9月4日松下幸之助一日一話(松下幸之助.COM)
サラリーマンは独立経営者
サラリーマンの中には、自分は所詮雇われて働いているのだから、自分の仕事に打ち込み、生き甲斐を感ずるというまでにはなかなかなれないという人があるかもしれない。そういう場合、私は次のように考えたらどうかと思う。
それは、一つの会社の社員であっても、自分でその職業を選んだからには、“自分は社員稼業という一つの独立経営者である”という信念を持って仕事をすると いうことである。言いかえれば、独立経営者が十人あるいは百人、千人と集まって、一つの会社をつくり事業をしているのだ、と考えるのである。そうすること によって仕事に張り合いも出てき、面白味も加わってくるのではないだろうか。
2013年9月3日筆洗(東京新聞TOKYOWeb)
筆洗
▼<くものある日/くもは かなしい/くもの ない日/そらは さびしい>(八木重吉「雲」)。きのうの昼すぎ、青空を見上げると、巨大な入道雲がとぐろを巻くように動いていた。居座る夏を象徴するような雲だった
▼立春から数えて二百十日に当たる九月一日ごろは稲穂が出始める時期で、台風とぶつかることが多かった。「二百十日の前後(まえうし)ろ」とは、暴風雨に警戒が必要な時期を伝える農家の知恵だろう
▼気象衛星や地域気象観測システム(アメダス)など、観測技術の進歩で台風や豪雨の予報は精度が高まったが、局地的な天候の急変を予測するのは今も難しい。気象庁の「竜巻注意情報」も間に合わなかったようだ
▼ 埼玉県越谷市や千葉県野田市などできのう、竜巻が発生し数多くの負傷者が出た。住宅の屋根が吹き飛ばされ、電柱は根元から折れた。津波に通じる圧倒的な破 壊力である。昨年も茨城県つくば市で竜巻による甚大な被害があった。温暖化が進む列島で得体(えたい)の知れぬ気候変動が起きているのだろうか
▼記録的な猛暑や東北、中国の局地的な豪雨、太平洋側の少雨…。今夏の気候を分析した気象庁の検討会は「異常気象だった」と位置づけた。異常気象が当たり前になる時代が早晩到来するような気がして恐ろしくなる
▼夕方、空を見上げてみると、秋らしい雲が広がっていた。少しだけほっとした。
2013年9月4日天声人語(OCN*朝日新聞デジタル)
天声人語
▼ 時の流れに色あせてしまう偉人もいれば、いよいよ輝きを増す傑物もいる。田中正造は後者である。公害の原点とされる栃木県・足尾銅山の鉱毒事件で民衆の先 頭に立ち闘った。〈真の文明は山を荒らさず、川を荒らさず、村を破らず、人を殺さざるべし〉という至言を残して没し、きょうで100年になる
▼明治の半ば、鉱毒は清流を死の川に変え、山や田畑を枯らした。しかし銅は国の経済を支える産品で、政府は人を救うより富国強兵を優先した。そのさまは昭和の水俣病、今の原発にも重なってくる
▼衆院議員だった正造は議会で質問を繰り返す。運動を組織し、死罪を覚悟で天皇に直訴した。官権に抗し、幾多の妨害を受けつつ人々を引っ張った。不撓不屈(ふとうふくつ)の四文字が、これほど似合う人はまれだ
▼正造を高く買っていた勝海舟が、冗談ながら、この者は末は総理大臣だという証文を、閻魔(えんま)様や地蔵様あてに書いたという逸話が残る。原発事故のあと正造が総理だったら、困っている人、弱い立場の人を、何をおいても助けるに違いない
▼現実の総理は、早々と収束宣言を出し(民主)、経済のためには再稼働が必要と唱え(自民)、なお15万人にのぼる避難者は忘れられがちだ。事故処理より外国への原発セールスに熱心というのでは、ことの順番が違う
▼冒頭の「真の文明は」の後には、こうした文が続いている。〈……今文明は虚偽虚飾なり、私(し)慾(よく)なり、露骨的強盗なり〉。1世紀が流れて、古びないのがやりきれない。