気の広場

気の世界あれこれ・・・
  日常雑感あれこれ・・・

無線通話 ・・・ 「不在」への電話

2011-02-07 10:15:00 | Weblog
      「不在」への電話

                  川路 柳虹

  あなたとの電話は

  いつもお話中です。

  ときには雑音が多くて

  まったく聴きとれない。


  あなたのお返事を待っています。

  何とか早くこちらへ

  あなたの方からかけて下さい。


  いい返事なんかを

  待っているのではないんです。

  あなたの正体は何だと

  はっきり言って下さい。


  ああ、また雑音だ

  世界の中心で大風が吹いている

  あなたは居ないんですか?



あなたもこんな電話をかけたことがおありでしょう。

何 ない?

電話番号もわからない「不在」なんかへかけられるかって?


ではおききしますが

あなたは今日までに

  なぜ女なんかに生まれたんだろうと口惜しくて

  ・・・ 眠れなかったことはありませんか。

どうして自分だけが こんなひどい目にあわねばならんのだろうと

  ・・・ 嘆かれたことはありませんか。

神も仏もあるものかと

  ・・・ どなられたことはありませんか。


こういうときこそ 電話かけていられたのですね。

この返事は返ってこなかったでしょう。  お話中でね。



だが これこそ人間の真実の問い この問いを持って

  この答えをきくために ・・・ 生まれてきたのですね。

これは生死に関係する真剣な問いで 待ったなしでしょう。

また 他人からただ聞いた答えで 間に合わないでしょう。


どうしても自分の耳で 心の耳で

  ・・・ たしかにききとめなければなりませんね。


通話の道は ・・・ すでにあるのですよ。





* 2010.11  東ブータンで





もちの数 ・・・ 齢の功

2011-02-07 06:15:32 | Weblog
      齢の功

                筏井 嘉一

  ものごとにうとくなりつつ動ぜざる

  これをしも わが歳の功とす



若い時はちょっとしたことにおどろき

  もうこれで自分の人生も終わりかと思い

自分ほど不幸なものは世の中にあるまいと悲しみ

  自殺を決意することもあったが

どうやらこの年齢までこぎつけてみると

  感受性がにぶってきたのか

どんなことにも心おどろくことなく

  淡々としょしてゆくことができる。

一面図太くなったともいえようが

  どうやらこれも餅をたくさんたべたおかげというものであろうか

・・・ と

この人はものに動じなくなった老年の自分を肯定しているが ・・・

表むきはそうであっても その底にはどうも

  そういう自分をさびしく悲しくながめている一面が

  ・・・ 秘められているようだ。


歳の功とす と大見得を切ったところに

  かえって自嘲のひびきがありそうに思える。

本音は

・・・ 若々しい感受性の退化してきたことがなさけないのではないか。



年とって肉体の衰えてくることは

  肉体の法則ゆえやむをえないにしても

感受性だけは私たちののこころがけによって

・・・ いつまでも若々しくもつことができるのではないだろうか。





* 2010.11  東ブータンで





永遠の声

2011-02-07 05:06:05 | Weblog
      とおい耳

               榎本 栄一

  この耳は

  ふしぎな耳で

  テレビの言葉は

  聞こえにくいが

  何万光年 彼方からの

  宇宙の ささやきが

  人身受け難しと 聞こえてくる



変わった耳をおもちですな。

どこの整形外科でそんな耳とつけかえてくれるんですか。

ナニ だれ生まれつきもっているんですって。

でも わたしゃテレビの声はきこえるが

  宇宙のささやきなんてハデは声はトンときこえませんよ。

ハハァ 波長の合わせ方によりますか。

心の奥底の魂できくんですって。

こちとらの耳は

  浅い娑婆の雑音しか波長が合っていなかったっわけか。


人身受け難し なんてことは今まで聞いたことないな。

根っからの人間と思っていたから

  そんなこと疑ってもみなかったな。


そういえば私が人間に 人間の中の私に生まれついたってことは

  不思議といえば不思議だな。

「ばらの木にばらの花咲くなにごとの不思議なけれど」

  昔 北原白秋のこの詩をを読んで

