もう1か月前になりますが、2月22日に浮世絵に興味がある長男と一緒に江戸東京博物館へ見に行きました。
土曜日だったのでかなり混雑しているので、人の間を潜り抜け次々に見ました。
そんな見方がもったいないほど、展示作品は充実してました。世界中から浮世絵の名品を集め、総数は439点!。ほとんどが紙製の作品なので東京の展示では8期に分けて展示を少しずつ変え、私が見た7期目で実際鑑賞できた作品は138点でした。浮世絵の夜明けから明治の作品まで体系的に網羅されています。
パンフレットから自分なりに気になった作品の写真を載せたいと思います。(なので絵がゆがんで写っていることをご了承ください<m(__)m>)
まず第一章浮世絵前夜
江戸時代初期で肉筆画で着飾った遊女が数人でくつろぐ屏風絵が最初に展示されてました。
「婦女遊楽図屏風」
面長で顎がしっかりしたお顔は岩佐又兵衛の描く人物画の影響を濃くうけているということです。
そしてすらりとたつ美人画、舞を舞う女性の肉筆画もありました。彼女たちは、やはり遊女もしくは妓女だったのでしょうか。
そして第二章浮世絵のあけぼの
白黒の木版画の浮世絵が出始め、それからその木版画に着彩した絵が現れました
「衝立のかげ」菱川師宣
着彩の後、白黒の上にさらに紅の木版を重ねた紅擦絵に発展。
一方肉筆画も繊細でした。この展覧会のなかでも目玉だった「見返り美人図」(菱川師宣)は展示期間が終わり見れませんでしたが、他の作品も美しかったです。
「蚊帳美人図」宮川長春
ピントが甘くてすみません(+_+)。でも蚊帳の繊細な表現が素晴らしい。
第三章錦絵の誕生
多色刷り木版画が現れ、絵が華やかになり、歌舞伎や相撲絵が楽しく、そして美人画の女性は清楚な風情でした。
この章のなかで人だかりができてみんな魅入っていたのはこの絵でした
「雪中相合傘」鈴木春信
女の人の白い着物には色は着けてませんが型押しして模様が浮き上がってました。
まだ幼い顔立ちに見える男女は道行きをしているそうです。何が二人の恋の障害となったのでしょう。
ロミオとジュリエットのようだなと感じました。
他におもしろいなと思った浮世絵はこちら
「楽屋の五代目市川団十郎」勝川春草
舞台姿のままキセルをふかしながら劇の打ち合わせをしている、うちとけた様子と恰好のギャップがユーモラス♪
こういう舞台裏物も町の人に人気があったのですね。
第四章浮世絵の黄金期
何と言っても喜多川歌麿と東洲斎写楽の絵が圧倒的な存在感を持ってました。
歌麿の描く美人さんは肉筆画も版画も色っぽく艶やかでした。その中で印象が強かったのは上半身を大きく描いた「大首絵」の中の
「北国五色墨 てっぽう」喜多川歌麿
おそらく幼いころに苦界に入り、一時は遊女のランクも上だったでしょうが長い時を経て今は最下層の身となる。その表情に開き直りと一筋の気概と達観を感じ心に残ります。ロートレックの描く娼婦の姿と重なりました。
浮世絵には遊女が多く表れます。一般の女性が世間の面に出ることはまずない時代。それは19世紀のフランスともつながる気がしました。
この時代、彼女らは文化の中心でもあり、女性が自分の力で貧しい生活から脱出できるほぼ唯一の職業でもあったので、私が感じる苦界の印象と実際は違うのかもしれません。それでも胸に突き刺さります。歌麿はその生き様に感嘆しているのか、突き放した目線でいるのか、私にはわからないですが。
その歌麿の観察眼が光る狂歌画集
「画本虫撰(がほんむしえらみ)」
写楽の役者絵の表情は緊張感とユーモアがうまく混ざり迫力がありました。
