血流が悪いせいか1.5倍に腫れ上がり赤くなっていて、恐らく思うようにハサミが使えないのと、皮膚が薄くなっているのでちょっとしたものに当たると切れたりして怪我をするとの事でした。

なので、今回私が父の代わりに母の髪の毛を切るんです。

父はまるで自分が母の髪の毛を切ると言わんがばかりにせっせと散髪の準備を率先しだしました。

「ネイロに切ってもらうからええって!!(切らなくていい!)」と母はすぐに警戒し小言を言おうとします(笑)

結婚して何十年、喧嘩をしても髪の毛を父に切ってもらう母と切りたい父の
この関係は認知症になっても身に染み付いてしまっているのかもしれません。

父にとっては『自分の仕事』なんでしょうね。

最後は私に母の散髪を譲ってくれました。


チョキチョキと髪の毛を切り落とす

左右のバランスを見ながら
手で指ですくいとりながら
ショートに仕上げます。


だんだん近づく影

父が私に近づく


『切りたいんだろうな』そう思いながら
父が視界に入る

暫くすると
離れて寝転ぶ父


認めてくれたんだろうか。







母の髪の毛を切り終わると父が私にいいました。


「じょうとうだぁ〜あ(上手にできたね)。
それだけできたらええんちゃう。」

と言ってくれました。

そして
「大きくなったら、介護の散髪とかやったらええでぇ。よろこばれるでぇ。」

なんて目を細めて言ってくれました。

わたし、もう41歳で十分大きい大人なんですが…(笑)
『大きくなったら』なんて
父は私を何歳だと思っているんでしょうか


娘の指摘にドキッ

2022-03-10 11:01:07 | 日記
以前娘に、
「ねぇ、オトちょっと聞いてくれる?」と、ついさっきオトの目の前であった私のザワついた気持ちをオトに話してみました。

「今さぁ、ママ、オトの目の前で電話してたやん。あれ、ネット環境が悪いから新しい会社に契約する手続きの電話やってん。
昨日までは、営業マンがざっくばらんに契約内容を話してくれて、それを理解してたつもりやってんけどな…。

今、アシスタントの若い女の子から電話があって、契約内容をずっとずっと棒読みされていた訳なんよ。

ママ、耳がしんどくてさ…。途中で訳分からないままずっと聞いていて。

契約書の文章はやっぱりそのまま読む時は、直接対面して、視覚的に文章を指し示しながら読んで欲しいと思ったわけ。

でも、このコロナ禍やろ。

電話でこういう契約内容を確認作業ってこれからありえる話なんだと思うんよね。

もしオトがネット環境のお仕事をしていて、今回のような説明をしなくちゃいけないならどうする?」


「ママ、だからイライラしてたんや」
オトは私の気持ちに敏感です。
だからこそ、私の気持ちを伝えてみたんです。


「そうやねん。時々、『あれ?営業マンから聞いていたのと違う!』って思って質問するやろ?そしたら、そのアシスタントさんは、またその該当箇所を読み直してくれるわけやねん。
文章ってまわりくどいというか
『え?どうゆうこと?要約して話して欲しい』っていう部分あるやろ?
なのに、要約せずにそのまま言って、さらにその他はいかにも『マニュアルに沿って』 話す丁寧語。
同じ答え方1つしか持っていないから、結局答えが伝わってこないし、こっちも聞く気が失せてきてん。」


するとまずオトが言ってきた言葉に驚きました。


「ママ…もしかしてママは、そのアシスタントさんと似てるんじゃない?
人を嫌に思うところって、案外自分の嫌なところだったりするやん。
ママも昔仕事をしていて、マニュアル通りにしか話せない人だったんじゃない?」


こうやって鋭い質問でオトは私に時々思いがけない風穴をあけてきます 。


「え?んーーーそうだったかな?

そう言いながら、だんだんと蘇るのはオトを産む前まで働いていたOL時代の私でした。

いや…あの頃私は一生懸命働いていた。
営業マンと電話が繋がらなくてピンチな時も、何とか切り抜けて得意先と上手くコミュニケーションをとっていたじゃない?
そう思い出した瞬間に、また過去の自分が見えてきます。

いや…ちがう。私は物覚えが悪くて、いつも教育係の先輩にいじめられていた新入社員の頃。
わからないことだらけで、マニュアル通りにしか話せない私はそこに居ました。

仕事なんて、お金が稼げればいいと、
適当に選んだ会社に入りよく分からず研修。
興味が湧かない仕事内容に、研修内容は右から左。
配属された部署は営業。
アシスタントとして営業事務をしていました。
教育係の先輩が怖すぎて、色々相談出来ない中マニュアル通りに仕事をして電話の向こうのお客さんに何度怒られたことか。

