食道がんと闘う自然爺の活動

自然の中での暮らしに憧れ、自作の山小屋を起点に自然と戯れていたが、平成21年10月、食道・胃がんが見つかり手術。

『回顧録、心臓カテーテル』

2013年01月15日 17時36分37秒 | 回顧録

これまでの検査のための通院は先生のお達しのあった『奥さんと一緒に・・・』の時を

除き一人で出掛けていたが心臓カテーテルは『同伴者』を求められており妻と出掛

けた。検査の途中に何が起こるか分からないことの証明ではなかろうか。私に限って

癌にならないはずが2つの癌を持ってしまったことからすれば、心臓カテーテルで何

万人、何百万人に一人であろうが『死神』を伴侶にする可能性が私であっても不思議

ではない。癌の本格治療を開始する前に死神と束の間のアバンチュールでは犬死に

等しい。2階の心臓カテーテル検査の受付に行くと控室に案内され、検査後はここで

2時間余り安静にして異常がなければ帰宅を許される。丁度、昼食時にかかるから昼

食の弁当を注文するか否かを聞かれ、どうせ拘束されるからと弁当を注文した。控室

で待っていると先客が検査を終えたらしく奥さんと思われる人に支えられながらヨタヨ

タと帰ってきた。『うーん中々、難敵らしいな検査後はあんな風に弱って帰ってくること

になるのか? 』しかも、カーテン越しのお隣さん、見えなくても何となく様子が分かる。

大変なことになるかもしれないが今更、ジタバタしても妙手があるはずはなし、もうどう

にでもなれと開き直るしかなくなった。悶々としながら暫く待っていると声がかかり、い

よいよ戦闘開始である。

部屋に連れられて行くと見慣れない仰々しい機械があり、検査用衣服に着替えるとす

ぐに診療台に乗せられ手首の血管からカテーテルが入れられていく。心臓の専門家

だから私の心臓がバクバクしており不安がっているのを手に取るように把握しており

『緊張しないで楽にして下さいね』とお酒のことできついお言葉を頂いた女医さんは優

しい女神に変身。手首からのカテーテルは血管の中を動いて感覚は何となく分かるも

のの、今この辺りにいるなんてことは分からなかった。『造影剤を入れるので身体が少

し熱くなります』の声と同時に、体がカーッと熱くなり少し動悸を打つのが分かった。こ

の辺りでは未だ余裕はなく次に何が起こるのか、不安はあったが徐々に様子が分か

り、肉体的な苦痛は伴わないことから『これは、精神的な不安に押しつぶされそうにな

っているようだ』と分析できるようになってきた。その後も何かの機会を捉えては『気分

如何ですか』とアスキングがある度に『特にないです』

と答える内に、『これなら多分、このままじっとしていれば楽勝かも・・・』少し余裕が出

て目を斜めにしてディスプレーを見ると血管の中をグニュグニュとカテーテルが動い

ていた。

『ははーん、カテーテルがこの細い血管を傷つけたり、運が悪いと心臓にグサリ』

本当は心臓に刺さるはずなどないであろうから、今までは取越し苦労だったと言うこ

とにして、リラックスしていくことに切り替えができた。時間は30分くらいだったと思うが

正確なものを覚えていない。検査終了の声を受けて、ソソクサとその逃げ足の速いこ

と。検査以前と何にも変わらないからルンルンで部屋に戻るが、椅子に座って静かに

しているなんてことが苦行だから、部屋の外に貼ってあるお知らせや説明文などを見

に行ったり、他の部屋の様子を見に行ったりしていた。

お隣さんの付き添いの方が『お宅は元気そうで羨ましいです。うちのは定期的に検査

を受けているのですが、いつも気分が悪くなるんですよ』と声をかけられた。同じ検査

を受けたのにこちらは馬鹿みたいに元気、お隣さんは検査で虐められベッドで横にな

っておられる。そして、頼んでいた弁当を食べることになるが先ほどの元気は少しトー

ンダウンし、静かにゆっくりと食す。

検査からの解放はまるで癌が完治したかのような錯覚を覚えるほど嬉しく、心の中にあ

った何かの呪縛から解き放たれたようでもあった。何はともあれ天王山を越え、これか

らは治療のための闘いが始まる。

 

 


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