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異次元の少子化対策って新「産めよ殖やせよ」なのか~岸田総理年頭記者会見~

2023-01-10 | 小日向白朗学会 情報

2023年1月4日岸田総理の年頭記者会見のなかで、こんなお話が出ている。
   ・・・・・先ほど私は伊勢神宮に参拝し、国民の皆さんにとって今年が
   すばらしい1年になるよう、また、日本、そして世界の平和と繁栄をお
   祈りしてまいりました。 今年の干支(えと)は、「癸(みずのと)卯
  (う)」です。「癸卯」の「癸」は、十干の最後に当たり、一つの物事が
   収まり、次の物事へ移行する段階を、そして「卯」は、「茂(しげ 
   る)」を意味し、繁殖する、増えることを示すと言われています。この
   両方を備えた「癸卯」は、去年までの様々なことに区切りがつき、次の
   繁栄や成長につながっていくという意味があると言います。 私は、本
   年を昨年の様々な出来事に思いをはせながらも、新たな挑戦をする1年
   にしたいと思います。・・・・・
素晴らしいことではないか。「繁殖、増える」…というキーワードを示したうえで新しい挑戦をするというのだ。「新しい」って、いったい何をする気なのか、この先のお話を聞いてみよう。
   ・・・・・急速に安全保障環境が厳しさを増す中で、国民の命や暮らし
    を守るために待ったなしの課題である、防衛力の抜本的強化、エネル
    ギーの安定供給のためにも、多様なエネルギー源を確保するためのエ
    ネルギー政策の転換とGX(グリーン・トランスフォーメーション)
    の実行、さらには、日本における第二の創業期を実現するためのスタ
    ートアップ育成5か年計画、資産所得倍増に向け、長年の課題であっ
    たNISA(少額投資非課税制度)の恒久化など、先送りの許されな
    い課題でした。昨年に引き続き、本年も覚悟を持って、先送りできな
    い問題への挑戦を続けてまいります。 特に、2つの課題、第1に、
    日本経済の長年の課題に終止符を打ち、新しい好循環の基盤を起動す
    る。第2に、異次元の少子化対策に挑戦する。・・・・・
ということです。防衛力強化と少子化対策、いいですね。「抜本的」とか「異次元」とかフォルテッシモマーク入りですし本当に力を入れるのだと思います。関係なさそうで実はかなり密接に関係しているこの二つの言葉「防衛力」「少子化」、キーワードとして胸にとどめておこう。年頭にきちんと表明しているのはそれなりの心づもりがあるからでしょう。それについて岸田首相はさらに言葉を重ねています。
    ・・・・・権威主義、国家資本主義的な国々と、自由主義、資本主義
     を掲げる我々民主主義国家との対立を深刻化させていま
     す。・・・・・
ということが防衛力強化を進める理由ということらしい。このステロタイプな言葉遣いについてはすでに主要マスコミがこぞって繰り返し使用しながら報道しているので耳にタコができているくらいである。これは一般消費者にある方向性を持ったイメージを定着させるための広告業界の常識的手法らしい。この言葉、つまり、権威主義、とか、自由主義とか、こんなタームをタグづけすることによって消費者の思考を停止させてしまう手法である。その証拠に、あなたは権威主義、国家資本主義という言葉でどこの国を思い浮かべただろうか。自由主義という言葉でどこの国を連想しただろうか。そして、それが対立しているということらしいが、…実は昨今の多様性華やかな時代に世界はそんな単純な二元論では語れないのだけれど、…まあ、この点については別の機会に譲るとして。さらに次のように話されている。
     ・・・・・今年のもう一つの大きな挑戦は少子化対策です。昨年の
     出生数は80万人を割り込みました。少子化の問題はこれ以上放置
     できない、待ったなしの課題です。経済の面から見ても、少子化で
     縮小する日本には投資できない、そうした声を払拭しなければなり
     ません。こどもファーストの経済社会をつくり上げ、出生率を反転
     させなければなりません。本年4月に発足するこども家庭庁の下
     で、今の社会において必要とされるこども政策を体系的に取りまと
     めた上で、6月の骨太方針までに将来的なこども予算倍増に向けた
     大枠を提示していきます。 しかし、こども家庭庁の発足まで議論
     の開始を待つことはできません。この後、小倉こども政策担当大臣
     に対し、こども政策の強化について取りまとめるよう指示いたしま
     す。対策の基本的な方向性は3つです。第1に、児童手当を中心に
     経済的支援を強化することです。第2に、学童保育や病児保育を含
