KU Outdoor Life

アウトドアおやじの日常冒険生活

岩手・葛根田川から大深沢継続遡行(前編)

2017年07月15日 | 沢登り
日程:2017年7月14日(金)-17日(祝)両夜行三泊四日
行動:単独

 エメラルド・グリーンの瀞と豊富な岩魚。
 岩手の葛根田川はもう何年前も前から考えていた宿願の沢だったが、計画を立てるたびに雨で流されてきた運の無い沢でもあった。
 今回、7月の「海の日」の三連休が何とか天気ももちそうなので、定番の葛根田川から大深沢継続、さらには岩手山まで継続する欲張った計画を立てる。
 これまで何人かの友人と一緒に行こうと話を進めてきたが、日程でなかなか折り合いも付かないので、勝手ながら単独で行くことにした。(約束していた人たち、ゴメンナサイ。)

一日目
 天候:
 行程:東京22:30(夜行バス)5:45盛岡7:44(JR)雫石8:00(タクシー)地熱発電所8:30-大ベコ沢出合10:35-お函11:20-大石沢出合11:50-葛根田大滝13:20-滝ノ又沢出合15:00(泊)

 13日、夜行バスで東京を出発。
 今回は三列シートのデラックス・バスで行く。これが大正解。
 シートはそれぞれ独立し、ロール・カーテンによる間仕切りで隣に煩わされることもなく、実に快適。
 料金は片道7,000円。これで遠く岩手まで寝ているうちに着いてしまうのだから何とも楽である。

 朝の盛岡駅に到着。
 始発のJRには間に合わなかったので、次の便で葛根田の最寄り駅「雫石」へ移動。
 途中、小岩井を通過。晴れた空の下に雄大な岩手山を望み、ついに来たなぁと実感する。

 雫石から予約していたタクシーで入渓口の地熱発電所まで。
 道中、運転手さんからいろいろ地元の話を聞く。
 これから向かう滝ノ上温泉も客足途絶えて閉鎖されてしまったこと。
 この周辺は熊はもちろんいるが、滅多に会うことはない。動物は他にカモシカ、タヌキ、キツネなど。ふつうのシカはいないらしい。
 今の時期もいいが、10月の紅葉時期が素晴らしいので、ぜひ来てほしい・・・などなど。
 地熱発電所前で下車。周辺はいたる所で蒸気を噴出している。タクシー代は6,600円。

 二俣を右のゲート脇を越え、林道を少し行く。
 やがて着いた「葛根田橋」で沢支度を整え入渓。ここからしばらく高さはそれほどないが幅広の堰堤が4つほど続く。
 ほとんど単調な河原歩きとなので再び林道に上がり、終点から再度沢に入り直す。

  

 葛根田川の出だしは、沢というより完全に「川」だ。
 爽やかな陽光の下、清流が続く。
 もう少し穏やかな流れを想像していたが、けっこう水勢があり、徒渉を繰り返していると意外と疲れる。

 
 
 右から入ってくる明通沢を通過。
 さらに行くとやはり右手に最初の見どころ、大ベコ沢の丸っこい坊主のような滝が現れる。
 正面から見ると、向かって左側はカマクラのように穴が空いており、不思議な自然の造形美だ。滝行にうってつけの場所?

  

 やがて流れは鮮やかな緑色の瀞と淵となる。そして岩魚がそこかしこに現われる。
 中にはわざわざ水面まで上がってきて、こちらに向かって投げキッスをして挑発してくるヤツも!
 よしよし、待ってろよ。

 今日は平日とあって葛根田も自分だけで貸切かなと思っていたが、先ほどから先行者らしき足跡があるのに気づく。
 しばらく行くと、単独の釣り人に追い付いた。埼玉から来たそうだ。
 昨日は別エリアへ行ったがあまり釣れず、今日はこちらへ転進してきたとのこと。

 少し話をした後、ここからは自分が先行。
 核心の「お函」は増水時は通過が厳しいと聞いていたので若干不安だったが、今年は雨が少ないようで、難なく右側(左岸)を通過する。
 もっとツルツルの岩を想像していたが、フリクションの効く目の粗い岩床で、それほど心配はなかった。

  

 大石沢出合に到着。
 ここでまた別の釣り人二人組と会う。
 軽く挨拶だけして素通りしようと思ったが、盛んに手招きするのでそのまま呼ばれ、ソーメンをごちそうになる。
 東京から来て、もう20年来通っているらしい。
 昨日は葛根田も団体パーティーが入り、おかげで釣果はサッパリだったようだが、今日は大石沢でそこそこ釣れたとのこと。
 脇には尺サイズの良型が並べられていた。
 「一杯ぐらい。」という甘い誘惑を何とか固辞し、小一時間ほど休憩してから再び出発。
 何とも親切で気持ちのいいお二人だった。

  

