11日目(8/11)
天候:
Tour Ronde(3,792m)south-east ridge normal route(グレード:AD)
朝一(6:30AM)のミディ・ロープウェイ、そして7:15発のエル・ブロンネ行き三連テレ・キャビンを乗り継いでイタリア側へ。
ミディ山頂駅では少し待ち時間があったので、居合わせた日本人カップルの写真を撮ってあげた。
8月も第二週に入り、日本人の観光客もグッと増えてきた感じだ。
今日登るのはツール・ロンド。ツールは「塔」、ロンドは「丸い」という意味。
標高は富士山よりわずかに高い程度で、ここアルプスではけっして高い方ではないが、モンブラン・イタリア側の好展望台として良く知られ、人気がある。
鋭角的なピークが多いアルプスにおいて、この山はどこかズングリした形をしていて、それでいて頂上付近はツンと尖ってユニークな形をしている。
テレ・キャビンから見るミディ南壁(左)とツール・ロンド(右)
ミディ-エル・ブロンネ間のテレ・キャビンからはタキュルの東壁、グラン・キャプサン、モンブランのブレンバ・フェースが素晴らしい。
山に登らなくてもこれは乗るに値する。世界の絶景が見れる乗り物ベスト10に入れていいかも。
やがてエル・ブロンネ駅に到着。最近改築されたようで、内部は近未来的なSFチックな感じ。
モンブランの新しいグーテ小屋も宇宙基地みたいな外観だし、ちょっと違和感を感じてしまう。
エル・ブロンネ駅からトリノ小屋はすぐそこ。だが小屋へは立ち寄らず、そのままツール・ロンドへ向かう。
エギーユ・ド・ツールの脇を回り込むようにしてジェアン氷河を最低鞍部まで下り、そこから左側へ登り返した所がツール・ロンド南東稜の取付き。
既に多くの登山者が氷河を先行していたが、氷河歩きだけで全てのパーティーがツール・ロンドに登るわけではなかった。
時刻は午前9時。余裕のあるペースでも13時には頂上、17時には小屋へ戻れる予定だが・・・。
出だしから岩のピッチなので、まずはアイゼンを外し、私のリードで取付く。
1P目 けっこう立った立体的なムーブとなる凹角
先行パーティーがカムを慎重に決めながら際どい登りを見せるので、けっこう悪そうに感じたが、それほど難しいわけではない。
ただ、こちらの岩は造りが大きく、先行パーティーの動きを真似ようとするとまったく足が届かなかったりする。
大きな浮石もあり、juqcho氏も「怖えー。」と言いながら登ってきた。まずはツール・ロンドの洗礼といった感じ。
2P目 立ったリッジを回り込んで浅い凹角フェース
出だしの垂壁で先行パーティーのフォローがいきなりテンション入れたので難しいのかと思ったが、ホールドは十分。
1P目(左)と2P目
3P目 堅雪のトラバース。再びアイゼンを付ける。
15mほどのトラバースが終わった所で短いが立った垂壁があり、ここが少し怖かった。
クラックには残置カムがあり、ランナーが取れる。
今夏は雪が少ないのでリッジ末端から忠実に上がってきたが、トポなどを見ると雪が繋がっていれば下の氷河からここまでダイレクトに上がって来れるようだ。
4P目 水平リッジ。juqcho氏リード。
リッジの形状を見ながら身体を右に左に預けていく。むき出しの高度感あり。
その後しばらく、向かって左(イタリア)側を巻くようにしてリッジ沿いを進んで行く。
トポではこのルート、ピッチ・グレードはアルパインの2~3級となっているが、部分的には4級あるような?
途中までピッタリ付けていた先行パーティーとは、いつの間にか離されてしまった。
彼らはちょっとした悪場もコンテでガンガン行くが、我々は初見だし、安全を考慮してスタカットで行くので差はどんどん広がってしまう。
リッジ沿いをルーファイしながら進むが、上部の雪稜までが意外と長く感じた。
ようやく雪稜の基部に到着。ここで再びアイゼンを付ける。
頂上までのリミットを14時と考えていたが、ギリギリの時間だ。
もうビバークは御免だが、しかしここまで来たら行くしかない。
先ほどから頂上にポツンと黒い人影が見えているが、あれがおそらくマリア像だろう。
マリア様、今行きますからしばしお待ちを。
雪稜をひと登りし、ゴールが見えたところでjuqcko氏はザックをデポ。
後は最後にアルパインの3級-ほどの岩登り。アイゼンを履いたまま行く。
プランは私が先に登らせてもらったので、ツール・ロンドの最後の花道はjuqcko氏に先に行ってもらう。
頂上。
マリア様は本来は黒い像なのだが、皆が触れるため頭部の辺りだけ金色に光っていた。
モンブラン・ブレンバフェースをバックにマリア様に手を合わせ、「アヴェ・マリア」を歌わせていただく。
しばらく休憩してから下降。
時間は押しているが、今日も夕方まで天候が安定しているのがありがたい。
雪稜の基部までは往路と同じ。
その先のガレ場帯は往路と離れて、かなり下の部分を巧みにトラバースしていく。
ガレはひどいが、馴れてくると意外と落石は落とさない。
イタリア側のガレ・トラバースが終わると再びリッジへ戻り、今度はフランス側へ懸垂下降。
こちらの岩は鋭角的で、懸垂後のロープ回収は引っ掛かりやすく、とても気を使う。
今日も一回途中でスタックし、登り返して回収した。
最後の50m懸垂は下の氷河まで本当にギリギリで(ていうか実際には若干届いていなかった)、先に降りたjuqcho氏が最後はロープを解いて飛び降りでクレバスを越えた。
ようやく安全地帯に降り立ったが、ここからトリノ小屋までの緩やかなトラバースが疲れた身体には長い。
私のヒザは岩を登っている時はしのげるが、雪の歩きになるとまったくダメ。
シャリバテもあって、最後の歩きはjuqcho氏にロープで引っ張られ、散歩を嫌がる飼い犬のようだった。(スミマセン)
結局、いろいろあって10時間行動。何だかプランより疲れた!
予約しておいたトリノ小屋に入り、すぐに夕食。
「コニチワ。」と片言の日本語を話すヒゲのイタリアーノが用意してくれたのは、野菜スープ、ソーセージ、ホウレンソウとポテトのソテー?、プリンなど。
一泊二食で55ユーロと聞いていたが、山岳保険で入ったフランス山岳会のメンバーズ・カードを見せたら45ユーロに値引きされた。グラッチェ!
これまで何回も改装されているのだろうけど、あのボナッティもこの小屋に泊まったと思うと感無量!