9月18日松下幸之助一日一話(松下幸之助.COM)
豊かさに見合った厳しさ
暮らしが豊かにな ればなるほど、一方で厳しい鍛練が必要になってくる。つまり、貧しい家庭なら、生活そのものによって鍛えられるから親に厳しさがなくても、いたわりだけて 十分、子どもは育つ。けれども豊かになった段階においては、精神的に非常に厳しいものを与えなければいけない。その豊かさにふさわしい厳しさがなければ、 人間はそれだけ心身ともになまってくるわけである。
しかるに、いまの家庭にはそういう厳しさが足りない。政治の上にも、教育の上にも足りない。それが中学や高校の生徒がいろいろと不祥事件を起こしている一つの大きな原因になっているのではないだろうか。
筆洗
2013年9月17日筆洗(東京新聞TOKYOWeb)
▼きょう没後八十五年を迎える若山牧水には、生涯に残した七千首あまりの歌のうち酒を詠んだ歌が二百首はあるそうだ。酒を愛し、旅を愛した歌人は日本の隅々にまで足を延ばし、酒を飲んだ
▼<白玉の歯にしみとほる秋の夜の酒はしづかに飲むべかりけり>。この有名な歌の格調高さも魅力だが、<それほどにうまきかと人のとひたらばなんと答へむこの酒の味>も酒好きには格別である
▼朝二合、昼二合、夜六合の一日一升が定量。理由を見つけては飲み足すことも。四十三歳で亡くなる直前まで酒は絶やさず、体に染み込んだアルコール分で死後三日を過ぎても死臭や死斑が現れなかったという逸話もある
▼連休の秋の夜長、静かに酒を飲むという計画を諦めた人もいるだろう。愛知県豊橋市付近に上陸した大型の台風18号は列島を縦断した。交通網は寸断され、最大で約五十万人を対象に避難指示が出された
▼気象庁が大雨の特別警報を初めて出した京都、滋賀、福井の三府県では特に被害が激しかった。泥水につかる水田の映像を見ると、稲刈りが終わっていてほしい、と願わずにいられない
▼牧水の歌碑は全国に約三百基。自然災害が爪痕を残す土地を訪ねたこともあっただろう。<幾山河越えさり行かば寂しさの終(は)てなむ国ぞ今日(けふ)も旅ゆく>。旅の途中、度重なる災禍に再起する民の強さも見てきただろうか。
2013年9月18日天声人語(OCN*朝日新聞デジタル)
天声人語
▼クレタ人は皆うそつきだ」と、クレタ人Aが言った。Aの言葉が正しいとすると、Aもうそつきということになり、クレタ人が皆うそつきかどうかは真偽不明となる。よく知られたパラドックスである
▼これとは次元が違うが、話を聞くと似たような眩暈(めまい)を感じてしまう。安倍政権が準備する特定秘密保護法案である。「重要な秘密は漏らしてはならない。ただし、どれが重要で、どれが重要でないかは重要な秘密である」と言われているようだ
▼法案の概要を読むと、防衛、外交、スパイ、テロの4分野で、それぞれ「特定秘密」にできる項目を並べている。漏洩(ろうえい)は厳罰に処せられるのだが、書きぶりが抽象的かつ網羅的なので、なんでもかんでも秘密にされかねない怖さがある
▼米国との間で軍事情報などを共有する必要性が高まり、「保秘」の仕組みも万全にする必要があるということらしい。安全保障上、表に出せない情報はあるだろう。ただそれは、国民の知る権利、ひいては国民主権の原理とぶつかる関係にあることを忘れるわけにはいかない
▼なにが特定秘密かを決めるのは「行政機関の長」だ。その判断が適切かどうかを見張る仕組みが法案にはない。首相以下が恣意(しい)的に決めたり、乱用したりしたらどうなるか。国会や裁判所は歯止めをかけられないのか。危惧すべき問題点が多すぎる
▼民主主義を支えるのは情報公開である。それを蔑(ないがし)ろにして法成立に走るなら、「よらしむべし、知らしむべからず」ではないか。
広島5-4巨人 広島、今季初の6連勝
広島が今季初の6連勝。1-1の八回1死二塁でキラの右前打が失策を誘い勝ち越し。エルドレッド、小窪の適時打などで3点を追加。早めの継投が的中し、横山は今季初勝利。巨人は前半3併殺打の拙攻で九回の反撃も及ばず3連敗。
セ・リーグ
広島-巨人20回戦(巨人12勝6敗2分、13時30分、マツダスタジアム、32053人)
巨 人000 010 003-4
広 島000 100 04×-5
