アメリカ合衆国がおこりである。
アウトサイダーが胸中の鬱懐を展開するという、
それまでの世界の音楽のなかでも特異な分野である。
以下、佐野元春の胸中の世界にふれる。
とくに雨景が佐野さんの理想郷をあらわすうえで
別趣のものがあるのではないかという、
僕の勝手な思い込みを述べたい。
佐野さんの雨景には、高貴な単純さがある。
煙る雨のためにたださえ万物が瑣末さをうしなっている。
佐野さんは、さらに音を色面化することによって、
心中の雨の形象だけをうかびあがらせる。
近年の傑作に「新しい雨」という佳曲がある。
コンテンポラリーなロックンロールを基調とし、
世代間の濃淡が色彩以上の力をもって、
雨の情景を描いている。
佐野さんにも、嘆きがあると思う。
等しなみに衰えてゆくという、命の嘆きだ。
「新しい雨」は、雨が動詞になっているところがすばらしく、
動詞であればこそ流転(Rolling Stone)の轟きを感じさせる。
僕の世代、君の世代
さっきからずっと君は
ここで雨を待っている
心の弱ったときなど、
とくにこのリリックとメロディによって励ましをうける。
もちろん、元気なときもそうである。
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