食道がんと闘う自然爺の活動

自然の中での暮らしに憧れ、自作の山小屋を起点に自然と戯れていたが、平成21年10月、食道・胃がんが見つかり手術。

『回顧録、手術前日』

2013年01月21日 18時27分25秒 | 回顧録

それから1週間後の10月7日、手術のために入院。

麻酔担当の女医さんが来られ、麻酔に関する説明と同意書を求められた。私が所

属するのは消化器外科で看護師さんの制服は薄いブルーのものだが、麻酔科の

先生は小豆に近い色の制服でこの場で見ると明らかによそ者だ。麻酔をかける手

順について説明されたが私の最大の関心事は酒と麻酔の効き目の関係で、その質

問に一番詳しい先生を前にしているのだから聞けばいいのに、あまりにも幼稚なこ

と故、終いまで言い出せなかった。

ポイントはうつ伏せになりエビ状で脊椎にする注射、あとはじっとしているだけで済む。

麻酔の事故などのリスクについての説明もあったが、それはないとして、手術を無事

終えたら覚めるようにしてもらえれば何も言うことはない。

もうじき手術だから説明以外、何もないだろうと安心し切っていたところ、前日に『これ

から明日の手術のためのマーキングをします』『どうするんですか?』『内視鏡を呑ん

で貰います』主治医は簡単に答える。渋々と忌まわしい思い出のendoscopeと書かれ

ている部屋、内視鏡検査室に連れていかれる。診察台に乗り胃カメラを呑み込む。

やっとの思いで喉元を過ぎたころに『癌が硬化しているから・・・XX先生に連絡して』

と言い、私を串刺しにしたまま電話で『XX先生、・・・』と状況説明、主治医の先生がや

ってきて画像を確認。

『XX先生の仰った通り、癌の退化はありますが出血・・・』『それでは小型の胃カメラに

切り替えてみましょう』と二人の医師で話していた。

食道がんは最初よりも退化はみられるものの硬化している為、無理に胃カメラを通し患

部に傷つけ出血させるのはまずいから、細い鼻からのカメラで検査することになった。

小型のものでマーキングできたのかどうか結果について説明はなかったし、興味もなか

ったから不明のままだ。スルスルと胃カメラは抜かれ楽になったことに安堵したのは言う

までもない。小型のカメラは鼻から入れるもので、初めての経験だったが従来のものに

比べれば楽なもので、これなら何度でも検査を受けられる。

普通のものと小型の違いを聞いてみた。小型のものは患者に優しいものの視野が狭い

こと、画質が劣るから補助的に使うのはいいとの説明だった。いよいよ明日は癌とおさら

ばする日だから、今宵は送別会でも開いてやろうか。

この時点で子供たちには病状と治療について教えていたが親兄弟には何も伝えていな

かった。最後まで黙りこくって終おうと考えていたが、万が一のことが起これば私は一巻

の終わりで何の対応もしなくて済む、しかし妻は何故知らせなかったのかと責め苦に負う

かもしれないから『私が絶対に言うなと言って聞かなかったから仕方なしに・・・』と言うよう

に妻には言っておいた。しかし、それにしても、そんな目に遭わせるのも忍びないから、

手術をすることだけは伝え、勿論のこと『見舞いには来なくてもいい』ことも付けて。

だが完全に隠密行動の心算でも近所の人は軽トラックが動かないとか、奥さんがバタバ

タしていることに気付くし、親しい人は必ず何か変を感じ取るものだ。そうした人たちの声

にあやふやな返答をするから、余計に『おかしい』の疑問符が増えていく。

隠していても『旦那さんの姿も見えないから、どうも病気されたみたい』の憶測ニュースは

流れていくものだ。

こちらとしては特に親しい人には心配を沢山かけるから、知らせたくないのに、親しいから

余計に心配して下さる。この矛と盾は通じ合える人間同士だから許し合いましょう。


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