▽勝 横山32試合1勝1敗
▽敗 山口58試合4勝3敗3S
▽本塁打 長野18号(1)(今井)
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9月17日松下幸之助一日一話(松下幸之助.COM)
愚痴の言える部下を持つ
憤慨したときに憤慨できる相手があったら一番楽ですな。つまり早く言えば最高首脳者として、愚痴を言える部下が必要だということです。それが副社長でも専務でも、あるいは秘書でもいい、そういう人があれば幸せですな。
どんなにえらい人でも愚痴のはけ場がなかったら鬱積しますわ。そうするとあやまちをします。太閤秀吉でも、石田三成を可愛がったといいますけど、あれは やっぱり愚痴を石田三成にもっていったんだと思います。そうすると三成はそれを適当にうけて、うまい具合に機嫌をとったんですわ。そうすると太閤さんは頭 がすっとして、またいい知恵を出したということでしょう。
筆洗
2013年9月16日筆洗(東京新聞TOKYOWeb)
▼ もし人類が依存する自然の生態系がその営みをやめたら? 未来学者のヨルゲン・ランダースBIノルウェービジネススクール教授はそんな問いを立てた。もし ミツバチが受粉を助けなくなったら、自然が飲料水の蒸留をしなくなったら、樹木が二酸化炭素の吸収をやめたら、細菌が廃棄物を分解しなくなったら…
▼科学者の計算によると、人類が毎年無償で自然の生態系から受け取っているサービスの価値は各国のGDP(国内総生産)の総計に匹敵するという。自然がこれらのサービスを停止したら世界を待っているのは崩壊だ
▼「自然に人情は露(つゆ)ほども無い。之に抗するものは容赦なく蹴飛ばされる。之に順(したが)うものは恩恵に浴す」と物理学者の長岡半太郎が随筆に書いた通り、自然の中で生かされていることに人間はあまりにも無自覚である
▼全国で唯一稼働中だった関西電力大飯原発4号機がきのう、定期検査に入り、営業運転を停止した。全国で稼働する原発は一年二カ月ぶりにゼロになる
▼ランダース教授は今後、世界中で太陽光や風力などの再生可能エネルギーへの転換が進み、二〇五〇年には原子力の十五倍のエネルギーを供給していると予測する
▼事故を起こした時の膨大なコストを考えても、原発は淘汰(とうた)されゆく発電方法だ。生態系を放射能で脅かす原発は、自然から容赦なく蹴飛ばされる存在である。
2013年9月17日天声人語(OCN*朝日新聞デジタル)
天声人語
▼無心の境地ということだろうか。世界のホームラン王はかつてこう語っている。「ぼくは、自分の目の前に来る白い球を、自分の打ち方で、いかに正しく打つかということしか考えていない」(川村二郎『王貞治のホームラン人生』)
▼その王さんの、聖域とも言われた大記録を、ヤクルトのバレンティン選手が超えた。実に49年ぶり。あと1本の重圧を跳ね返したのも無心だったろうか。「リラックスをして走者をかえすことを考えた」という談話が、達成の機微を伝えている
▼開幕21連勝を成し遂げた楽天の田中投手も、数字へのこだわりを否定する。「記録のためにやっているんじゃない」。それにしても歴史を塗り替える偉業である。力んだりしないのかと気を揉(も)むが、彼らの胆力は凡百の想像を超えるのだろう
▼枝葉を払うことの大切さは、分野によらず道を究めた第一人者がこもごも指摘している。将棋の羽生(はぶ)三冠は言う。「大切なのはそぎ落としていく作業です」。余分なことは忘れた方がいい。大事なことも忘れていい。思い出せればいい。その方が独創的な発想が出てくる、と
▼中島敦の短編「名人伝」を思い出す。ある男が弓の至芸を身につけた時、弓も矢も不要となった。道具はなくても、その道の「神」が彼に宿ったからだ。最後は弓という名も、その使い道も忘れ果てていた……
▼むろん寓話(ぐうわ)である。ボールとバットがなければ野球はできない。ただ、奥義というものの底知れなさを描いて、一分の隙もない。
広島10-0巨人 広島、完勝で5連勝
広島が完勝で5連勝。前田健は7回2安打無失点、自己最多8連勝でリーグトップの14勝目。打線は二回に前田健の先制打や丸の2点二塁打などで4点。七回は5点と計15安打10点。巨人は菅野が5失点で5敗目。打線は3安打で零敗。