     め、幼児教育や保育サービスの量・質両面からの強化を進めるとと
     もに、伴走型支援、産後ケア、一時預かりなど、全ての子育て家庭
     を対象としたサービスの拡充を進めます。そして第3に、働き方改
     革の推進とそれを支える制度の充実です。女性の就労は確実に増加
     しました。しかし、女性の正規雇用におけるL字カーブは是正され
     ておらず、その修正が不可欠です。その際、育児休業制度の強化も
     検討しなければなりません。小倉大臣の下、異次元の少子化対策に
     挑戦し、若い世代からようやく政府が本気になったと思っていただ
     ける構造を実現するべく、大胆に検討を進めてもらいます。・・・
ということで、かなりの熱の入れようである。なぜこんなに一生懸命に少子化対策を打ち出したのか、その理由につながるのが、昨年12月16日に閣議決定した防衛強化三文書(国家安全保障戦略、国家防衛戦略、防衛力整備計画)である、という仕掛けであろう。いままでこつこつと自民党応援団の統一教会が国内各地方で市議等に働きかけて地道な活動を展開し「家庭」の大切さを切々と訴え続けてきたこと、せっかく「こども家庭庁」と「家庭」という文字まで役所名に組み込んで「家庭」を国家戦略の一つに組み込んできたこと、等々の成果も十分出てきていると踏んでいるのかもしれない。
     ・・・・・本年、再び我が国はG7議長国を務め、5月にはサミッ
     トを開催します。今年の開催地は広島です。ロシアのウクライナ侵
     略という暴挙(注②)によって国際秩序が大きく揺らぐ中で、自由、
     民主主義、人権、法の支配(注①)といった普遍的価値(注①)を守り
     抜くため、そうしたG7の結束はもとより、G7と世界の連帯を示
     していかなければなりません。同時に、対立や分断が顕在化する国
     際社会をいま一度結束させるために、グローバルサウスとの関係を
     一層強化し、世界の食料危機やエネルギー危機に効果的に対応して
     いくことが求められます。・・・・・そして、ロシアの言動により
     核兵器をめぐる深刻な懸念が高まる中、被爆地広島から世界に向け
     て、核兵器のない世界の実現に向けた力強いメッセージを発信して
     まいります。こうした考えの下、まずは、諸般の事情が許せば、1
     月9日からフランス、イタリア、英国、カナダ、そして米国を訪問
     し、胸襟を開いた議論を行う予定です。・・・・・ このうち、米
     国バイデン大統領との会談は、G7議長としての腹合わせ以上の意
     味を持った大変重要な会談になると考えています。我が国は年末に
     安全保障政策の基軸たる3文書の全面的な改定を行いました。そし
     て、それを形あるものにする防衛力の抜本的強化の具体策を示しま
     した。これを踏まえ、日本外交、安全保障の基軸である日米同盟の
     一層の強化を内外に示すとともに、自由で開かれたインド太平洋の
     実現に向けた更に踏み込んだ緊密な連携を改めて確認したいと思い
     ます。
   注記①ウィキペディアによると、英連邦加盟国は民主主義・人権・法の
   支配といった共通の価値観でつながっているそうである。さらに、加盟
   国を「自由で平等」なものとして確立したとも記されており、このまさ
   にステロタイプな語列は岸田総理の言葉ではなく、イギリス連邦からの
   借用である。つまり、普遍的価値と続けてはいるものの、別に普遍的で
   はなく、あえて言えば「イギリス的」ということである。「イギリス的
   価値を守り抜くためG7と世界との連帯を…」と読むと真実を理解しや
   すくなる。
なぜ防衛力を強化する必要があるのかがくっきりと示されている。ロシアのウクライナ侵攻(注②)によって国際秩序が揺らいでしまったので、G7諸国と協力してこの揺らぎをもとに戻す必要がある。そのためには、日本も防衛力を強化しなければならないということなのだろう。けれど、日本国憲法で国際紛争を解決する手段としての戦争は放棄されているのであり、もし、上記に具体的に示されている国々、フランス、イタリア、英国、カナダ、そしてアメリカなどともにロシアを武力で退治するということはできない相談なのである。なら、どうしょうか。そこで出てくるのが「改憲」だ。NATOオブザーバー参加国(parliamentary observer nations)としてのスタンスを確立して、❝アメリカ組❞に認められるためにも改憲して戦争のできる国にしなければならない。昔からの念願なのだ。では戦争のできる国とは何なのか。改憲については、着々と準備を進めており、統一教会系自民議員がのきなみ落選したとしても、さらに政教分離の認識が多少とも深まったりで公明が沈んだとしても、すでに維新、国民民主などの改憲サポートチームとの連立によって3分の2は確保できる、つまり改憲可能と踏んでいるのだろう。