『大黒屋光太夫』上・下 /吉村昭
つい最後まで読んでしまった。毎度のことながら、吉村の歴史小説は安心して読んでいられる。
ロシアに国立の日本語学校があったことに驚き。光太夫以前にも多くの日本人がロシアに漂着して日本語学校の教師になった。
『最後の将軍』/司馬遼太郎
「技術」に執着した徳川慶喜のこぼれ話が楽しめた。さすがである。大阪砲兵工廠に銀製の飯盒を特注したエピソードは、先日入手した砲兵工廠の研究書にも出てくる。先月中旬に読んだ本だが、こちらに載せておく。
『太平天国にみる異文化受容』/菊池秀明
上海に密航した高杉晋作の偏見に満ちた太平天国論は、後の明治政府の中国観に影響を与えたと同時に、逆説的なかたちで、アジアにおけるもう一つの近代の可能性を示している。
『明治前期政治史の研究』/梅渓昇
この筆者の見解には、同調しかねる点もあるが、軍制の考究にあたり、奇兵隊の検証から入っているのが重要である。また、日本固有とされる「家」制度に、ナポレオン法典が与えた影響関係については、語られることは少ないのではないか(恐らく私が無知なだけである)。
『千島紀行』/ステン・ベルクマン
極寒の千島列島の自然描写のすばらしさ。
『隊友よ、侵略の銃はとるな』/小西誠
ありし日の佐藤同志をしのびつつ。天皇の死に黙祷を拒否して市ヶ谷駐屯地を闊歩していたエピソードに、あの颯爽とした制服姿をきのうのことのように思い出した。