生きるっていうこと

私の親友Ｋちゃんが自身のＨＰ「笑顔に逢えるまで」で書かれていた日記です。
ご本人の許可を得て、一部転載させていただくことにしました。


先週、何気なくテレビを見ていたら<<愛と生命と涙の全記録「余命1ヶ月の花嫁」～乳がんと闘った24歳最後のメッセージ～>>っていうのをやっていて、思わず見入ってしまいました。千恵さん、きれいだったな。とっても。彼女には世界はどんな風に見えていただろう。

「風って、きもちいいんだよ。ねぇ。知ってる？」ってカメラを覗き込む彼女がとても印象に残った。うん。多分、知ってると思うよ。死というものがとてもとても身近になった時に、世界がとても美しく優しく見えることを私は多分知ってる。卒業式を前に、ちょっと苦手だった級友ですら、愛おしく見えるように。でも、きっともっともっと激しい実感を伴って彼女は世界に包まれたろうと思う。

「このまま元気になったら、私はすごい人間になる気がする。」って言ってたとか。そうだろうね。
なんで、そう思ったときには、遅すぎるのかなぁ。
私も何度も何度も思うよ。 今、彼がいてくれたら…私はほんとにいい奥さんになれそうなのにって。 どんな事にでも笑っていられるような気がするし。 帰りがどんなに遅くなったってふてくされたりしないし。 接待で女の子がいる店に行ったって、無視したりしないし。 嫌だった専業主婦にだって、喜んでなるし。 週末のたんびに、どこか行きたいって騒がないし。 どこに転勤になったって、ついていくし。 ゴハンだって一生懸命作るし、掃除だって頑張るし。 彼のこと、大事に大事にするし。
…彼がいるこの世界を、心の底から愛せる気がするのに。


以上、彼女が書かれたものです。
なんだか、いろいろ考えさせられました。
私は、ものすごく大きな波の中にあり、
今は、千恵さんの言う「このまま元気になったら」の状態なんだろうな、と。

初めに病名を告知された時、
クリーンルームで治療している時、
薬の副作用で肺炎になった時…

何度も何度も、このまま…
っていうことを考えた。
覚悟というか、心の準備というか。

でも、微妙に違うか。
このまま、本当にダメなんだろうな、
という前提で物事考えていたのは、
初めの頃かな。

もう、白衣を着る事はできない、結婚も出来ない。
若いがん患者の、崖から転がり落ちるように悪化していくさまをいやというほど看てきた私にとって、
がん告知は、落ちていくだけのものでしかなかった。
だから、どうやって死んでいくか、
死にざまを考えるばかりの日々が続いていたっけ。

それが、意外と生き延びられる事実を知って、
じゃあ、この経験を強みにして生きるっきゃない!って思ったのかな。
そう、病気を個性として捉える、ということ。

だから、千恵さんは私よりずっとすごいと思う。
だって、もうダメだと思っている時に、
前を向いて歩く強さがあったのだから。

私は、大きな流れに乗るだけ。
便乗するだけ。
ま、それでもいいか。

とりあえず、調子が良い時は、
経験を生かして、何でもやりたいと思うし。

だからつまり、
このまま、人生上向きでいけたらいいのかな。
そして、ダメな時はダメ。
それもそれでありでしょう。
人には、寿命というものがありますし、
今を、精一杯生きるのみです。

結局良く分からないですね。

でも、一つ言えるのは気づいた時にはもう遅い
っていう事でもないのかなということ。
気付きは次に向かうステップ。
残念ながら、千恵さんの気付きを千恵さん自身が生かすことは出来なかったかもしれないけど、
千恵さんの気付きによって、次なるステップを踏む事が出来た人は沢山いると思う。
私自身もその一人。
Ｋちゃんにしてみれば、気付きを彼に還す事はできないかもしれないけど、
その事が他の何にも変えがたい事なんだけど、
それでも、Ｋちゃんだけでなく、私を含めて本当に多くの人に多くの気付きを与えたと思う。
次に繋がる、気付きを。。。

闘病という貴重な経験を生かして、
なれるであろう理想的なすごい人、には、実際は程遠い
これまで通りの普通な生活なんだけど、
それでも、大切な気付きを生かし、病気を個性として生かし、

やっぱり、今を精一杯生きることのみなんだろうな。