維新の躍進、さらに東進攻勢は自信を深める根拠にもなっているのではないだろうか。あえて言えば、自民主体でなく維新主体の与党でも構いはしない、というくらいの覚悟はできていると思う。18歳で選挙参加できるようにし、さらに野党がぼろぼろの今こそ解散総選挙、といった方法論をとればまず戦争禁止をうたう憲法は外されると踏むのもわかる気がする。でもそれだけでオッケー、というわけではない。同時進行的に進めているのが、予算確保して防衛3文書を実現するということだ。そうしておいてこれまた同時進行的に、人的資源の確保をはかなければならないわけである。つまり現状の自衛隊の人的規模では到底戦争は不可能だ。防衛省によれば、現在自衛隊の定員は247,154人、現隊員は230,754人にとどまる。人口6775万人のフランスでさえ31万人の軍人を抱えているのである。人口比で言えば60万くらいは欲しいところと踏むだろう。そのくらいのレベルにはもっていかなければ、という問題意識があるであろうことは容易に想像できる。それが「異次元の少子化対策」の意味だろう。でも今からって。十分だ。小池都知事が一人毎月5000円給付、などというわかりやすい政策を打ち出しているし、これに追随する自治体も出てくるだろう。18歳にもなれば十分に戦闘要員になることができる。ゼレンスキーがロシアの侵攻を受けたとたんに18から60歳までの男子の出国を禁止、消耗品としての兵力確保策に出たことも参考にしたかもしれない。戦争には「人」が要るのである。もちろん戦争で死んでくれる「人」である。ガバメント・イシュー、GIさんがたくさん必要なのだ。そのために以前から竹中=パソナラインの徹底で非正規社員溢れる国家にしたし、若者が希望持てる国ではない中で「国防」こそが若者の新しい「夢」として復活する、と読んでいるのではないか。これから5,000円給付と並んで10代向けの国防プロパガンダが増えてくるような予感がするが、悪い初夢か。
   注記②「ロシアのウクライナ侵攻」によって国際秩序が揺らいでしまっ
   た…とあり、すべての始まりはロシアの侵攻にあるとしている点がほか
   の主要マスコミの報道にも見られており、これも耳にタコができるくら
   い、私たちに刷り込まれている。単純に言っても今回の侵攻については
   ソ連崩壊1992年か、少なくとも2004年オレンジ革命まで、あるいはど
   んなに短くとも2014年マイダン革命までさかのぼらないと真実は全く
   見えない。台湾有事にしても少なくとも1972年上海コミュニケくらい
   までは遡らないと見えてこないのと同じである。
 いまから82年前1941年(昭和16年)1月22日、当時の近衛文麿内閣は「人口政策確立要綱」を閣議決定している。このなかには「一家庭に平均5児を 一億目指し大和民族の進軍」と記されているそうである。
 当時の人口は7350万人、これを1億にまで産めよ殖やせよ、と煽ったのである。目的は兵力・労働力の増強である。さらに当時の朝日新聞には「従来の西欧文明にむしばまれた個人主義、自由主義の都会的性格がいけないのだ」「自己本位の生活を中心にし、子宝の多いことを避ける都会人の多いことは全く遺憾至極である」、「結婚年齢を10年間で3年早め、引き下げる。男子25歳、女子21歳に引き下げる」、「平均5児以上をもうける」、「(昭和35年には)1億人人口を確保する」などとあり、加えて、多子家庭の優遇策や多産家庭の表彰、無子家庭や独身者には課税、などがみられるという。昨今では、2016年5月の「ニッポン1億総活躍プラン」のなかで出生率1.8%を目指す、といった感じでレベルは大きく下回ってはいるものの、発想は全く同一といってよいだろう。
 これより4年前の1937年(昭和12年)に日中戦争が本格化、物資、資金、労働力などを軍需最優先とする国家総動員政策と並行して国民精神総動員運動を推進し同年8月に「国民精神総動員実施要綱」を決定しているが、人口増を狙う近衛の政策はこれらを前提としているものと言える。
 国家が「家庭」を戦略の一環に組み込んでしまうととんでもないことになるということは歴史が証明している。団塊の世代現象が起きたのは「もう戦争がない」という安心感があって出てきたものである。安心してこどもを育てることができ人としての幸せを追求できると誰もが思ったからである。旧統一教会が「幸せな家庭生活のために」…などというのはまあ良いとしても、何ら「安心感」のないところで、国家の力で兵力・労働力確保のために新しい産めよ殖やせよ戦略を実行推進させてしまうと、8月15日の再来も単なる悪夢ではないことになるやもしれない。
(文責:吉田)
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