2月3日から佐倉市立美術館で「フランソワ・ポンポン展」が開催されてます。ポンポン氏のあの有名なシロクマくんに会いたくて、行ってきました。
佐倉市立美術館は京成佐倉駅からバスで2つ目の停留所を降りた、ぎっしりと軒を連ねた旧市街にあります。
旧川崎銀行佐倉支店の外観を残した入り口で、このレンガの建物のスペースの奥に美術館があります。
その日は雨が降っていてバスがとても空いていて、美術館の鑑賞者も少なめで、安心してゆっくり鑑賞しました。
フランソワ・ポンポン(1855~1933年)はフランス中部ブルゴーニュ地方のソーニュで生まれ、彫刻家を目指してパリに行き、夜間の美術学校で学びながらいろんな彫刻家の下彫り職人をして修行をしたそうです。特にロダンの元で修行した時は対象の動きを形でとらえて的確に下彫りすることを学んだそうです。
最初は人物像を作っていたそうで、いくつか人物像の作品が展示されてました。
親戚の男の子《ポール像》(1884年 テラコッタ 群馬県立館林美術館) の頭像の台座には正面にPAULと刻まれ、側面にはペットのワンちゃんと馬の乗り物が刻まれてます。きっとポール君のお気に入りだったのでしょうね。
そして奥さんの《ベルト・ポンポン》(1894~1932年 石膏 群馬県立館林美術館) のリラックスした表情も素敵でした。
《コゼット》1888年 ブロンズ 群馬県立館林美術館
こちらは「レ・ミザラブル」の登場人物。小さい子が肉体労働をしている様子を表してます。この作品が評価を受けて彫刻家として認められたそうです。
後の予感を感じるのは《生まれたての鵞鳥、割れた卵》(1892年 フランス・ディジョン美術館) という作品でした。孵化した鵞鳥の雛は展示されてませんでしたが、空になった卵の殻が転がっている作品が展示されてましたが、本物そっくりの卵は大理石を彫っていて、きれいに薄い殻を作っているのです。
人物を中心とした初期作品ですが、小さな命や幼い子、そして親密な人に対するポンポンの愛情深い視線を感じました。
やがて、ポンポンは動物や鳥の彫刻をつくるようになります。
当時、動物彫刻は人物彫刻より格下に思われていたそうです。そして、動物彫刻といえば写実的で力強い作品が定番でした。
ポンポンは動物園に足しげく通い観察しデッサンや粘土で形作りを続けたそうで、次第に動物たちもなついたそうです。その中で滑らかな動物や鳥の彫刻を作り上げてゆきます。
展覧会に書かれた説明によると、
「ある朝の光のもと10メートルほど離れたところからガチョウの美しい輪郭線を発見したことが一つの啓示」であったと語ってました。
そのためか、大小沢山の作品が展示されてましたが、動物の作品と同じくらい鳥類の作品が多く展示されてました。
《ワシミミズク》 1927-1930年 ブロンズ オルセー美術館
先日テレビでオルセー美術館の特集を見て、ワシミミズクが出てきましたが、その作品がそのままここの展覧会でお会いできるなんて。静かに思索するような風情の作品でした。
《ペリカン》 1924年 ブロンズ ディジョン美術館
これは大きな作品でブロンズには緑色のまだら模様があり、くちばしの先にはほんのり金色のパティナ(色付け)がされてます。
《錦鶏(キンケイ)》 1933年 磨かれたブロンズ ディジョン美術館
本物以上にキンケイの尾をさらに長くして美しいシルエットを強調してます。
深い観察眼による鳥のリアルな姿は足元に感じました。しっかりと体を支え立っている。他の鳥類の作品も足がしっかりしてます。
一方、鳥類も動物も体のラインの美しさを強調するため体は幾分か形を整えて象徴的にしています。
ポンポン氏の故郷ソーリューで見ていた中世ロマネスク彫刻や日本の動物型の香炉などとの類縁性も指摘されているそうです。
考えてみれば19世紀末から20世紀初めにかけて、フランスのアート界ではジャポニズムが流行しましたもんね。
