長男が幼い頃、我が家は近所の子供たちの溜まり場だった。狭いマンションに不釣合いなジャングルジムや滑り台や玩具の多くは妻の実家から送ってきたものだった。娘も男の子のように活発で、いつも兄に付いて廻っていた。
家から徒歩10分くらいのところにある片上海岸をスケッチしながら、妻から聞いた、長男が幼稚園児だった頃の出来事を思い出した。
その日のちびっ子ギャング団は、5歳月組の長男たちと、その弟たち、紅一点の2歳の娘、と総勢10名から成っていた。妻がベランダから子供たちの様子を窺うと、マンションの駐車場の脇を流れる小さな水路で、隣の建具屋で拾った木切れを持って、魚釣りの真似事をしていた。
家事が一段落して、子供たちの歓声が聞こえないのに妻が気付いた。「さかなつり!さかなつり!」と騒いでいた幼児の姿が駐車場から消えていた。妻の胸に不安がよぎった。
マンションに面した国道3号線を東に少し歩いた所の交差点を左に曲がるとJR鹿児島本線の踏み切りに出る。それを越えて100mくらいで国道199号線に突き当たる。そこを渡ると、関門海峡に面する片上海岸だ。
片上海岸は貨物船やタグボートが接岸するので、水深が深く、漁船の船溜まりにもなっている。岸壁には数ヶ所に石段を設けて、海面まで降りられるようになっている。
妻の勘は当たった。石段から降りて、海面を棒切れで叩いている子供たちがいた!幼い娘も同じように真似ていた。
「みんな!じっとしてなさい!動いちゃダメ!」妻は子供たちの目をみながら、慎重に近づいた。
安全な距離に辿り着くと、子供たちを一人づつ岸壁に引き上げた。
妻が保護する前に、幼児が一人でも海に転落したら、悲劇の連鎖が起きていただろう。子供たちが無事に成長したことを、妻に感謝する。
家から徒歩10分くらいのところにある片上海岸をスケッチしながら、妻から聞いた、長男が幼稚園児だった頃の出来事を思い出した。
その日のちびっ子ギャング団は、5歳月組の長男たちと、その弟たち、紅一点の2歳の娘、と総勢10名から成っていた。妻がベランダから子供たちの様子を窺うと、マンションの駐車場の脇を流れる小さな水路で、隣の建具屋で拾った木切れを持って、魚釣りの真似事をしていた。
家事が一段落して、子供たちの歓声が聞こえないのに妻が気付いた。「さかなつり!さかなつり!」と騒いでいた幼児の姿が駐車場から消えていた。妻の胸に不安がよぎった。
マンションに面した国道3号線を東に少し歩いた所の交差点を左に曲がるとJR鹿児島本線の踏み切りに出る。それを越えて100mくらいで国道199号線に突き当たる。そこを渡ると、関門海峡に面する片上海岸だ。
片上海岸は貨物船やタグボートが接岸するので、水深が深く、漁船の船溜まりにもなっている。岸壁には数ヶ所に石段を設けて、海面まで降りられるようになっている。
妻の勘は当たった。石段から降りて、海面を棒切れで叩いている子供たちがいた!幼い娘も同じように真似ていた。
「みんな!じっとしてなさい!動いちゃダメ!」妻は子供たちの目をみながら、慎重に近づいた。
安全な距離に辿り着くと、子供たちを一人づつ岸壁に引き上げた。
妻が保護する前に、幼児が一人でも海に転落したら、悲劇の連鎖が起きていただろう。子供たちが無事に成長したことを、妻に感謝する。