  ・・・ ナニ寝言抜かしとると笑ったが

なるほどあたりまえにしとったことが 実に不思議なんだな。


人身受け難しとしみじみ全身で感じとったものだけに

  人身が与えられるんだな。



今まで娑婆の落伍者になるまいと

そればっかり気にかけて娑婆の声だけ聞いてきたが

  こりゃ宇宙のささやきがもっと大事だな。


正しい方向をもたぬ科学技術文明のケツについて

  息せきって走った挙句 人類絶滅ときてはモトもコもないぞ。


みんな気をつけて下さいな。

人身受けがだし ・・・ ですぞ。



あんたは年よりで 耳が遠いだけでなく ぼけなさって

宇宙のささやきなんていうてなさる と思ったが

  ・・・ えらい失礼いたしました。





* 2010.11  東ブータンで





決算期 ・・・ 平成元禄

2011-02-07 05:04:04 | Weblog
      試問

                川路 柳虹

  政治をよくする

  社会をよくする

  もちろん けっこう

  だがそれに何の「意味」がある


  子供が乳をはなれて

  ひとりで立ちあがる

  学校で何かを学んで

  飯を食う術(すべ)をおぼえる


  それだけなのかい? 人生は?

  いや、まだほかに

  資産とか、名誉とか、恋愛とか、

  とか、とか、

  欲望の対象はあるだろう。


  おやつをもらった子供のように

  それらをみんな預けたとして

  さて、おまえは

  何をもつのか?



この試問は紙に書いて答える というたちのものとはちがうようだ。

どうも私たちひとりひとりが身をもって

  一生かかってこたえなければならぬものらしい。


「なにをもつのか」と問うた出題者自身が

  ・・・ 答えをもっていたのだろうか。

おまえというのは 存外自分自身であったかもしれない。


この人のあげた欲望の対象は 全部自分の外なるものであって

  それの得不得は 私たちを一喜一憂させるものだ。


この人が探し求めているのは ・・・

そして 私たちすべてが外なるものに失望して

  その果てにたどりつくものは ・・・

もっと内なるもの

  ・・・ 自分自身とは何か ということではないだろうか。



外なる世界の塗り替えに狂奔している平成元禄よ。

頭を冷やして自分自身をみつめよ。

  ・・・ そんな声が聞こえてくるような気がします。



試問の答えは ・・・ 私が私に生まれてよかった ということらしい。





* 2010.11  東ブータンで





華やかな無明

2011-02-07 05:02:53 | Weblog
      原点

               宮沢 章二

  鳥が鳥である 原点

  ・・・ それは つばさを持ったこと


  魚が魚である 原点

  ・・・ それは 水中に生まれたこと


  < おれはおれの原点について

    一度でも考えてみたことがあるか ・・・ >




原点というのは

  鳥なら鳥の本質 魚なら魚をたりたたしめているもの

これをとったら鳥でない 魚でない

  ・・・ そういうものをさすのだろう。



これをとりさったら人間でなくなるもの

  サァ こんなことを私たちは考えたことがあるだろうか。


妙なわなに足がひっかかったものだ。


切実な問題だとは思わないけれど

  なんだか足にまつわりついて離れない。

ふり切ったつもりでいても

  いつの間にかへばりついている そういう問題。

切実でないといったけれど

  実は人間にとって もっとも大切な問題。

心の内面のことだから

  かすかだから「カッコいい」ことほど気にならぬ問題。



えらい大げさなことを言いだしたが 君にこたえられるのかい。


そうですね これがなかったら人間でなくなるものといえば

  ・・・ 宗教心でしょうね。

宗教じゃない。

人間でさえあればだれでもの胸の一番奥にひそんでいて

  ・・・ それゆえに忘れられている宗教心。


これから ・・・

恥を知る心

  人を傷(いた)む心

    人の苦しみに手を貸す心が流れ出てくる。


崇高な行為 尊いはたらきの源泉となる心。

この心があってはじめて 山も川も花も鳥も美しく

  人間に生まれてきてよかったと 生き甲斐を感ずるのでしょう。


生みつけられた人間が 「もう一度生まれる」 のです。


科学技術文化の混迷の中で

  ・・・ みんなが探しているのは これでしょうね。





* 2010.11  東ブータンで