◇セ・リーグ
広島-巨人19回戦(巨人12勝5敗2分、13時31分、マツダスタジアム、32068人)
巨 人000000000-0
広 島04010050×-10
▽勝 前田健23試合14勝5敗
▽敗 菅野24試合12勝5敗
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9月16日松下幸之助一日一話(松下幸之助.COM)
人の責任
会社が発展するのも失敗するの も、結局はすべて社長一人の責任ではなかろうか。というのは、もし社長が“東へ行け”と言うのに、“いや私は西へ行きます”と言って反対の方向に行く社員 はまずいないからである。ほとんどの社員は、社長が東へ行こうと言えば、みな東へ行く。だから、“東へ行け”と言って、もし間違ったとしたら、それは社長 一人の責任に他ならないわけである。同じように、一つの部、一つの課が発展するかしないかは、すべて部長一人、課長一人の責任である。
私は、いままでいかなる場合でも、そう考えて、自問自答しながら事をすすめるよう努めてきた。
筆洗
2013年9月15日筆洗(東京新聞TOKYOWeb)
▼<鋭きも鈍きも共に捨てがたし錐(きり)と槌(つち)とに使い分けなば>。蘭学者の高野長英や長州藩の大村益次郎も学んだ大分の私塾咸宜園(かんぎえん)を創設した江戸後期の儒者広瀬淡窓(たんそう)の言葉である
▼年齢や身分に関係なく、入塾後の成績で優劣を判断する徹底した実力主義で知られる。短所をあげつらうより、長所を見いだして人材を使い分けよ、という組織論は現代でも通用するはずだ
▼男性が一度はやってみたい仕事の一つとして、プロ野球の監督を挙げる人が多い。選手の個性を組織の中でどう生かすか、想像するだけでも楽しい。エースと四番だけでは勝ち続けられないが、彼のような投手が一人いたら監督は悠然と采配を振るえそうだ
▼プロ野球楽天の田中将大投手が開幕21連勝をマークし、同一シーズン最多連勝のプロ野球記録をつくった。「神様」「仏様」と列せられた元西鉄の稲尾和久さんの記録を五十六年ぶりに書き換えた
▼米大リーグの連勝記録を七十六年ぶりに塗り替える大記録でもある。こっそりとボールが飛ぶように変更され、投手受難のシーズンだけに、快記録は一層まばゆさを増す
▼「リリーフ陣を休ませたかった」と十三日、志願して九回まで投げ切った。自分だけの力では悲願の初優勝はつかめない。チームには錐も槌も必要とよく理解している賢い投手が、無敗の連勝記録をどこまで伸ばすのか楽しみだ。
2013年9月16日天声人語(OCN*朝日新聞デジタル)
天声人語
▼神出鬼没で暴れるゲリラ豪雨と違って、台風は強大な「正規軍」の来襲を思わせる。日本めがけて攻め上がってくるイメージだが、地図を逆さにして見れば、列島を袈裟懸(けさが)けにしてくる格好だ。手ごわそうな一太刀(ひとたち)が近づいている
▼この新聞がお手元に届くころ、大型の台風18号は東海から関東あたりに接近しているとみられ、上陸のおそれもある。上空からの姿は広い雨雲を伴って険悪だ。くれぐれも用心をしていただきたい。内輪のことになるけれど、風雨をついての配達も
▼過去を振り返ると、地震とともに台風は、幾多の爪痕をこの国に残してきた。平均すると毎年11ほどの台風が接近し、うち3つが上陸しているそうだ。上陸10回という年もあった。発生が年に26ほどというから、まさに台風銀座である
▼18号は、すでに各地でずいぶん降らせた。きのうの午前、東京の空は墨を流したように暗く、雨が激しく街を叩(たた)いた。その後晴れ間ものぞいたが、近所の小さな川を濁流がごうごうと走っていた
▼季節は違うが、〈さみだれや名もなき川のおそろしき〉の句が与謝蕪村にある。小さな、名もない川があふれて被害をもたらす例は、梅雨でも台風でも多い。この一句、近所の水流や高低といったリスクに、普段から目配りせよとの戒めにも読める
▼地球の温暖化は台風にパワーをもたらし、「経験したことのないような大雨」などの原因をつくるという。早めの備えと早めの避難を心がけて嵐を去らせ、一過の空を仰ぎたい。