つまり オトの指摘は合っていたんです。





人のことなら、こんなふうに視野を広げ気づけるオトは、なんでまだ自分に向き合えずにいるんでしょうか。

『向き合ってない』と思ってしまうのは
私の目に見えないからでしょうか。

オトはもしかしたら十分に自分と向き合っているのかもしれません。
向き合えたから、じゃあ『今からすぐ前を向いて歩ける!』という
そんな単純ではないのかもしれません。




毎日気だるく頭痛に横たわるオトを見ていると
ふと以前オトに言われた言葉が聞こえてくるようです。

「ママ…私今まですごく頑張ってきてん。だから、まだゆっくりしててもいいよね…」

今も以前も、私の心中は混沌としています。

学校へ行ってほしい。他者と関わってほしい。他の同年代と同じことをする幸せを味わって欲しい…

その一方で、人と関わる中でいじめや疎外感というしんどさしかなかったオトの辛さも感じ取れて…

2つの想いは常に私の中で渦巻いています。

「いいよ。しばらくゆっくりしていこう」

あの時、そう伝えると、
オトは安心した表情になりました。



そんな事を思い出し
『今はこれでいいんだ』
と、目の前のオトを受け止め受け入れていこうと再び腹をくくりなおします。



ところで、話は戻りますがオトがもし仕事をしたらの話もびっくりでした。

「まず、電話で契約内容を読み上げないと行けない時は、要所要所で『ここまでで質問がないか』と聞くことが大事やと思う。あと、ここまでの内容の要約もしながら分かりやすく説明も入れたらいいんちゃうかな?」



実際できるかどうかは別として、
まずはそういうことに気づける力というのが頼もしいです。


頭で考えることが出来ても、行動にはなかなか移せない…
そんな不器用さがあるのも
オトなんだなぁと
思ってはいます。

大丈夫。
まだまだ未来はある。

人との関わりも
今じゃなくても
ゆっくり再開する日は来るはずだ。








楽しみを持つ

2022-03-04 09:54:09 | 日記
『オト以外の楽しみを持とう』

そう心に何度も言い続け
進展しない私。

けれど、オトの誕生日に出会ったミモザが私を少しずつ明るい方へ導いてくれている気がします。


小さな黄色い幸せを少しずつ小瓶に入れて


ガーランドにしてみたり






レジンに閉じ込めてみたり。


やってみたかったことを、少しずつ叶えています。

立派ではないし、誰にでもできることだけれども、

やろうとしなかったら出来ない事。

黄色い幸せに心が救われていくようです。

『この小さな手作りをまた何に変身させようか』

そんなことで頭をいっぱいにしているときが幸せです


めーちゃんのソバージュが風に揺れて
黄色い菜の花を見つめています。

菜の花も揺れて
『もう春ですよ』って言っているのかな。



今を受け入れて

2022-03-04 07:47:01 | 
父の話にお付き合いいただきありがとうございました。

あまりに衝撃的で辛かったです。

でも日常は続きますから、いつかはこういうハプニングも生活の一部となるのでしょう。

今はせん妄状態から少し脱しているようなので、今のうちに今ある幸せの中で『私は私』普通に過ごしていきたいです。

あの日
仕事が終わってから、
父が倒れた商店街にまた私一人で行きました。

父がどこでどうやって倒れたのか気になったからです。

店仕舞いをしようとしている花屋のおじさんに声をかけました。

「あの、今朝11時前ぐらいにここらへんでお爺さんが倒れていなかったでしょうか?」

「え?知らないなぁ」
そう言ってから、おじさんは私の話を聞いてくださり共感しながら
「気づかなかったわ〜ごめんねぇ。」
と言ってくれました。
そして、おじさんの親の話も話してくれました。「おじさんの親もよく倒れるから心配だ」って言ってました。
親は違えど、親への心配は誰しもあるんだと思いました。
きっとおじさんもそう私に伝えたかったんでしょう。
今度 おじさんのお店でお花を買おうと思いました。

地面に血痕がないか見ながら商店街を歩き進みます。

『あ!』

ありました。
薬局の前からポツポツと血痕が。

薬局の前にあるお店の店長さんに声をかけました。

「え?うそ!大丈夫なん?俺ずっと店おったけどなぁ。そう言えば11時前は一旦〇〇さんとこに行ってたかなぁ。」
そう言って近くにいてる奥さんにも事情を話してくれました。
「ほんまに?わからんかったわ。
気づかなくてごめんなぁ。」
そう言ってくれました。

