昔の話だ。
50年以上も前のこと
近所の港が全て石積みの堤防であり、護岸だった。
松の木やウバメガシが港の
周囲を覆っていた。木にも登って遊んだり
魚の観察をしたり
おじいちゃんに作ってもらった釣具と
谷川ですくってきた「谷エビ」で
釣りをすると、ちょくちょく
こんな「クエ」の子供が釣れることがあった。
子供といっても20cm以上、まだら模様と
大きな口にびびってしもたが
焼いても煮ても美味しかった。
とてつもなく大きくなる魚だと教えられた。
それから何年か経って
世の中、景気も良くなって、
鋼鉄製の橋ができ、コンクリートばかりの港になった。
あの木々も切り取られて、僕の背丈もある灰色の堤防で覆われて
しまった。
確かに快適で安全、波浪にも高波にも耐えれる港には
なったけど、
あの魚やカニやエビやウナギたちが棲家になっていた
石積みの港が
なんやら懐かしいのである。