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東武佐野線沿線CITY-GUIDE 〔カテゴリーからお入り下さい〕

こならの森 64号

2008-04-14 | 創刊~100号
       ■こならの森64号■1993.8発行

C・o・n・t・e・n・t・s

3p… はまゆう 目次
4…結婚しました
5…やんば 第4回
6-7pJCジャーナル 
8-11p…インフォ
 現代用語…万葉ラブ 第3回
12-23p 特集 近隣レジャー情報
24p…銀幕画廊
25p…書評・絵本紹介
26-29p 文化会館情報/協賛
30こならの森から~

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【本文抜粋記事】

海棠市子の銀幕画廊

「ザ    ジ」
 ZAZIE
 監督・脚本/利重剛 音楽/横道坊主 
 出演/中村義人(BY横道坊主) 杉本哲太 
 松下由樹 宮崎萬純 RIKACO 他 
@1989年劇場公開 
現在ビデオがレンタル・発売中(税込¥15450) 発売元/@アミューズ 販売元/パイオニアLDC@
@映画は映画館で@。これまでこのコーナーで何度も言ってきた、映画好きとして決て譲れないこのポリシー。これを曲げても紹介したい作品、それが『ZAZIE』です。 迷いながらも純粋に、必死に、自分の行き方を探す青年を主人公にした秀作。とにかく、ずっと胸の奥底に残して一生大切にしたい、ときおり自分自身の生き方を確かめるようにまた観たい、そう思わずにはいられない素晴らしい作品です。
 ちょうどこの原稿の締切直前は邦画が久々に悲惨な状況で、原稿が掲載されるまで公開している作品が『REX』(角川、いつまでこういう映画を作り続ける気なんだ@)くらいしかないという有様。そこで今回に限りの特例としてこの作品を取り上げたいと思います。
 確かにブラウン管はスクリーンと違って画面の端々にまで気が配れず、カメラ(演出と画像)を堪能することができません。だから映画独特の質感とパワーを感じられない。けれどこの作品の圧倒的魅力はその優れた脚本、ビカビカと原石のような光を放ち胸を突く、秀逸なセリフの数々にあります。この点で(邪道ですが)セリフを何度も繰り返し聞くことが可能であるビデオに相応しい作品と言えるかも知れません。
 さてこの映画、公開時に「80年代最後の天使の映画」「90年代の予感と期待を孕(はら)んだ新しい映画」などと評価されましたが、最も多く言われたことは、ちょうど同時期に作られカンヌ映画祭でグランプリを獲得したスティーブン・ソダーバーグ監督の『セックスと嘘とビデオテープ』に引っかけた「ロックと箴言(しんげん)とビデオテープ」というものです。実に言いえて妙。うまく映画の内容をまとめつつ、讃えていると言えます。けれど実際に洋画で『ZAZEI』と近い作品があるとすれば、それはジム・ジャームッシュ監督の『パーマネント・バケーション』でしょう。これは16歳の少年が自分の生き方を求め、旅に出る話です。
 一方の『ZAZEI』は、その昔カリスマ的人気を誇ったザジと呼ばれる25歳の元ロックシンガーが主人公。かれは歌をやめ、勤めた会社もやめて、毎日をビデオに収めるだけの生活をしながら、生き方を探し続けます。演じる中村義人は実際のバンドマン、この映画の音楽を担当する横道坊主のボーカルです。彼の寂しい、常に戸惑ったような笑顔は観るものを捕らえて離さないはず。このザジに、ザジに自分の理想の生き方を求める男・砂田(杉本哲太の演技は圧巻)や、迷うザジを純粋に受け止める娘・ブン(松下由樹)などが絡み、鮮烈でありながらも穏やかで優しい映画を構成しています。幾度も挿入されるザラついたビデオの映像と、硬派なファンクロックも印象的です。
 ロック嫌いでもこの映画には強い抵抗感はないと思います。とりあえず一度観てください。きっと観終わった後、「素直と我がままってのは、ほぼ同じ意味なんだよ」「性格の80%は癖だ。癖は直せる」なんてセリフが、ふと口から出てきてしまうと思います。そしてそのときは何とも思っていなくても、何年か後、きっとまた観たくなるはずです。あなたにとって大切にしたい一作になると思います。