「3代目市川高麗蔵の志賀大七」東洲斎写楽
わずか10か月の活動期間、それも前半の作品だけが精彩を放つ傑作をものにしている画家。
確かに他の作者の役者絵と存在感が明らかに違います。写楽本人の後期の作品すらも緊張感が薄れてしまってます。その研ぎ澄まされたセンスが奇跡的です。
この絵も白黒と色の配分、ポーズ、表情、どれをとってもこれ以外は考えられない絶妙さ。エキセントリックな表情だけど変顔になる直前で寸止めされて緊張感が走ってます。
第五章さらなる展開
江戸時代の遊女ではやった化粧法を知りました
「青楼美人合 扇屋内 華まど 花そめ」菊川英山
写真がぼけててちょっとみづらいですが、下唇に紅を入れるとき、紅の間に一筋の緑色を塗って玉虫色に見せた「笹色紅」です。妖艶な色気を感じる唇になってます。
そして葛飾北斎の作品群が現れます。肉筆画や北斎漫画も素晴らしかったですが、この作品がやっぱり良かったです♪
「富嶽三十六景 凱風快晴」葛飾北斎
会期によっていくつかのパターンの同作品が展示されたそうですが、作品によっては赤富士と裾野の緑がくっきり分かれて分断された感じにみえてしまうものもあるのだけど、私が見た作品は赤富士と裾野の緑の境界が微妙に混じり綺麗な緑色をなしてとても素敵でした。
歌川広重の風景画も楽しかったです。
その中で長男がいいなと思ったという作品を
「甲陽猿橋之図」歌川広重
橋の下にぽっかりと月が描かれているのが面白いと思ったそうです。ん、月?。確かに太陽ではありませんね。山のてっぺんが暗くなり始めている。日が入り、反対側にうっすらと月が見え始める微妙な時刻の風景を表現しているようです。
それから歌川国芳の作品。
怪奇な絵や人の顔を小さな人物で埋め尽くしたユーモラスかつちょっと不気味な絵も面白かったです。私が気に入ったのはやはり猫の絵。
東海道の街を猫のダジャレで著した絵が可愛らしくユーモアがあってとても良かったです。
「其のまゝ地口猫飼好五十三疋」歌川国芳
「東海道」ならぬ「猫飼好(ねこかいこう)」そして「五十三次」ならぬ「五十三疋(ごじゅうさんひき)」(´艸`*)
猫好きにはたまらない絵です♪
西洋の文明がはいり、江戸時代が終わり、画題も洋風の建物などが出てきました。
第6章新たなるステージへ
世間を騒がせた事件を浮世絵で説明したものは、凄惨なシーンを再現していました。大概犠牲者が女性なのが気になりました。また、無残絵も凄惨な美しさを持ってましたが、私にはつらいものでした。
その後、西洋画なのか、浮世絵なのか区別が難しい作品がありました。
「鉄砲打猟師」小林清親
一方美人画の系譜を継承した作品も
「髪梳ける女」橋口五葉
写楽の役者絵の系譜の作品もありました。
「7代目松本幸四郎の関守関兵衛」山村耕花
歌舞伎の舞台上での一瞬の表情を描いた絵です。が、口の形がありえないぐらい歪んで変顔になってます。
そして歌川広重から続く風景画の系譜にも詩情があってしみじみと美しい作品がありました。
「上州法師温泉」川瀬巴水
気持ちよさげに湯に浸かっているのは巴水氏本人だそうです。
暖かい湯気が日の光を反射して白く光ってます。窓の外からの爽やかな風も感じます。
この作品でもってこの展覧会が締めくくられていました。
膨大な作品を一堂に介し浮世絵の楽しさ、面白さ、素晴らしさを堪能できた展覧会でした。企画、実現された方々の気迫と強い想いも感じいりました。
現在は名古屋市博物館で開催され、5月には山口県立美術館でこの展覧会が開かれるそうです。