次に薬局の隣の靴屋さんのおじさんにも声をかけてみました。
「あ〜、知ってる。
知ってるっていうか、うちのお店の前を通りかかった人が『さっきおっちゃん倒れてはったよ。あんたんとこのお店の前に血が落ちてるよ』って教えてくれてん。
俺が気づいた時にはもうおらんかったから、どんな人でどんな状況だったかは知らんのやけれど。」
そう話してくれている間に、後ろからさっきの店長が靴屋さんに顔を出してきてくれました。
そして私の代わりに靴屋さんに私の父が倒れたことを伝えてくれました。

幸い血痕は商品には着いてなかったそうで安心しました。

「色々ありがとうございました。商品に血がついてたらと思うと、申し訳ないです。血を落としてしまいご迷惑をおかけしました」
そう伝えて、何度も頭をさげました。

おっちゃん達は
「何かあったら商店街の人たちに言ってくれたらいいからね」
なんて言ってくれました。

コロナ禍なのに、なんて人情がある商店街でしょうか。

実際 警察官の話によると、
父が倒れた時に警察に助けを求めてくれたり、道行く人が声をかけてくれたり、血だらけの父にティッシュをくれたりしてくれたそうなんです。

本人にその記憶が無いのが残念でなりません。
結局父は自分が倒れた事も、病院で縫われたことも記憶がないようです。
1日経ってやっと、痛みや傷に気づいたそうです。

今、完全に正気に戻ったかといえばそれも怪しく、傷口に抗生剤の軟膏をぬらなければならないのに、ニベアクリームを塗って
いるそうです。

そして呆れますが、やっぱりお酒は飲むんだそうです。

母は半分怒って、
半分あきらめながら、

「ネイロ、もうしゃーないわ。あきらめよう。いちいち心配してたら身が持たないよ。ネイロ もうお父さんのことは考えんとき。」
そう言いました。

私を父の呪縛から放とうとする母。



母も、受け止めきれずにいるのに、
私を巻き込みたくない気持ちが大きいのでしょう。

1人では受け止めれない重圧を抱えて強い母で居ようとしてくれています。


「うん。 わかった。」
と、口では言いますが
やっぱりいざというときは少しでも力になれるよう私はもっと強くなろうと思います。



どんな逆境でも
私は私を楽しむ強さを持ちたい






せん妄か?(血だらけの父)4

2022-03-01 22:51:36 | 
しばらくして 救急病棟の扉が開き
中からとぼとぼと父が出てきました。

顔にはガーゼが沢山貼られています。


私たちを見つけるとこちらへやってきて、私と母の真ん中に座りました。

ガーゼだらけのお爺さんは
「ふん 」と鼻で少し笑いました。

「わしはもう、だいぶん前に死なないといけなかった。なかなか死なんなー。


死にたかったんかな…
死にたいからお酒のんだんかな…

そんな気持ちが頭の中でグルグルと回ります。

最近の酒の飲み方は尋常ではなかったそうです。

ご飯を食べようとすると吐き気がし、
お酒しか喉をとおらない状態でした。

しばらくすると父は会計を済ます前にまた立ち上がりました。

スタスタと歩き
自動で出るはずのアルコール消毒の前に立ちます。

傷だらけの手を差し出しますが
器具が壊れているのか
消毒液は出ませんでした。

また
「ふん」と鼻で力なく笑っていました。

「まだ おかね はらってないよ。
まだ かえらないよ。

そうハッキリとゆっくりと話しても、言葉が届いていない様子でした。

私は父を見張り 母は会計を済ませました。


そして母はまた父の手を掴み自分の肩にのせて

「ネイロ 悪かったな。
仕事あるのに…。お父さんはお母さんがつれて帰れるから仕事行き。」

そう言って私を仕事に行かせようとしてくれました。


ところが
家に帰るとまた父が暴走したらしく
母から電話がかかってきました。

「お父さんあかんわ、ガーゼ 全部はがすねん。
何すんねん!って怒ったんやけど。

それから縫った糸も、これ何やって言って引っ張って 布団が血だらけやねん。」

母は私の仕事をすっかり忘れてしまうくらいに気持ちが動転していました。

私も、これ以上助けることが出来ずに
「そうかぁ…。助けに行きたいけど、でもな、私、今から仕事やねん。 」

「あーーごめんごめん。はよ行きや〜」

「こっちもごめんね。」
そう言って電話を切りました。

『どうしよう どうしよう。』

でも、何度考えても
『どうしようもない』事

仕事場に向かう坂道が、辛く険しく重たかったです…