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「東京島」 桐野夏生

2010年05月14日 | 読書
これも「告白」同様、映画化に伴い文庫が出たので
読んでみました。

「東京島」(桐野夏生 新潮文庫)
映画は夏公開、木村多江主演です。

桐野夏生さんの本は、「OUT」しか読んだことがありません。
すごくハードでグロテスクな描写あり、
人間の恐ろしい部分、女のしたたかさをクールな筆致で描いていて
他の作品も読んでみたいけど、怖い気がしてました。

さて「東京島」は、クルーザーで世界一周旅行に出た
中年夫婦が遭難し、無人島に漂着する。
のちに、南の島での過酷なアルバイトから逃げ出してきた
日本人の若者の一団、そして中国人のグループがやってくる。
女は40過ぎの清子ただひとり・・・。
彼らはこの無人島を”東京”に見立てて暮らし始める。

この設定から、どんなことになるのか?とドキドキ。
裏切り合いとか殺し合いとか、
悲惨な死とか泥沼の”清子争奪戦”があったりするのか??
と思ったのですが、さにあらず・・・

イマドキの若者らしい無気力さとかノンキさ、
争いを好まず生き延びようとするしたたかさ
などがリアルに描かれてます。
”ホンコン”と呼ばれる中国人グループの、
サバイバル能力に長けた生命力の強さが対照的。

島の住人たちはみな、一癖も二癖もある、
一般社会に適合できなさそうなタイプ。
彼らの背景が読むうちにだんだんとわかってくるのも上手い。
そして、清子も、図太くたくましく、
したたかで計算高い嫌な女。
若くて美人な女が主人公じゃないところが面白い。

グロテスクで不快で、いい気持ちのしない描写が
多いのに、つい読んでしまうのは
こういう、自分にはありえないと思っている状況を
覗き見て楽しむワイドショー的好奇心があるからでしょうか。

ラストは、”そうくるか~。”と思いました。
人間の欲望と本質をむき出しにする無人島生活・・・
恐ろしい。絶対行きたくない。

なんか臭ってきそうな小説でしたが、
映画の方はさすがに小ぎれいな若手俳優さんが出演し
エルメス協賛だし、もっと上品でオシャレな感じに
なるんでしょうね。

木村多江さんの清子、ちょっと観てみたい気もします。
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2 コメント

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これも映画化ですか! (カオリ)
2010-05-14 11:12:17
こんにちは。これ文庫になったのは知ってましたが、映画化はしりませんでした。木村多江さんが清子とは意表をついたキャスティング。なんか、清子の図太さとか生きることへの執念みたいなものとは対局にいる女優さんというイメージなので。でもそのギャップがいいのかも。
桐野夏生の作品はほんとにヘヴィーです。直木賞を受賞した「柔らかな頬」はわりとソフト路線かもしれません。
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重い・・・ (kino)
2010-05-15 00:11:14
>カオリさん
ほんと、小説・漫画の映画化ばっかりですね。
木村多江さん=薄幸 ってイメージが強いから
本人もそれを打破したいのかもしれませんね。
それにしても・・・清子は強烈ですよね。
(原作どおりなら、ですが)
桐野さんの小説、読んでみたいけど怖い気がするのです。
いろいろ気になるのはあるんですけど。
「柔らかな頬」もずっと読みたかった本です。
気力充実した時に挑戦してみます。
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