 さらに進むとナメとなり、中ノ又沢との分岐に到着。左から入ってくる中ノ又沢の方が水量が多く感じる。
 そのまま本流を進むと小滝、そして直登不能と思われる葛根田大滝に到着。
 大滝は右から巻く。

 そして滝ノ又沢出合に到着。今日はここまでとする。
 事前の情報通り、分岐50mほど手前、左岸台地にこれ以上ない快適なテン場を発見。
 モノポール・シェルターを張り、周りに残されている焚き木を?き集め、寝床の準備は完了。
 さっそく夕餉の岩魚を仕入れに行く。

 支流の滝ノ又沢に入り立て続けに三尾、さらに本流に戻って追加の一尾。
 ポイントさえ選べば、ほとんど1~2投につき一尾の割合で釣れてしまう。どれも尺近い良型だ。
 もちろん釣るのは自分でいただく分だけ。今宵は四尾もあれば十分である。



  

 一人東北の沢で、焚火と岩魚とバーボン。
 他に何もいらない。至福の一夜である。

  葛根田川滝ノ又沢出合にて


二日目
 天候:
 行程:出発6:15-最初の支沢出合6:30-支沢右俣-稜線9:10-八瀬森山荘10:00~10-関東沢下降-関東沢二俣11:20-大深沢との合流点13:00-ナイアガラ13:45~14:30-大深沢三俣15:40(泊)

 今日もいい天気。マルタイラーメンを食べ、出発する。
 少し行くと、左から支流が入ってくる。八瀬森の稜線に上がるには本流をこのまま詰めるのではなく、こちらの支流が効率的だ。

  八瀬森へ上がる支流出合の滝

 
 出合の7mほどの滝を左側の階段状から越えると、しばらく平坦な流れが続く。小さなナメもある。
 やがて二俣となり、右を選ぶ。
 トポによるとこの先大滝があるというが、水量もだいぶ減り、この緩い傾斜が続いた状態で本当にそんなものがあるのかと疑ってしまう。

  
 巨大フキの葉(左)と真新しい熊の足跡(右)


 平凡な流れにそろそろ飽きてきた頃、ようやく前方に大滝登場。25mほどか。水流は多くないが、高さはある。下流の葛根田大滝より大きいぐらいだ。
 他の記録だと「登れそう」とあったが、一人で重荷では「登れるか、こんなもの!」といった感じ。
 左の支流側から高巻くが、ちょっと小さく巻き過ぎたようで、途中灌木頼りのゴボウ登りとなる。もしここで枝が抜けたりしたらと思うと少々心臓に悪かった。

 続け様に10m滝。
 ここは右壁のクラックから半分上がり、後のスラブはボコッとしたホールドを選んでクリア。
 特に難しいわけではないが、ふだんのクライミングがこういう時に役立つ。

  
 葛根田川支流右俣の25m大滝(左)とその後に続く10m滝(右)

 その後はさすがにタラタラとした平凡な流れがいつまでも続く。
 癒し系は大歓迎だが、倒木やブッシュも目立ってくる。
 途中、ブッシュを避けるため枝沢に入ってしまったりしたが、何とか引き返す。
 人の痕跡乏しい東北の沢ではコンパスでの方角判断が必須だ。

 本流に戻り、さらに進む。
 流れはだいぶ細くなり、最後まで沢型を詰めると、いよいよ藪に突入。
 とにかく右も左も藪だらけなので、方角を北に絞って進むしかない。
 すると呆気なく10分もしないうちに登山道に出た。
 
 現在位置がわからないので、まずは右手(東側)へ進むが、しばらく行くうちに登山道の曲がり具合から経由地の八瀬森と反対側へ進んでいるようだ。
 今来た道を反対側へと引き返し、やがて八瀬森湿原に到着する。
 黄色いニッコウキスゲが鮮やかな緑の別天地。葛根田川のラストにふさわしい楽園だ。

  
 八瀬森湿原(左)と八瀬森山荘(右)

 無人避難小屋の八瀬森山荘で八幡平からの登山者と少し話をした後、いよいよ今度は関東沢の下降である。
 高山植物へのローインパクトを心掛けながら湿原を横切り、目星を付けて進むとすぐに関東沢に当たった。
 関東沢は最初ブッシュが多かったが、大きな滝も無く、ロープ無しでぐんぐん下っていける。
 途中、まるで自然のアトラクションのように平らな滑床があったりして、小綺麗で楽しめる沢である。

 右から支流を分け、小滝を右の段差から下りたりしながら下降を続けると、やがて顕著な二俣。
 最初、ここが大深沢本流との合流点かと思った。
 念のため、コピーしてきたトポやタケちゃんの遡行図と照合する。
 ここまでたしかにロープ無しで来れたが、他パーティーによると下降が急で念のためロープを出した滝があるという。
 また、その下に続く長いゴーロ帯というのもまだ通過していない。
 結局、そのまま下降を続けて正解だった。
 八瀬森から関東沢を下ってきた場合、奥に5~7mほどの小滝が見えたらそれはまだ途中の二俣と考えていい。

