ドイツ報告③
ハンブルクにて教育支援センターの訪問調査と研究会報告を行いました。
センターのミッションは様々な状況にある子どもや家庭の支援で、主には心理・特別支援教育の専門家が担うカウンセリング部門と教員が担う教育部門があります。不登校の背景が様々である点は日本とも通底していますが、ハンブルクでは公的に設置された支援機関がかなり整備されてきている印象を受けました。逆に、日本ではパブリックな自治体の支援センターだけでなく、プライベートなフリースクールまで多様な機会があることは、ドイツの人たちには珍しく映るようです。ハンブルクは都市州(日本の政令指定都市に近いイメージ)ですが、市内各区域にセンターが設置されているため、地域性の異なる2つのセンターを訪問させていただきました。
その後、ドイツ各地から研究者が集い、スウェーデンおよび私たち日本からの参加者を加えて研究会が二日間開催されました。安原先生に加えて東京外国語大学の布川あゆみ先生との3名で共同発表をしました。日本の不登校、フリースクール、居場所づくり、就学義務の特性などに焦点をあてた内容です。
ドイツでは手厚い支援の反面で不登校が就学義務の履行違反になるなど厳格な法適用がなされていますが、日本では進級や卒業などが教育的にも法的にも「正当に」行われてきている、という特性がドイツとの比較から浮かび上がります。フリースクールなどはドイツでは認められていないため非常に関心を持っていただきましたが、公的支援がなければ、「利用料が払えない貧困家庭はどうなるのか」といった質問も寄せられました。
プライベートな支援に公行政が依存するのではなく、就学義務を課している国家みずからが、まずもって「なぜ学校で学ぶ意義があるのか」に責任をもって応答してほしいと思います。そして、その意義とは「愛国心」や「公共心」などの国家に都合の良い目的ではなく、一人ひとりの子どもの人生にとっての中身が説明される必要があります。さらに言えば、意義が説明しきれない部分も当然に出てくるはずですので、それほどに広がってしまった就学の義務については適正な射程に収める必要があるかもしれません。