フジのつるから取り出した繊維で出来た糸と現存する美山の藤布
古くから旧美山村に伝わり、昭和50年代前半まで生活の中で使われてきたフジのつるを材料に作られる「藤布」を復活させ、紡織技術を後世に伝えようと、日高川町内の有志が「紀州藤布保存会」を発足させた。10月10日に寒川地内にある茅葺きの寒川邸で初めての活動を行い、全国的にも数少ない貴重な技術の伝承と復活を目指して取り組んでいく。
日本一長い藤棚ロードがあることで知られる日高川町美山地区では、古くからフジのつるの皮から採取した繊維で糸織りして作られる藤布を、茶がゆを炊くときに使用する茶巾や蒸籠(せいろ)の敷布、山作業の上着、特産のシイタケを入れる袋など日常生活の様々な場面で生かしてきた。しかし、昭和50年代に入ると、藤布は見かけられなくなり、当時の故・寒川伸彦さんが近畿民具学会年報で美山の藤布を紹介した投稿には、日本民族学会員から「藤布は木綿以前の古代布で、全国的にも数少ない貴重な紡織技術のため、技術を継承すべき」と指摘されたと記されている。
藤布の存在を知り、技術の消滅を危ぐした同町三百瀬の友渕定代さんは「美山に受け継がれてきた藤布の存在すら忘れられてしまう。その文化を復活させて後世に伝承したい」と、寒川伸彦さんの妻・歳子さんに詳細を聞き、京都丹後の藤織り保存会で1年間研修して製糸までの工程を学んだあと、歳子さんを会長に保存会を発足した。
初活動となる10月10日は、午前9時ごろから午後3時ごろまで寒川邸の屋外で釜を焚き、あく抜きと呼ばれる作業でフジのつるから繊維だけを取り出す。同会では「美山に伝わる藤布を再現できるように取り組んでいきたい。興味がある人には見学してもらって活動に参加してもらえれば」と。インスタグラムでも「紀州藤布保存会」を検索すれば確認できる。荒天時は中止で、参加申し込みなどは不要。問い合わせは友渕さん(携帯電話090・8365・6496)へ。
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