  
 関東沢右俣。上部の穏やかな流れ(左)と二俣下の4m二条滝(右)


 その少し先で4m二条の滝に到着。右岸(右側)の巻道から下りるが、最後が少し急である。慎重にクライムダウン。
 その後は長いゴーロ帯。といっても乾いた河原状ではなく、大岩がゴロゴロしながらもしっかりした流れがある。

 やがて大深沢と合流。小休止の後、遡行を続ける。
 少し行くと10m滝。
 ネットでは水流左際を直登している例もある。実際階段状だったが、今日は水量多くてちょっと気が引けた。
 ロープ無しの重荷だし、ここは安全を期して左の苔むした巻道から上がる。

  

 さらに進むと、突然眼前に今回の沢旅のハイライト「大深沢のナイアガラ」が現れる。
 おぉ、素晴らしいっ!

 

 
 葛根田川もここに来るまでの序章に過ぎなかった、といっても過言ではでない。
 横幅数百mにわたって大まかに右、中央、左と三つの滝が複雑なしだれ状の滝となっている。
 そして、そこら中の淵には大きなイワナが悠々と泳いでいる。

 
 大深沢ナイアガラの一部。さらに画面外にもう一つ左滝がある。

 
まだ先があるが、あまりの好釣り場に思わず竿を出し、釣りタイム。
 当たりはあるが焦っているのか小一時間で尺一尾のみ。小振りのも釣れたがこちらはリリースした。
 とりあえず最低限のおかずはゲットしたので、遡行を再開。
 
 大滝はネットの情報どおり中央滝の水流左際を直登する。
 実質の高さは8mほどか。
 下部は赤土混じりの岩が積み重なっており簡単そうに見えるが、長年の水勢に浸されてボロボロ。
 自分が取付いた時も50cmほどの岩が二枚剥がれてしまった。
 何とかごまかしながら下部をクリア。
 上部はしっかりした黒い岩だが、傾斜も立ってくる。ホールドをしっかり選んでザックの重荷に負けないよう慎重にクリア。
 ふー!これで核心は突破した。
 
 そして、その後のナメがまた素晴らしい!
 今までいろいろな沢を経験してきたが、先ほどのナイアガラ+このナメの連続で「大深沢、自分の沢ランキング第一位!」といった感じだ。

 
 
 興奮冷めやらぬままにナメを通過し、仮戸沢、北ノ又沢、東ノ又沢が合流する三俣に到着。
 男女四人組が到着していて、挨拶を交わす。
 秋田からのパーティーで、今日は仮戸沢を下降してきたそうだ。
 テン場は北ノ又の左岸、東ノ又との間に高台の好適地があるが、既に彼らの二張でいっぱいのため、私は一段低い東ノ又沢の岸にシェルターを張る。

 

 
 寝床と焚火の準備が出来上がると、しばし釣りタイム。
 しかし、彼らのテンカラと同様、なぜかこの周辺では釣れず。というかナイアガラからここまでの間でまったく魚影が見当たらなかった。
 これは一体どうしたことか。
 話によると先週ここらで大量に釣り上げた連中がいたらしく、さすがに岩魚もバカじゃないので危険を感じて集団疎開したのではあるまいかという結論に落ち着く。
 彼らには申し訳ないが、それでも私はかろうじてナイアガラ下で一尾確保していた。
 この夜も自然の恵みに感謝しつつ、沢の畔で眠りについた。 (後編に続く)


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2 コメント

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Unknown (ゆうこ)
2017-07-24 12:21:25
焚火と岩魚と・・・バーボン!ですか。
大人ですね。
私も三連休は単独で東北行きました。
福島県ですが。
会津駒ケ岳・中門岳・ひうちヶ岳登りました。
ガス・雨・沢登りかと勘違いする程水がジャージャー流れる登山道・風の中、歩き、
最終日に尾瀬沼周辺に下山してから初めて良い天気を味わいました。
一般観光客がお花畑で賑わっていました。

ちなみに昨日の週末は
小川山行きましたが
終日雨が降ったり止んだりで
とても空いてました・・・
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Unknown (現場監督)
2017-07-24 23:57:26
ゆうこさん、どうもです。
会津駒ですか。いいですねぇ。
最近、私は人が多くて規制も多い北アなどより、昔ながらの自然を残す東北の山に魅力を感じます。

ちなみに私は三連休は一人で岩手、この週末はカサメリでした。何となくゆうこさんと指向がカブリますね。w
三連休の岩手も同じ天気ですが、沢なのでヒドイ目に遭いました。悲惨な後編もぜひご覧ください。
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