それから、木工職人だったお父様から「秩序と均衡を教わったと」述べているそうです。
《遊ぶ雌トラ》1922年 ブロンズ ディジョン美術館
虎は台座に三本の足を乗せ右の前足は更に前に進もうとしてます。正面から見るとしっかり虎の顔ながら可愛いお顔をしてます。この雌トラさんはきっと動物園でポンポン氏に懐いていたのではないかな
他に豹を表した作品が何点かありました。最初は生きているようなリアルさがあり、同じ形を何度も作るうちに少しずつ単純化し滑らかになっていく過程がわかりました。
《猪》1925~1929年 石膏 群馬県立館林美術館
飛んでいるように駆け足で走る猪の一瞬の姿が軽快で楽しい。最初は猪を吊るしたそうですが、階段状の台座に乗せることを思いついたそうです。
そしてポンポン67歳で制作されたこの作品が大評判になり、動物彫刻科として名を馳せます。
《シロクマ》 1923-1933年 大理石 群馬県立館林美術館
ニュッと伸びた太い首と頭が前を進もうと探りながら歩いているシロクマらしい姿。シロクマはオルセー美術館などで展示されている大きな作品もありますが、今回お会いしたのは小型犬くらいの大きさの作品です。同じ作品で陶器と合金と大理石で作られた三種類のシロクマが展示されてました。材料が違うと雰囲気が少しずつ違っていましたが、なんといっても大理石で作られたシロクマが色合いと言い、滑らかだけど光を照り返さず一番生きている雰囲気を持ってました。
そして正面から見ると、お顔が可愛いのです
にこっ♪
ポンポンの彫刻作品は当時フランスで流行したアールデコとも相性が良く、家具の飾りにもなったそうです。
ポンポン氏の彫像や写真を見ると、もっふもふとしたお髭の優しい面持ちでした。
ご夫婦とペットのネネットとニコラと暮していたそうで、その彫像も展示されてました。
《ネネット》1929年 ブロンズ ディジョン美術館
《鳩「ニコラ」》 1926-1927年 石膏 群馬県立館林美術館
展覧会にニコラちゃんを手に乗せている写真がありました。
あと、配管のような丸い穴に鳩が休んでいる彫刻がありました。
《巣の雌鳩》1828年 ブロンズ フランソワ・ポンポン美術館
鳩は休むとき、こんなにぺしゃんこな姿になるのかと驚きました。
先立たれた奥様のお墓にはコンドルの像を飾ったそうですが、その石膏像も展示されてました。
フランスでポンポンの作品は野外でも何点か設置されているそうです。故郷ソーリューでは「フランソワ・ポンポン美術館」が出来て「大雄牛」の像が設置されてます。氏が通った美術学校のあったディジョンではディジョン美術館にポンポン作品がコレクションされ、公園に大きなシロクマが設置され、2017年に地元の住民を中心に「クマ友の会」が結成されたそうです。そのネーミングが洒落ていますね♪
佐倉市立美術館では、津田信夫(1875~1946年)の金工作品も展示されてました。滑らかでシンプルな姿ながら動物の動きを感じる作品にポンポン作品とのつながりを感じました。
いずれの作品も固い石や金属や石膏などでできている動物に柔らかな弾力を感じて、見ていてホッとする和やかさを感じました。会場では小さなお子さんを連れて見に来てるご家族を何組か見かけましたが、この作品なら楽しめたのではないかな。可愛い声が作品ととても良く呼応してました。
そうなんです。石や石膏や金属でできている作品なのに、親しみやすい姿をしていて、不思議と柔らかさや温もりを感じました。
他方その姿は研ぎ澄まされたシルエットで形作っていて、
だからポンポン作品は子供から大人までそれぞれ楽しめる作品ですね♪
シロクマはほんと可愛いですよ(≧▽≦)。普段は群馬県立館林美術館に住んでいる(展示されているともいう)そうなので、お会いする機会が今後もありそうです(^_-)-☆
なかなか彫刻を見に行く機会が無いのですが、今度見に行こうと思いました