きっと大勢の鑑賞者が堪能されていますね☆
土曜日だったのでかなり混雑しているので、人の間を潜り抜け次々に見ました。
そんな見方がもったいないほど、展示作品は充実してました。世界中から浮世絵の名品を集め、総数は439点!。ほとんどが紙製の作品なので東京の展示では8期に分けて展示を少しずつ変え、私が見た7期目で実際鑑賞できた作品は138点でした。浮世絵の夜明けから明治の作品まで体系的に網羅されています。
パンフレットから自分なりに気になった作品の写真を載せたいと思います。(なので絵がゆがんで写っていることをご了承ください<m(__)m>)
まず第一章浮世絵前夜
江戸時代初期で肉筆画で着飾った遊女が数人でくつろぐ屏風絵が最初に展示されてました。
「婦女遊楽図屏風」
面長で顎がしっかりしたお顔は岩佐又兵衛の描く人物画の影響を濃くうけているということです。
そしてすらりとたつ美人画、舞を舞う女性の肉筆画もありました。彼女たちは、やはり遊女もしくは妓女だったのでしょうか。
そして第二章浮世絵のあけぼの
白黒の木版画の浮世絵が出始め、それからその木版画に着彩した絵が現れました
「衝立のかげ」菱川師宣
着彩の後、白黒の上にさらに紅の木版を重ねた紅擦絵に発展。
一方肉筆画も繊細でした。この展覧会のなかでも目玉だった「見返り美人図」(菱川師宣)は展示期間が終わり見れませんでしたが、他の作品も美しかったです。
「蚊帳美人図」宮川長春
ピントが甘くてすみません(+_+)。でも蚊帳の繊細な表現が素晴らしい。
第三章錦絵の誕生
多色刷り木版画が現れ、絵が華やかになり、歌舞伎や相撲絵が楽しく、そして美人画の女性は清楚な風情でした。
この章のなかで人だかりができてみんな魅入っていたのはこの絵でした
「雪中相合傘」鈴木春信
女の人の白い着物には色は着けてませんが型押しして模様が浮き上がってました。
まだ幼い顔立ちに見える男女は道行きをしているそうです。何が二人の恋の障害となったのでしょう。
ロミオとジュリエットのようだなと感じました。
他におもしろいなと思った浮世絵はこちら
「楽屋の五代目市川団十郎」勝川春草
舞台姿のままキセルをふかしながら劇の打ち合わせをしている、うちとけた様子と恰好のギャップがユーモラス♪
こういう舞台裏物も町の人に人気があったのですね。
第四章浮世絵の黄金期
何と言っても喜多川歌麿と東洲斎写楽の絵が圧倒的な存在感を持ってました。
歌麿の描く美人さんは肉筆画も版画も色っぽく艶やかでした。その中で印象が強かったのは上半身を大きく描いた「大首絵」の中の
「北国五色墨 てっぽう」喜多川歌麿
おそらく幼いころに苦界に入り、一時は遊女のランクも上だったでしょうが長い時を経て今は最下層の身となる。その表情に開き直りと一筋の気概と達観を感じ心に残ります。ロートレックの描く娼婦の姿と重なりました。
浮世絵には遊女が多く表れます。一般の女性が世間の面に出ることはまずない時代。それは19世紀のフランスともつながる気がしました。
この時代、彼女らは文化の中心でもあり、女性が自分の力で貧しい生活から脱出できるほぼ唯一の職業でもあったので、私が感じる苦界の印象と実際は違うのかもしれません。それでも胸に突き刺さります。歌麿はその生き様に感嘆しているのか、突き放した目線でいるのか、私にはわからないですが。
その歌麿の観察眼が光る狂歌画集
「画本虫撰(がほんむしえらみ)」
写楽の役者絵の表情は緊張感とユーモアがうまく混ざり迫力がありました。
「3代目市川高麗蔵の志賀大七」東洲斎写楽
わずか10か月の活動期間、それも前半の作品だけが精彩を放つ傑作をものにしている画家。
確かに他の作者の役者絵と存在感が明らかに違います。写楽本人の後期の作品すらも緊張感が薄れてしまってます。その研ぎ澄まされたセンスが奇跡的です。
この絵も白黒と色の配分、ポーズ、表情、どれをとってもこれ以外は考えられない絶妙さ。エキセントリックな表情だけど変顔になる直前で寸止めされて緊張感が走ってます。
第五章さらなる展開
江戸時代の遊女ではやった化粧法を知りました
「青楼美人合 扇屋内 華まど 花そめ」菊川英山
写真がぼけててちょっとみづらいですが、下唇に紅を入れるとき、紅の間に一筋の緑色を塗って玉虫色に見せた「笹色紅」です。妖艶な色気を感じる唇になってます。
そして葛飾北斎の作品群が現れます。肉筆画や北斎漫画も素晴らしかったですが、この作品がやっぱり良かったです♪
「富嶽三十六景 凱風快晴」葛飾北斎
会期によっていくつかのパターンの同作品が展示されたそうですが、作品によっては赤富士と裾野の緑がくっきり分かれて分断された感じにみえてしまうものもあるのだけど、私が見た作品は赤富士と裾野の緑の境界が微妙に混じり綺麗な緑色をなしてとても素敵でした。
歌川広重の風景画も楽しかったです。
その中で長男がいいなと思ったという作品を
「甲陽猿橋之図」歌川広重
橋の下にぽっかりと月が描かれているのが面白いと思ったそうです。ん、月?。確かに太陽ではありませんね。山のてっぺんが暗くなり始めている。日が入り、反対側にうっすらと月が見え始める微妙な時刻の風景を表現しているようです。
それから歌川国芳の作品。
怪奇な絵や人の顔を小さな人物で埋め尽くしたユーモラスかつちょっと不気味な絵も面白かったです。私が気に入ったのはやはり猫の絵。
東海道の街を猫のダジャレで著した絵が可愛らしくユーモアがあってとても良かったです。
「其のまゝ地口猫飼好五十三疋」歌川国芳
「東海道」ならぬ「猫飼好(ねこかいこう)」そして「五十三次」ならぬ「五十三疋(ごじゅうさんひき)」(´艸`*)
猫好きにはたまらない絵です♪
西洋の文明がはいり、江戸時代が終わり、画題も洋風の建物などが出てきました。
第6章新たなるステージへ
世間を騒がせた事件を浮世絵で説明したものは、凄惨なシーンを再現していました。大概犠牲者が女性なのが気になりました。また、無残絵も凄惨な美しさを持ってましたが、私にはつらいものでした。
その後、西洋画なのか、浮世絵なのか区別が難しい作品がありました。
「鉄砲打猟師」小林清親
一方美人画の系譜を継承した作品も
「髪梳ける女」橋口五葉
写楽の役者絵の系譜の作品もありました。
「7代目松本幸四郎の関守関兵衛」山村耕花
歌舞伎の舞台上での一瞬の表情を描いた絵です。が、口の形がありえないぐらい歪んで変顔になってます。
そして歌川広重から続く風景画の系譜にも詩情があってしみじみと美しい作品がありました。
「上州法師温泉」川瀬巴水
気持ちよさげに湯に浸かっているのは巴水氏本人だそうです。
暖かい湯気が日の光を反射して白く光ってます。窓の外からの爽やかな風も感じます。
この作品でもってこの展覧会が締めくくられていました。
膨大な作品を一堂に介し浮世絵の楽しさ、面白さ、素晴らしさを堪能できた展覧会でした。企画、実現された方々の気迫と強い想いも感じいりました。
現在は名古屋市博物館で開催され、5月には山口県立美術館でこの展覧会が開かれるそうです。
きっと大勢の鑑賞者が堪能されていますね☆